佐藤春夫「病める薔薇」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
.-病める5022
佐藤春夫:病める薔薇(S44)近代文学館

大正7年発刊の東京天佑社出版「病める薔薇(そうび)」初版をそのまま復刻したもので、佐藤春夫の最初の出版、谷崎潤一郎が序文を書いた。複製本ながら古書価が高額なコレクター本が、代替えとはいえ手に入るのが受けたのかそこそこ売れたらしい。ところがネットオークションが一般化すると、程度が落ちるとはいえ、オリジナルな当時本が手に入るものだから一気に廃れていった。現在では古書店でも数百円ほど商うほどで、人気がないことおびただしい。

汚れていてもオリジナルということなのだろうが、きれいな複製本をそんなに嫌わなくてもと思うのですがね。さて「病める薔薇」の続編「田園の憂鬱」が後に一冊に編まれて「田園の憂鬱」としてまとめられた。「病める薔薇」って?と思って買ってみたら、そういうこと。都会人が自然を満喫するつもりで武蔵野はずれに越してくるが、田舎暮らしにすっかり神経衰弱に陥ってしまう。作中、犬が「バウ、バウ!」と現在まで一般化しなかった鳴き声を発している。処女作「西班牙犬の家」は前ブログで書いた。