料治熊太「明治の版画」と山川秀峰 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$みずすまし亭通信-お千代傘
吉川英治:お千代傘・雑誌掲載・扉挿絵:山川秀峰

明治ものの蒐集家で知られた料治熊太に「明治もの蒐集 (1963年)」「明治の版画 (1976年) 」という著作がある。明治32年→昭和57年没で岡山県の出身、新潟県縁故の博文館編集者のかたわら,内田魯庵(ろあん)や会津八一らと親交をもった。書中、新潟古町の版画にもふれている。早くに明治時代の木版石版などの価値に気づき、幕末横浜もの→初代~三代広重→井上安治など哀惜溢れる文章を残している。また、料治以外に渡辺幽香について書かれた記事は見ない。

料治は海外のリトグラフ(石版画)は数十万もするのに、わが国のものは端値で投げ売りされているのに胸を痛め、つい買ってしまう。明治15年~25年頃の石版、絵はがきブームが起きた明治35年以降はいずれも興趣が尽きないとある。蒐集することで見えてくる世界がある(と思いたい)。この頃の出版は図版が不鮮明で残念ですね。図版を刷新して、それこそ電子書籍化していただけるとうれしいのですが、料治の蒐集物は現在どうなっているのだろう。

さて『婦人公論』昭和7年9月号~8年12月号に連載された吉川英治「お千代傘」第15回扉絵、ということは最終回の一号前、昭和8年11月号に掲載された山川秀峰の挿絵原画です。随分前に手にいれたもので、色紙に貼り合わせてあるせいか随分安価でした。秀峰らしい繊細な線に魅力があり気にいっています。