白井喬二:富士に立つ影(報知新聞社/大正15年)第六 去来篇
白井喬二:富士に立つ影:扉(木版)
報知新聞社版の白井喬二「富士に立つ影」は全8巻、装幀挿画に河野通勢、木村荘八、山本鼎、川端龍子が参加、新聞連載時の挿絵は彼等が交互に担当したことで知られている。ただし途中から山本は抜ける。装幀もまた交互に担当して確か各々二冊づつ担当しているのではないか。ご覧のように木版装の造本で人気がある。ちょうど、第六巻(去来篇)安価本が見つかり購ったが、まだ2冊欠けている。読書用には筑摩書房文学全集本が用意してあって、読む分にはそれで充分なのだが、そこが病い膏肓(こうこう)なかなかね。
川端龍子は後に日本画の大家として名をなすが、戦後くらいまで結構挿絵を描いている。「富士に」ではさすがにこなれてはいるが、いまだ手探り感は拭えない。そのあたりも面白味のひとつだろう。白井喬二「富士」については幾度も書いたので割愛、なお当本は上記挿絵画家4人のデビュー、あるいは出世作でもある。