ひな人形、ロリータ“紫の上”と略奪婚 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-雛3099
ひな人形

ひな祭りなどすっかり忘れていました。江戸時代は身分の上下にかかわらず終日浮かれ騒いだらしいですね。今日は午後から取材カメラマンに。子どもの頃から鳴りもの長唄踊りと技芸一筋、今年で芸妓人生59年という方にお会いしてきました。ただ、この世界に入ったきっかけは借金のかたに「3万円で売られたんですよ」写真を拝見すると子どもの頃はお嬢さまだったご様子。黄八丈を着込み三味線長唄と芸事に打ち込んでいたようで、かえってアダとなりましたか。居間に見事なひな人形が飾ってありました。

 柔らかなあぎとに春陽つたいくる瓔珞燦々緋に朱く冴ゆ

さて、前ブログ「光る源氏の物語」で紹介されていた野口武彦「源氏物語を江戸から読む」が届いた。写本で伝わってきた「源氏」が江戸時代に版刻出版されたことでいろいろ議論がわき起こる。当時「源氏」には一般女性は読んではいけないR指定というか、G(ender)指定がかかっていた。ただし、遊女にとっては「古今の和歌に伊勢物語、源氏物語」は一般教養課程の必須単位だった。光源氏は父帝の妃と密通してできた子どもが帝位につき、ついには人臣位を極める。

また、10歳くらいの亡き母(似)の姪“紫の上”を略奪妻にするわけですから、ナボコフ「ロリータ」の平安絵巻のようなもの。よって艶書として読まれた。ただし折口信夫(しのぶ)によると、この略奪婚には儒教・仏教が伝来する以前の結婚形態のなごり、いわば日本古来の風習がこうした懐かしいお話として語られているのだということです。