尾崎秀樹「歴史文学夜話」と天璋院篤姫に紀田順一郎「戦後創成期ミステリ日記」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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久しぶりにNHKドラマ「篤姫」を見ようと思ったのですが10分ほどで諦めました。ちょうど朝の連続ドラマを見ているようで落ち着きません。原作宮尾登美子「「天璋院篤姫」は昭和52年の作品で、従来の和宮をいじめ抜いた姑・天璋院というイメージに、新たな見方を示した作品でした。加えて、いままで無視され続けてきた女の維新史ですから、女性の視聴者多いのはうなづけます。でも、宮崎あおいちゃんが苦手な私は見ていられませぬ。

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ちょうど尾崎秀樹「歴史文学夜話/鴎外からの180篇を読む」を読んでいたら、篤姫について新潟に縁が深い綱淵謙錠と宮尾の対談が紹介してありました。この本は鴎外によって切り開かれた日本の歴史小説を、平安時代から近代まで時間軸にそって紹介している。まぁ作家たちの歴史小説をつないだ日本史のようなもので、時代による歴史観もふまえながらの面白い構成です。聖徳太子から始まって、今は“欠けることなき望月”の藤原道長あたりを読んでいます。

図書館本の紀田順一郎「戦後創成期ミステリ日記」は面白そうなタイトルなので読んでみました。戦後はいきなりミステリブームが始まって、玉石混淆状態のミステリ本を必死で仕分けしているファンの姿がユーモラスに感じられます。紀田大学時代からの、評論というにはあまりにも未熟な内容ですが、ミステリ創成期にあって評論もようやく端緒を見つけたということなのでしょう。それを割り引いても読むのが苦痛で、眼についたものを拾い読みしました。どなたさまも若い時代の文章は読むのがつらいですね。私など少し前のブログですら相当恥ずかしい。

そんな中、近年少壮にして作品を発表され、受賞される作家が多いのは恐るべきことです。先日買った100円古本に中上健次「鳥のように獣のように(1976年)」がありました。中上は被差別部落の出身で、戦後生まれで最初に芥川賞を得た人です。この本は20代に書かれたエッセイで、未熟な内容に読むこちらも恥ずかしくなってしまうのですが、カッターで指を切った切り口からほとばしる鮮血のような鮮やかさは印象的です。若書きでも凡百とは違うというところでしょう。連休明けの月曜日、しかも朝、どうも頭がまわりませず、短い文章に四苦八苦です。