47.「天帝のつかわせる御矢」古野まほろ | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

47冊目
「天帝のつかわせる御矢」
古野まほろ
講談社ノベルズ




頸草館殺人事件の後、大陸に渡っていた古野まほろは、東満州帝国の帝都・新京で暮らしていた。



しかし突然、西満州国が東満州帝国に宣戦を布告。
空爆により新京のインフラは壊滅的な打撃を受ける。



残された脱出の手立てはただひとつ。

環大東亜特別急行「あじあ」。

丸4日掛けて新京から日本帝国帝都・東京までをゆったりと走る、東亜が世界に誇る超豪華寝台列車のみ。



とある密命を受けて新京に来ていた級友・柏木照穂とともに、まほろは「あじあ」へと乗り込む。



そこで待ち受けていたのは、列車だとは思えないほど行き届いたサーヴィスと、曰くありげな乗客たち。



そして、凄惨なバラバラ殺人事件だった・・・




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大量の積読に目をつむり、再読してみました。



前作「天帝のはしたなき果実」でも触れましたが、この物語は1990年代のお話です。



ただ、世界情勢は現実と大きく異なり、東亜には日本帝国・大韓帝国・沿海州帝国・東満州帝国という西側に属する国々と、中華人民共和国・西満州国という東側に属する国々がある、という設定です。



まあ、あんまり本筋には関係ないんですけどね。



ちなみにトリビアとして言っておくと、「新京」という都市は、満州国が存在した間だけ実際にあった、満州国の首都です。



動く大きな密室、死体発見現場となった客室も複製不可の鍵がかかった密室、一癖も二癖もある乗客たち、その中にいるという世界屈指の情報屋「使者(メサジェ)」の存在、死体がバラバラに損壊された理由は、そしてその動機は?



圧巻の特盛ガジェット。ペダンティックなトークの数々。
張られまくる伏線。

そして、材料が出揃った後の推理合戦。



複雑に入り組んだストーリーだからこそ、再読でも十二分に楽しめました。
初読時の記憶があんまりないから、と言うのもあるんでしょうけど・・・



ちょっと落ち着いたら、シリーズ3作目も読みたいと思います。



最後にちょっと布教活動をば。



講談社ノベルズから4作出て、そのあと音沙汰がなかったこのシリーズ。
今月末に、幻冬舎から待望のシリーズ5作目が出ると最近知りました。



しかも、今では中古以外では入手困難となっている1作目、「天帝のはしたなき果実」も幻冬舎文庫で復刊!



噂によると若干揉め事があって移籍したらしいですが、これで古野作品を手にする人が増えるのだと思えば、喜ばしいことだと思います。



気になる方は是非読んでみて下さい。



癖があるし、好みが分かれるとは思うけれど、ハマると抜けられない魅力を持った作品ですよ。



以上、幻冬舎の回し者がお送りしました(笑)