start-1 1日目 | 島村ギルガメッシュと雑種の物語

島村ギルガメッシュと雑種の物語

http://profile.ameba.jp/pokegai-emma/
ここと同じ人。fateに感化され、ブログのリンクシステムを使って疑似fate作ってみる

 多数のアイドルが在籍する会社でアイドルのプロデューサーとして働く人間。それが私である。

 だが数ヶ月前に私が担当していたアイドルが会社をやめてしまい、アイドルをプロデュースできなくなった私はしばらく事務方の手伝いばかりをしていた訳だが、最近になって新しいアイドルが数名我が社に入ることになったらしく、その内の一人のプロデューサーとして私が選ばれたのである。

 今は久々のプロデューサー業に意気揚々として、私たちに割り当てられた事務所の場所へと向かっているところである。

















 いかにも不機嫌そうな表情で、それも恐ろしくさえ感じる赤目を向けて、彼女は立っていた。
 どうやら私を待っていたらしい。まぁ、待っているということは私より先に着いた、ということに過ぎない。しかし、彼女は待たされると手の付けようがない程までに怒りそうで、恐怖を感じる。

 そんな恐怖が喉の動きを制したのか、挨拶より先に本人確認をしていた。

 今私が下を向いて見ているのは履歴書である。名前に島村ギルガメッシュと書かれ、貼り付けられた写真は、うむ。今目の前にいる彼女と同じ顔である。

「あー、おはようございます、島村ギルガメッシュさん」

 ぎこちない挨拶。そもそもカタカナの名前を言う時点で慣れない。

 そして彼女が挨拶を返す。






「ようやく来たか雑種。オレのことはその履歴書に書いてある通りだ。貴様のような雑種風情にプロデュースされるのは気に食わんが、これもオレが愉悦を求め寄り道した先。貴様にはせいぜいオレの駒として使役されてもらうとする」
 と、何だ? 何だ何だ何だ? 何だこれ。何でこんな上から目線?

 そもそも「彼女」なんだから女でいいんだよな。でも今何て言った? オレ? しかもこっちに対しては雑種? あー、待て待て、色々な方面へのツッコミが同時多発的に必要となったせいで頭が追いつかない。

「綺礼に聞いたが、オレたちに割り当てられたこの事務所の作りは和風と言うらしいな。ここに入った時から事務所らしからぬ作りだとは思ったが、予想と丸っきり違うというのは愉しい。和風なら和風らしく、極東の者共の生活を体験してみるのも悪くない」

 だからちょっと待てって。綺礼って誰だ。というか島村さんは極東の人物ではないのか……? いや、まぁ、ギルガメッシュっていう名前からハーフだとは推察できるけど、日本語が流暢だから極東である日本で生活していた訳ではないのだろうか。





 完全に驚きと疑問に打ちひしがれ、棒立ちしていた私に彼女がつまらなそうな目を向けた。
「どうした。動きもせず喋りもしないとなると、もはや雑種ですらないぞ。動かない様を見て欲しいのならそこの花瓶の横にでも立っておけ」

 その言葉で私は我を取り戻す。

「あ、ああ、すみません島村さん。確かにドアの前に立っては邪魔ですね」

 横方向に跳ねるように体をどける。

 いや、しかし、なんだ。赤目に恐怖を感じることは間違いではなかったことを、ただ挨拶を交わしただけで思い知らされた。「何様だ」と怒る以前に、他人に対してそんな態度をとれる勇気を褒め称えたいぐらいだ。

 なんてこと思って気がついた。彼女とて17歳の少女だ。そんな女性があからさまに上から目線の態度をとるのは絶対色々な意味で危ない。私はただ驚いただけだったが、この彼女の態度を前にする人の内、誰かが怒りを露わにするかもしれない。そうなったら彼女は物理的に傷つきかねない。もう一度言うが、彼女は17歳の高校生である。ケンカになれば彼女は成人男性に為す術などない。
 これを踏まえて私は--

1.叱ろう。
2.とは言えこれも彼女の個性か。受け入れよう。