[スクラップからの製鉄-電気炉3-] 前回の最後では電気炉製鋼法の工程とその種類をまとめて、他の転 炉などとの比較を行うというようなことを書きましたが、少し容量が 多くなってしまいました。 そこで今回は予定を変更し、電気炉とその他の炉を比較し、次回、 電気炉製鋼法の工程と種類を見てみたいと思います。なお、今までの バックナンバーはこちらです。 [スクラップからの製鉄-電気炉-] [スクラップからの製鉄-電気炉2-] では、さっそく。。。 現在、日本国内で生産されている粗鋼はアーク炉も含まれる電気炉 が約25%、転炉が残りの約75%を生産しています。1977年ま では平炉というものもありました。 今回は電気炉の特徴を他の転炉や平炉と比べることで確認してみよ うと思います。ちなみによく聞く高炉というのは鉄鉱石から銑鉄を作 る出す炉でやや用途の違うものです。 平炉や転炉で作られる鉄鋼は銑鉄を原料にします。電気炉鋼の原料 になるくず鉄も元々は転炉や平炉を使って作られた鉄鋼ですから、銑 鉄が使われていると言えます。 例えば、牛乳を使う乳製品を考えてください。転炉や電気炉を乳製 品を作るための調理とすると、高炉は牛乳を作る段階の調理だと言え ます。要は自然のままだったものを使いやすく改質するのですね。 つまり、高炉は用途が製鋼法ではなく、銑鉄を製錬する製銑法であ るということになります。この製銑法にも電気エネルギーを使う電気 高炉というものもありますが、今は姿を消しています。 高炉と今回の電気炉とは用途が異なるので比較するのには適しませ ん。そのため、ここでは転炉と平炉、そして、電気炉を比較して電気 炉の性質をまとめます。 まずは、ここまでまとめてきた電気炉についてを簡単にまとめまし ょう。電気炉で作る電気炉鋼の主な原料はくず鉄と少量の溶銑で場合 によっては還元鉄が使われますが、それは稀なようです。 原料を溶かす熱源は名前の通り電気エネルギーで、酸化剤として酸 素ガス、鉄鉱石が用いられ、造滓剤には炭酸カルシウム、酸化カルシ ウム、ケイ砂が用いられます。 特長は熱効率が高く、鋼のP・Sが低いそうです。P・Sが何かが、 現段階ではちょっとよくわかりませんが、他には成分調整が容易とい うのも挙げられます。 この電気炉で作られる鋼種には合金鋼や普通鋼があります。高周波 誘導路に代表される容量の小さい炉も多いので、少量生産の製鋼にも 向いていると言えます。 次に転炉です。転炉は現在、日本で作られる鉄鋼の7割を生産して いる最もメジャーな炉だと言えます。日本での利用の歴史は現在ちょ うど50年、つまり、日本に導入されたのは1957年です。 転炉で作る鉄鋼を転炉鋼といい、溶銑と少量のくず鉄を原料として います。熱源は原料中に含まれる不純物の酸化によって発生する酸化 熱を利用しています。 電気炉の酸化剤は酸素ガスの吹き込みでしたが、転炉では純酸素と 空気が用いられます。造滓剤としては炭酸カルシウムや、酸化鉄が用 いられます。 工業的に酸化剤に純酸素が用いられるようになったのは第二次世界 大戦後のオーストラリアが最初でした。純酸素の利用の成功により、 製鋼時間の短縮と大量生産が可能になりました。 特徴は、今も書いた短い製鋼時間と大量生産の他、窒素、硫黄など の有害物質が低く、鋼の性質が優れていること、操業費、建設コスト が安いこと、多品種鋼に対応できることが挙げられます。 最後に今はもう日本にはないらしい平炉です。原料は溶銑とくず鉄 を半々とし、熱源は他の炉と異なり、燃料として重油やガスを用いま す。 酸化剤として電気炉同様、酸素ガスと鉄鉱石、造滓剤もほぼ同様に 炭酸カルシウムや酸化カルシウムなどが用いられます。原料の幅が広 く、良質の鋼が作れますが、製鋼時間は長かったようです。 主に転炉と同じく普通鋼と低合金鋼を作るのに利用されました。現 在、平炉で作られる平炉鋼は世界的にも少量の生産ですが、発明後の 百年間は世界の製鋼量の8割を占めていました。 では、今回はこの辺で、次回は工程などについて、電気炉について を終えるつもりです。 ≪参考文献≫ ☆『金属化学入門シリーズ 第2巻 鉄鋼製錬』 編集・発行 社団法人 日本金属学会 平成12年3月20日 第1刷発行 ---------------------------- 掲載情報 初出:秘密♪ 改訂: ---------------------------- 更新履歴