執筆の合間に、新宿ピカデリーで観た!!

 

映画『この世界の片隅に』。

 

噂に違わず、号泣につぐ号泣。

これは、大傑作だと思う。

 

並べるなら、ジャン&リュック・ダルデンヌ監督の素晴らしい作品群や、

リチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』、

舞台で言えばミュージカル『レ・ミゼラブル』

などと、並ぶ素晴らしい作品であった。国際的にも大いに評価されるべき、傑作。

 

 

自分の気持ちの整理のため、記録のためにも、まとめておきます。

ネタバレはあまりないのですが、まっさらな気持ちで鑑賞したい方は観た後にどうぞ!

 

1 まず、志が、素晴らしい。

 

現代は、日本も、世界も、為政者が戦争を起こそうと準備をしているような時代。

格差や絶望に追い込まれた大衆が、事実よりも虚言や幻想を麻薬のように吸い

それを燃料にして、怒りの火遊びを始める時代。

 

その時代に、最大の警句となる、作るべき作品とは、

人間の生活そのものを、目をそらさずに丁寧に描き切ること。

小津安二郎みたいなスタンス、といえるのかな。

 

特に、アニメーションという、現実に一つ、フィルターをかます表現形式

だからこそ、徹底したリサーチと細やかさによる日常描写、というものが必要。

 

結果、この作品は、何よりも激しく過激で、恐ろしい戦争映画になっている。

なぜなら、戦争によって、何が、どのように、破壊されるかを、

絶対に観客が目を外らせない形で、描いているから。

 

この戦争の恐怖や、痛みや、絶望は、銃を撃って爆弾を落とすものたちを

いくら描いても、伝わりきらないことばかりだ。

 

爆弾が落ちることで、何が(慎ましく、知恵と細やかさに溢れた日々の生活)、

誰が(愛おしい一人一人の人々)、破壊されるのか。それを描くことこそが、

戦争の恐怖を描くことなのだ、という、

作品を通じた、監督と原作者の、痛烈な、真摯な、平和への志。

これが、素晴らしい。そしてこの志こそ、私たちが先の戦争を体験した人たち

から学んだものであった。

 

2 人間の複雑さを、典型化せずに見つめ続け、その変化や機微を描き出す。

 

どうしてもドラマを描くとき、誰かが白、誰かが黒、と描いてしまいやすい。

しかしこの物語は、陰陽を両方ともみつめながら、それがまた変化してゆく様子も

見つめ続ける。とても優しく暖かい視線だ。

 

これは、ダルデンヌ兄弟の監督作品に見られる人間への視点に似ている。

が、日本にもこれだけ深く人間を見つめる眼差しが、まだあった、ということが、

大変、ありがたいことだ。世界の映画の中でも、引けを取らない卓越した、

眼差しである。

 

3 絵のタッチ、表現の素晴らしさ。

 

これも、原作者と、監督の、両者の力だと思うのだが、

特にアニメの場合、その絵面で、この創り手がどれくらいのオリジナリティの

持ち主で、どのような志の人間か、というのが、伝わってくる。

 

共通のフォーマットを用いるものもいれば、独特の文法で勝負するものもいる。

実に様々だが、この作品は、とても独自の絵の文法を持ち合わせていた。

そして、1つ1つのカットに描きこまれたものの密度が非常に濃く、

物語自体は淡々としたタッチで進んでゆくが、一瞬足りとも目が離せない。

 

ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画『パンチドランクラブ』も、

彼の溢れ出る才能と真摯さで、目が離せないのだが、

この作品はそれ以上に、必死で、渾身の、想いが込められている。

 

そして、色彩や、描き方の独創性にも、ハッとさせられ何度も唸った。

つくづく、美しかった!!

 

 

4 クラウドファンディングによる製作

 

この大傑作が、クラウドファンディングによって、たくさんの人々の

資金によって作られたことが、素晴らしい。

 

本当に民衆が求めているものは、もちろん平和であり、心豊かな生活である。

だから、この作品に出資したみなさま、本当に素晴らしい。

 

日本、いや世界の映画史に残すべき作品を、出資したみなさまは創り上げたのだ。

そういう意味で、みなさまは傑作を生み出した素晴らしいプロデューサー

であり、日本随一のスポンサーなのだ。

この作品がキネマ旬報の第一位になるのも、もちろん当然だ。

ぜひ、ファンディングしたみなさま、大手を振って、街を歩いてほしい。

一ファン、一観客として、心からお礼の握手をさせていただきたい思いです。

 

映画を観終わって、この映画のファンディングに加わっていない自分が

まことに悔しく思える作品。

 

まあ、これぞ真の意味で民主的、と同時に、

作家(原作者と監督)の芸術家としての存在に最大の敬意を払って、

人々が本当に必要とする美しいエンタテイメントが創作された、

という、現代では稀有な事例であろう。

 

しかし作品というものは、時代が生み出すもの。

この作品こそが、まさに、今の時代が本当に必要としたものなのである。

 

まあ、一言で言えば、大傑作、なので、必見です。ぜひ劇場へどうぞ!

 

このような傑作に出会えて幸せ。

 

さて、より一層、3月の自作を、頑張らなければ。

 

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