「夢を見た 確か...この世は夢」

東京ベイNKホール
BUCK-TICKのメンバーが、本当に珍しく、着座して演奏する「Brilliant」。

非常に美しい星野英彦らしいアコーステックの調べの乗って、
櫻井敦司は、母親(または父親)に成り変って、この慈愛に満ちた唄を唄う。
この優しさ、温もりもアルバム『極東I LOVE YOU』特有の作品と言える。
こんなにも、暖かいBTナンバーは、これまで耳にしたことがない。

やはり、母親の愛、家族の愛ほど、深い愛情はないのだろうか?
その対象が、例え亡骸であったとしても・・・。
否、むしろ、そんな姿になってしまった最愛の息子だからこそ…。
こんなにも、あたたかい【ことば】が捧げられるのかも知れない。



そう、戦士であった息子は、亡骸となって母親の元に還って来たのだ。



これについては、『UV』誌で、作詞担当の櫻井敦司本人が語っている。


以下、引用、抜粋。




―――少しだけ歌詞について具体的に訊いておきたいんですが、
「Brilliant」は、誰の視点から、誰に向けて書かれたものなのでしょう?

「これは、ある意味「Long Distance Call」に向けてのアンサーみたいな曲で。
情景としては、戦争に行った自分の息子が亡骸になって帰ってきたけども、
そこで夢を見ている父親だったり、母親だったり……
まあ、具体的に言うとそういうことになりますけど、いろいろなふうに解釈してもらって構わないで」

―――作品全体を通じて、“今の世の中”が発想の発端になっている部分は多々あると思うんですよ。
実際、歌詞はすべてNYでの同時多発テロ以降に書かれたものだということですけど、
櫻井さん自身にとってあの事件は、
“音楽の持ち得る力”みたいなものについて改めて熟考する機会にもなったんでは?

「というか……やっぱりあの時、最初に感じたのは無力感だけでしたね。
アルバム制作に入るっていうそのタイミングで、ああいうものを見たり知ったり、
いろいろ他の事件にも目を向けさせられたり……。
“こんな現実見せられたら何も言えなくなっちゃうよな”って感じで最初はいたんです。

だけど、それをみんなが感じてたら、一歩前に進むこともできるんじゃないかって。
自分の場合、偽善を振りまわしてあちこちで何かやるっていうのも……
ま、ホントに心底そう思って行動できるんであればそれは素晴らしいことですけども、
俺もそこまで素晴らしい人間ではないんで(笑)。
結局そこで“自分で今やるべきことは何だ?”っていうその一点に集中して
それはすなわち、アルバムを作るってことだったわけですけど」

―――音楽の使い道を考えるんじゃなくて、すべての思いを音楽そのものにぶつけた、と。

「そうですね。だから実際、そんなにアタマ使ったわけじゃないんです(笑)。
ただ、自分に潔くありたいというか、正直でありたいというか。そういうことでしかないですね。
すごく綺麗な言い方をすれば、ですけど」


以上、引用、抜粋。




アルバム『極東I LOVE YOU』には、「謝肉祭-カーニバル-」と「Brilliant」という、
ある意味では、彼らしい美しい2曲を提供した星野英彦であるが、
やはり、特にこの15周年を記念するアルバムでは、メロディに拘って作曲したという。

以下、『UV』誌より引用、抜粋。




―――星野さん的には、このアルバムの“核”みたいなものを何だととらえてます?

「やっぱりメロディですね。
あとは、全体的には……深いところっていうか。
広がりと深み、その両方ですね」

―――『極東I LOVE YOU』という象徴的なタイトルといい歌詞といい、
いわゆる時世の影響もみられるわけですけど、楽曲そのものについてそういった部分は?

「曲はもう、タイトル云々とかよりずっと以前のものなんで、まったく関係ないですね。
「謝肉祭 -カーニバル-」なんかはかなり古いし……いつ頃出来たんだっけ!?(笑)。
去年の夏頃にはあったのかな。このアルバムのなかでもいちばん古い部類に入る曲で。

逆に「Brilliant」はレコーディング作業が始まってから、結構後のほうで作ったんですけど」

―――2曲ともとても穏やかで浮遊感のある楽曲ですよね。
星野さん自身、比較的ゆったりとした精神状態にあったんでしょうか?

「んー、そういうことはあんまり関係ないと思うんですけど。
ま、確かに気分って“作りたい曲”に影響するもんですけど、たまたまこういうのができたっていうだけで」

―――メロディに乗ってきた歌詞については、期待通りでしたか?

「基本的に歌詞は全部おまかせっていう感じになっちゃいますけど……
でも、そうですね、すごくメロディを引き立たせてくれるような言葉を乗せてくれたな、と」

―――両者が引き立て合える関係というか。

「ええ。そうですね。
「Brilliant」について言うと、実はこれって仮タイトルとして自分でつけて渡したものだったんですよ。
だからその言葉から膨らませてくれたのかな、と。
だけど実際、自分で描いていたイメージも、まさに“本当に遠いところに行ってきた”っていう雰囲気で」

―――この曲もそうですけど、今回、“生と死”をイメージさせる歌詞が多いですよねよね。

「曲調も曲調だし、今回。かなりそういうのが粒揃いな感じであるんで。
だからすごく、詞の世界と合ってるんだなって。それは今回、強く感じましたけど」

以上、抜粋。



ストーリー的にもアルバムお結末を披露することになった「Brilliant」。
星野楽曲に、またしても櫻井敦司の母性が絶妙に注入されたこの楽曲も、
これまた、絶品としか、僕には評論出来ない。

大人しくて、パンチが足りないのでは、と批評も受ける結果となった『極東I LOVE YOU』であるが、
本当に、素晴らしい、繊細なBUCK-TICKの姿を切り取った作品であるのは間違いない。



そして、人生とは、“夢”そのものと感じさせるような感覚にさせられる。
その“夢”から醒めた時、



星は、一層、強く、輝くのかも知れない・・・。



「汚れなき寝顔 君は天使 独りきり生まれ走り過ぎた」



【ROMANCE】





Brilliant
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


お帰りボウヤ 疲れたでしょう 暖かい食事でも

そこへかけて 話をしょう 黙ってても それでもいい

静かな夜 心えぐる 残酷な雨も終わった


優しい人になれたんだね 君は死んだように眠っている

楽しい夢を見ますように 君の星が たった一瞬 輝く



汚れなき寝顔 君は天使 独りきり生まれ走り過ぎた

夢を見た 確か...この世は夢

君の星が たった一瞬 輝く 輝く...