かえるの魔法使い(3) ~吸血鬼、現る~ | 怜菜のブログ

怜菜のブログ

pickles探偵デカゲロくん見てね!

1 学校の噂


わ~。びっくりした。え?

あ、だって、魔法学校の近くに、暗黒洞窟があるの。そこに……。

吸血鬼が現れたんだってっ!

いや、いくら優等生のぼくとわたゲロくんでも、無理っ!

あ、「優等生」って自分で言っちゃった……。

その吸血鬼は、かえるの魔法界で、と・く・に恐れられている、ダークホールっていうの。日本語になおすと、「暗黒の穴」っていう意味!

ダークホールは、血を吸って気絶させ、その「暗黒の穴」で、吸い込む。つまり、気絶した後、ブラックホールに吸い込まれる、って感じ。

……し、死ぬ~っ!

気絶するだけならいいんだけど、吸い込まれて、跡形もなくなっちゃう!

それが、今、魔法学校で噂されているの。

あーあ。この噂、治まらないかなー。

「しゃーぼゲロくーん。」

ん?

「ああ、わたゲロくん。」

「ああ、わたゲロくん。じゃないよ。ねえ、知ってる、洞窟の話。」

もちろん。

「なんだー。驚かそうと思ったのに。」

ぜーんぜんそういう風には見えなかったけど。

驚かすなら、「ダークホールが暗黒洞窟に現れたんだよ!」とかいえばいいのに。ま、それでも、あんま驚かないけど。

「ねえ、あの洞窟、行こっ。」

は、はい?今なんとおっしゃいましたか?

ぼくが首をかしげると、

「だから、暗黒洞窟に、行こっ。」

え、え~!

それは無茶しすぎだー。やめよう、やめよう。

「何で?もしダークホールを倒したら、ぼくたち人気者だよー。」

もしダークホールに吸い込まれたら、ぼくたちがどうなると思ってんのかっ。大騒ぎになるだろっ。

……全く。


2 驚きの知らせ


「起立。着席。今日は、大事なお知らせがあります。」

やっぱり、ダークホールのことか。

「先生は、今日で先生を辞任します。」

なんか、違う方向に話が……。って辞任するのか。

ぼくのせい?この前、広太郎野郎とか思って、わたゲロくんにばれたから?

「先生は、魔王になるのです。」

はぁ!?そんなわけないでしょ。魔王でしょ。じゃあ、広太郎先生は、王族なの?

あり得ないよね。絶対。まさか、広太郎先生魔法界征服を企んでるんじゃ……。

ぼくは、思い切って手を挙げた。

「どうして、魔王になるんですか?」

「先生は、プリンセスと結婚するからです。プリンセスは、魔王にはなれません。その結婚相手が魔王となるのです。」

ふーん。じゃ、勝手にすれば。かわい子ちゃんと幸せに暮らしてはい、さようならですから。

「なので、明日からは、違う先生です。まだ、見つかっていないのですが、」

何だって!見つかってない!

「見つかるまで、校長先生がやってくれるそうです。」

こーちょーせんせー!

やだなぁ。校長先生は、恐いもん。

早く優しい先生を見つけてよー。

「多分、他の先生を魔法学校協会がここに派遣するまで、当分校長先生ですね。」

なにっ。

「でも、魔法学校協会がここに派遣するまで、きっと二~三ヶ月掛かると思います。それまで、頑張っていてくださいね。」

に、二~三ヶ月ぅ!?

やだよう。校長先生に怒られたら、どうなるか知れないんだから。

そしてまた広太郎先生が言う。

「校長先生がいるうちは、そうですね。優等生のしゃぼゲロさん、わたゲロさんにクラスをまとめてもらいましょうか。」

なんか、責任を感じるんですけど。

「よろしくお願いします。それでは、最後の授業を始めます。」

はぁ……。結婚を取りやめてほしいなぁ。

そう思いながら、授業に取り組んだ。


3 まさかっ!


ぼくは久しぶりに休み時間はわたゲロくんと魔法対決をするんじゃなくて、図書室へ行った。

だって、プリンセスと広太郎先生に結婚してほしくないもん。

だから、「妨害魔法」を探している。

そんな魔法知らないけど、勝手に作っちゃまずいし。

あっ!これだ。

えっと、呪文は……。

○○よ、○○をしてはならぬ。

えっと……、○○には何が入るのかなぁ?

あっ、説明、発見。

○○には、妨害したい人、したいものを当てはめる。

例:学校の遠足を妨害する場合

*遠足計画者の名前*よ、*遠足*をしてはならぬ。

と言う風にする。

ふーん。じゃあやってみよーっと。

「広太郎先生よ、プリンセスと結婚してはならぬ。」

あ、まだあったのか。

*注意! この魔法は、妨害する人の前で唱える必要があります。自分ひとりや、関係ない人の前ですると、必ず失敗し、牢獄に入れられる、またはダークホールに飲み込まれます。

注意はもっと分かりやすく載せてくれないかなぁ。

……ってちょっと待って!ぼく、一人で呪文を唱えてしまった!

ダークホールに飲み込まれてしまう!

どうしよう……。

これが、人生の終わりなのか。

もう誰とも会えないのか。

ひぇー!誰か、助けて!

けれど、その声は誰かに届くはずがなかった。

今はみんな、ほかの事に集中している。

ぼくの声に、気がつくはずもない。

絶望。

ああ、どうすればいいんだ……。


4 ダークホールから守るため


はあっ!

こうなったら、自分で調べるしかないんだ!

ダークホールに飲み込まれないために。

えっと、えっと……。

――ダークホールについて――

ダークホールとは、吸血鬼の魔物で、血を吸って相手を気絶させ、「暗黒の穴」で吸い込みます。

むやみに近づいたり、妨害魔法で失敗しなければ吸い込まれたりしませんが、もし吸い込まれた後は、元に戻れません。

もうっ。知ってるし。だからどうすればいいのっ。

――ダークホールに吸い込まれるのを防ぐために――

むやみに近づいたり、妨害魔法で失敗しなければ大丈夫ですが、妨害魔法で失敗した場合には、この方法があります。

・かえるの魔法界の王様に時間巻き戻し魔法をかけてもらい、妨害魔法を使う前の時間に戻る。

・必死で戦う。

何でよっ。王様に頼むとか無理じゃん。

「必死で戦う」とかムカつくんだけど。

自分で時間巻き戻し魔法をかけるのは、どうかな。

「この世の時よ、妨害魔法前に戻れ!」

……戻らない!?

本を見ると、小さく、書いてあった。

※妨害魔法で失敗した後、王様ではなく自分で時間巻き戻し魔法をかけると、ダークホールに吸い込まれるのはほぼ100%といっても良いでしょう。

え……?

うそ。ほぼ100パー!?

ぼくに残された選択肢は、「必死で戦う」しか、無いの!?

余計、状況を悪くしてしまった……。


5 残された選択肢


「必死で戦う」とか無理だよ~。どうしよう。吸い込まれちゃう。

そうだ。わたゲロに頼んでみよう。

「ねえ、わたゲロくん。」

「なあに?」

はぁ……なんて言われるかなぁ……。

「ぼく、ダークホールに吸い込まれる運命になっちゃったみたいなの。だから……」

「一緒に戦おう!わっちゃんがいれば大丈夫!」

わたゲロくん、そんなに戦いたかったの?

「行こー♪」

そんな笑っていられる出来事じゃないんだってば。

「ふさゲロくんも、誘おう♪」

「ふーさゲーロくーん。」

わたゲロくんが誘う。

ふさゲロくんの目が見開いた。

「えっ。無理だよ。」

あのときから、ふさゲロくんは成績が良くなった。

ぼくたちの仲間入り。(って、今まで見下していたのかっ!?)

三人でよく行動する。

おそらく、わたゲロくんは「いいよ」って言ってくれると思っていたのだろう。

でもね、ふさゲロくん、ぼく、ダークホールと戦う運命になってしまったんだよ。

「しゃぼゲロくん、何かしたのっ!?」

……って、なんで考えていることが分かるんだ……。あ、魔法か。

「そうなんだよ……広太郎先生とプリンセスの結婚を妨害する魔法をかけちゃって……。」

「それは、戦うしか無いね。」

残念そうにぼくを見た。

「先生に言うと怒られるから、こそっとやらないと。」

「うん。」

ぼくは、「三人で戦う」ことにした。


6 ダークホール


ぼくたちは、魔力回復アメと、魔法知識辞典をもって、例の洞窟へ。

足を踏み入れる。

「薄暗いねぇ……。」

まだ入ってから五分くらいしか経っていないのに、足音がカタカタと聞こえる。

カタカタカタ……。

ドンッ

急に音がした。

僕達が出した音じゃない。

「もしかして……。」

あたりを見回す。

何もない。

「気のせいかな。」

「そんなわけないよ。すごい耳鳴りのように響いたよ。」

「わっちゃんも分かんないよ。」

心臓の鼓動が増えているのが分かる。

やっぱり、そうなのかな。

「何だか、恐くなってきた。」

ぼくが弱音を吐いた。

「何言ってるの、しゃぼゲロくん、君が吸い込まれる運命になったっていうから付いてきたんだから。」

「そうだけど……。」

ドンッ

また同じ音がした。

「やっぱり。」

「前へ進もう。」

恐る恐る一歩ずつ踏み出す。

「ククッ。」

不気味な笑い声が上から聞こえた。

上を見上げると……。

いた!

「ダークホール!」


7 攻撃


「出たな!ダークホール!」

「ククッ。獲物が三人なんて、幸運だ。」

わー食べないでー。

「勝負!」

ダークホールはダークだから光が苦手なはずだ。

光明の魔法……。

「光明の祈りよ、我に操れ!」

ピカーン。

……効かない。

「うそっ!?」

二人も驚いている。

「じゃあ……、炎!」

わたゲロくんの番。

「炎の祈りよ、我に操れ!」

……。

効かない。

つよぉ~!

どうしよう、本当のマジでやばい。

「ふ、ふさゲロくん。」

「うん。じゃあ海水。」

ふさゲロくんは深く深呼吸したあと、「海水の祈りよ、我に操れ!」と呪文を唱えた。

……やっぱり効かない。

ピンチ!次はダークホールの番だ。

「天の魂のバリヤーよ、我が身を守れ!」

すかさず呪文を唱えた。


8 危機


「ククッ。俺の番だ。暗黒のダーク王デーモンよ、我に魂の力を授けなり。」

聞いたこと無い呪文……なんとなく危なそう。

「ククッ。これはまだ序章、ウォーミングアップというところだ。いくぞ!暗黒のダーク王デーモンよ、我にダークホールの扉を開けたなり。」

やばい!今、「ダークホールの扉を……」って、吸い込まれる!

「吸い込むぞぉぉぉぉぉぉ!」

ぎゃー!!!

思わずその場から逃げてしまった。

「待ていっ!」

ダークホールの腕がガッチリとつかむ。

「しゃぼゲロくん!」

「やめて!」

二人が止めようとする。

「さっそく、獲物、いただくぜ。」

「助けて……」

もう二人に頼るしか……。

もう終わりだ……。

助けて。

ぼくのせいだけど。


9 しゃぼゲロを助けることは、できる?


「ぎゃー!わっちゃんの大親友が……」

わたゲロくんが泣き崩れている。

「助けて!やめて!ぼくを……助けて!」

必死で叫ぶ。

「いっただっきま~す!」

ダークホールが吸い込もうとしている。

「スケスケの祈りよ、我に操れ!」

そう唱えたのは、ふさゲロくん。

すると、ぼくたちはスケスケの透明となった。

ぼくはダークホールの腕からすっと抜けると、ダークホールに攻撃を仕掛けた。

「虹色の魔力の祈りよ、我に操れ!ダークホールを包たまえ。」

この呪文があることをぼくは思い出した。

あれは、まだ小学校に入る前だった。


ぼくと同じように、ぼくの爺ちゃんが妨害魔法をかけて自分で時間巻き戻し魔法をかけてしまい、ダークホールに吸い込まれる運命になってしまった。

そのときに、「虹色の魔力の祈りよ、我に操れ!ダークホールを包たまえ。」という呪文を唱えていた。

でも……ぼくのひいおじいちゃんが、ダークホールに吸い込まれてしまったんだ。

この記憶は、お父さんが「残酷だから」ということで魔法をかけて消し去ってくれた。もちろん、ひいおじいちゃんのことは忘れた。

でも、でもね……今日、その記憶の蓋が開いた。

一気に思い出した。

ひいおじいちゃんのことは悲しいけれど、自分を助けなければ。

そういう思いが芽生えたんだ。


ダークホールは泡のように消え、ぼくたちは、無事に学校へかえることが出来た。