1 愛しいちび蛙市
なかゲロは、デカゲロ探偵事務所に来てからもう四年。デカゲロ探偵事務所も四年。デカゲロ探偵事務所ができた時から務めている。なかゲロは最近、実家のちび蛙市が愛しくなってきた。
「いつか、実家に戻れないかな・・・・・・」
なかゲロはつぶやいていた。いくら慣れてきたとはいえ、なかゲロは実は寂しがり屋。両親と会いたいし、母校に帰ってみたい。
「デカゲロくん、OKくれるかな。」
ガチャン
「ん?」
「さっき、話、聞いていたんだ。」
出てきたのはデカゲロ。
「行きたいなら、行ってもいいよ。ちょうどいい予定があるから。」
「本当?」
「メガゲロととくゲロが漫才ショーをやるんだって。それがね、二週間後だから、その時まで行ってていいよ。」
「やった・・・・・・」
いつもは敬語で話しているなかゲロだが、今日だけは違う。
「さらに、新幹線の費用も出してあげる。」
ちび蛙市とピクルス市は新幹線の路線はおよそ百キロ。新幹線で行かないといけない。
「里帰り、しておいで。」
2 ワクワクドキドキ
なかゲロは今ピクルス駅で新幹線を待っている。ワクワクドキドキが止まらない。
「あぁ。早く逢いたいな。」
ビューン
「あっ。」
新幹線に乗ると、席はきれいな紅葉色。
「これ、美味しい。」
まだ発車もしていないのに、なかゲロは駅弁をパクパク。
「ちょっとお兄ちゃん。」
なかゲロはおじいさんに声をかけられた。
「はい。」
「これ、何て書いてあるんじゃ。」
そこに書かれていたのは東西。どうやら車か東か分からないらしい。
「あ、これは、東西って読むんですよ。」
「そうか。ありがとうねぇ。」
こんな質問をされたって、なかゲロのワクワクドキドキは止まらない。
はい。まもなくちび蛙~ちび蛙~
3 なかゲロの久しぶり
両親は、ちび蛙駅のホームで待っていた。
「なかゲロ!」
両親はなかゲロに抱きつく。なかげろも抱きつく。
「お父さん・・・・・・お母さん・・・・・・」
「なかゲロがちび蛙に帰ってくるってデカゲロさんから電話があったのよ。」
(先輩、サプライズで行こうと思ったのに、言わないでくださいよ。)
なかゲロは思ったが、デカゲロは大事な先輩。さらに、今は両親の前だから、言わないことにした。
「じゃあ、久しぶりに実家に帰るか。」
「うん。」
なかゲロは実家に来るのは五年ぶり。
「あぁ。懐かしい匂い。懐かしい声。懐かしい雰囲気。何もかもが懐かしい。」
なかゲロはつぶやく。
「お母さん!あのホットケーキ食べたい!」
「はいよ。」
「わあ。」
なかゲロは子供の時食べていた抹茶ホットケーキにかぶりつく。
「美味しい!やっぱりお母さんのホットケーキは最高!!」
4 母校に帰る
なかゲロが通っていた小学校、ちび蛙第一小に来ていた。
「あ、ぼくが通っていた学校だ。六年三組はあそこかな。」
なかゲロは教室を指さす。
「入ってもいいかな。」
ガラガラ
そこには、なかゲロの六年の時の担任のしゅろい先生がいた。
「しゅろい先生!!」
「なかゲロ、久しぶり。デカゲロさんからなかゲロが来るって連絡があったのよ。」
「そ、そうなの?」
(ぼ、ぼくがサプライズで来ているのかな?)
なかゲロはそう思ってしまった。お父さんとお母さんが駅で待っていたのもデカゲロが仕組んだこと・・・・・・
「そうだなかゲロ、あたし、校長先生になったのよ。当時先生さえ見れなかった所へ案内しましょう。」
そう言われてなかゲロは連れて行かれた。連れて行かれたのは倉庫。そこには学校のお宝らしきもの。
「これはね、学校の未来を占ってくれる水晶玉なの。占い師が占っていたんだけど、来なくなっちゃって。なかゲロにあげるわ。」
「いや、それ、学校のものじゃ・・・・・・」
「いいのよ。あたしはもう校長なの。学校をどうするかは校長が決めるの。あたしの勝手よ。」
「じゃあ、もらいますね!」
5 なかゲロの後輩!?
「なかゲロ、そんな敬語じゃなくていいのよ。あなたは今は社会人でしょ。自分の勝手でいいのよ。」
しゅろいはさっきから「勝手」「勝手」としつこい。
「なかゲロ先輩!」
後ろから声が。
「ん?」
「あなたの後輩よ。」
なかゲロの後ろには今通っている生徒が。
「はい。みんな。昔、このちび蛙第一小に通っていたなかゲロさんです。」
「イェーイ!!」
「みんな、どんどん質問してって。答えてくれるから。」
「え?え?え?」
もちろんなかゲロはこんなこと、知るわけがない。
一人の生徒が手を挙げる。
「なかゲロ先輩の時は、学校の人数どれくらいでしたか?」
「えっと・・・・・・いまの三分の一ぐらいですね。」
「え~そんなに少なかったのぉ~」
「結構多いかと思ったけど。」
教室からはいろいろな声が。
「静粛に!」
校長先生は怒ってしまった。なかゲロはそこでさようなら。
6 通っていたラーメン店
なかゲロは当時通っていたラーメン店へ。
「いらっしゃい。おぉ?なかゲロが来たぁ。」
「お、お久しぶりです。」
「じゃあ、特別一丁!」
すると店員はなかゲロ用の特別ラーメンを作ってくれた。なかゲロの好みにあわせて、メンマが多めのラーメン。
「やった!」
なかゲロの目がキラキラと輝く。
「いっただっきまーす。」
「どうだ?都会の方が、美味しいか?」
「美味しい。昔の味。やっぱりここが一番。」
「そうか。なんだか嬉しいな。」
「顔にとても嬉しいって書いてありますよ。」
「え?あ?そうか?」
「分かってしまいますよ。そんぐらい。」
なかゲロは最後の一口を口に入れた。
「ごちそうさま!」
「またいつか来いよ。」
7 デカゲロに報告
「ただいま。」
「お、お帰り、なかゲロ。」
「あ、なかゲロくん。」
「みんな、お土産。」
「え?」
「これ。水晶玉。」
なかゲロはみんなに水晶玉を見せた。
「わあ、すごい。」
「ってどこで買ったの?」
「もらったの。」
「もらった!?」
「どこで。」
「ぼくの母校ちび蛙第一小だよ。」
「ふーん。」
なかゲロはドアを開けるとびっくり。
なかゲロが見たもの――
それは、たくさんのかえるたち。
「こ、この人たちは。」
8 その人たちとは
その人たちはなかゲロの同級生たち。
「み、みんな・・・・・・」
「おかえり。なかゲロ。」
同級生たちはなかゲロを見て、笑い合ったり、泣きあったり。
「みんな。何してるの?」
「今から、喫茶店の一室を借りて、同窓会をするんだよ。」
「え?」
「え?じゃなくて、行こ。なかゲロは行かないのかい?」
「い、いや、もちろん行くよ。」
「かんぱーい!」
「か、かんぱい。」
なかゲロはどうしてもテンションが上がらない。
「なかゲロ、どうしたのか?」
「い、いや、別に。」
――静粛に!
あのしゅろい先生が、あんなに怖かったとは。なかゲロも心を打たれた。
なかゲロが六年の時、しゅろい先生は、みんなにも優しく、人気の先生だった。でも、あんな優しい先生が、いつの間にか変わっていたなんて。
「なかゲロ、元気だしてよ。久しぶりにみんなと会うのに。」
「う、うん。」
結局、同窓会は、なかゲロの気持ちは上がらないまま、終わってしまった。
9 勇気をこめて
なかゲロは、しゅろい先生に勇気を出して、そしてこめて電話をしてみることに。
「あ、しゅ、しゅろい先生・・・・・・」
『どうしたの?なかゲロ。』
「き、昨日、先生が・・・・・・静粛に!って怒った時・・・・・・」
『の時?』
「ぼ、ぼく、先生が・・・・・・とても、怖かった。」
『なかゲロ、ごめんね。あの時、今の子供達はあれぐらい声を出さないと、静かにならないから・・・・・・』
「じゃあ、じゃあ、先生の性格が変わったわけじゃなかったんだ。」
『もちろんよ。』
「よ、よかった。」
『困ったことがあったら、これからも、連絡してね。』
「はい。」
すると、デカゲロが水晶玉を持ってきた。
「なかゲロ。この水晶玉、本当に占えるよ。」
「ほ、本当?」
「ほら、見て。」
そこには、浮かび上がっていた。
未来の、事務所の姿が。