13 代理行為の瑕疵とは何ですか?
(代理行為の要件及び効果)
第101条
1:代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2:相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
3:特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
一.101条1項
代理人⇒相手方に対してした意思表示の瑕疵については、「代理人」を基準に判定されます。
✅意思表示は代理人がする
✅代理人による意思表示の効力は本人に帰属する
✅代理人から相手方への意思表示の効力が、相手方の錯誤や詐欺・強迫を原因とした場合、その事実の有無は代理人を基準に考えることにする
以上を具体的に当てはめてみましょう。
A(本人)
↓
(代理権)
↓
B(代理人) ←→ C(相手方)
※「C」が「B」に対して「詐欺」
このケースでは
1)Aはダマされていない
2)ダマされたのはB
であることから、
1)Aを基準とするとAは取消しできない
2)Bを基準とするとAに取消権が発生する
ということになります。
101条1項は2)の立場に立っているということです。
なお、99条1項で「代理人が~した意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる」と規定していることから、Bがダマされたことによる取消権も本人に発生します。
二.101条2項
✅相手方が代理人に対して行った意思表示についての善意もしくは悪意または善意有過失については、その悪意または善意有過失の事実について代理人を基準に決するという規定です。
A(本人:未成年)
↓
(代理権)
↓
B(代理人:法定代理人) ←→ C(相手方)
①「B」が「C」にAの土地につき売却の意思表示
②「C」が心裡留保で「B」に購入の意思表示
③「B」が善意かつ無過失ならAはBC間の有効を主張可相手方Cが代理人Bに対して「心裡留保」による意思表示を行った場合、
✅法定代理人BがCの真意について善意かつ無過失→Aは有効を主張
✅法定代理人BがCの真意について悪意もしくは善意有過失→Cは無効の主張をAにし得る
ということになります。
A(本人) D(第三者)
↓ ↓
(代理権) (詐欺)
↓ ↓
B(代理人) ←→ C(相手方)
①第三者Dが相手方Cに詐欺
②代理人Bに対するCの意思表示
ⅰ)Bが善意無過失ならCは取消不可
ⅱ)Bが悪意、善意有過失ならCは取消可
✅相手方Cが第三者Dによる詐欺に基づき代理人Bに対して意思表示を行った場合、
✅相手方Bを基準に「悪意または善意かつ有過失」について判定がなされ、
ⅰ)Bが善意かつ無過失ならばBC間は有効で確定し、Cの取消不可
ⅱ)Bが悪意または善意かつ有過失ならばCは取消をBやAにして主張可
となります。
三.101条3項
ただ、以上の内容には例外があり、
✅特定の法律行為をすることを委託された代理人が
✅その委託された行為をした場合
✅「本人」が知っていた事情もしくは過失によって知らなかった事情について
✅「代理人」の善意を主張することができない
として、「本人を基準」として悪意や善意有過失の認定をすることとしています。
【事例】
A(本人)
↓
代理権
↓
B(代理人) ←法律行為(意思表示)→ C(相手方)
①A→B Cの土地を売る代理権を授与
⇒Aは特定の法律行為をすることをBに委託
②CがBに心裡留保に基づき「買う」意思表示をBに対してなす
なお、BはCの真意を知らず、また知らないことにつき無過失である
③AはCの真意を知っている
✅このケースでは確かに「B」が善意無過失ではあるが、
✅AはBに土地売却という特定の法律行為を委託している
ことから、101条3項の規定により、
✅本人AがCの真意を知っていることについて、代理人のBが善意かつ無過失であることを主張できないため、CはAの悪意をもって、Aに対して、BC間の無効を主張しうることになります。