はじめに

 宇摩郡の西部、前、宇摩郡土居町の地域に、スサノオを祭る神社は、先に「スサノオが平地開拓した」として、例を上げたが、土居町でも荒神社して多い。独自の社名の神社もあるので、これらはその地との縁故を指すものだろう。

 宇摩郡では、数から言えば、山神社(大山津見)が多くて、荒神社(すさのお)、素稲神社(スサノオ・ウマノミタマ)、八幡神社三島神社と続くようだ。スサノオ・ウカノミタマと同じ祭神で、「平岨神社」、小山田神社」などがある。

 旧土居町で、大己貴の命を祭る祠は、近井郷の旧上野村、蕪崎村、天満村にある。この外は、津根郷の野田にある。大国主との関係が偲ばれる。

 入野に無いのは、この村の神社が、「住吉神社」であり、朝廷の関与が偲ばれる。つまり、合祀等で、消えて行ったのだろう。河内神社があり、祭神不明だ。河内神社は畑野村にもあるが、ここも祭神不明とある。

 私は木の国なら来たのオオクニヌシだろうと思う。現在のように原動力で動く時代ではない船は、目的地の真向かいから出発するのではない。つまり、河内から満ち潮に乗って、数日かけて、宇摩に着いたものと思うからだ。

 後世の変化が有名な入野には起こったのだろう。たぶん、斉明天皇の時であろう。しかし、社名が違うと、見落とされたものだろう。オオクニヌシの祠が明治17年には幾つか残っていた。

 上野に、王子神社(大己貴)
 蕪先に、須賀神社(大己貴)
 天満に、大地神社(大己貴)
 野田に、荒神社(素稲大神・大国主大神)

 これらの祠が、大国主が宇摩に来た証であろう。

 さて、これで、八上比売に移る。原文、現解釈共に少ないので、コピーを入れる。

  原文(八上比売後半)

故、其八上比売者、如先期美刀阿多波都。
故、其八上比売者、雖率来、畏其嫡妻須世理毘売而、其所生子者、刺挟木俣而、返。
故、名其子云木俣神、亦名、謂御井神也。

  八上比売の現解釈

故、其の八上比売は、先の期(ちぎり)のごとく、美刀阿多波都(みとあたはしつ)。
故、其の八上比売をば、率(い)て来ましつれども、その嫡妻(むかひめ)、須世理毘売を畏(かしこ)みて、其の生める子をば、木の俣(また)に刺し挟(はさ)みて、返りき。
故、その子を名付けて、「木俣(きのまたの)神」、亦の名を、御井の神と謂う。

  現語義
みとあたはしつ 婚姻をした。


  宇摩説の解説

 宇摩説では、八上比売は個人でなく、各地の主の多くの姫だと解いた。だから、この話は、その何人かの中で、子を連れて大国主を頼って来た姫が居たと言うことだ。

 この理由はさまざまな場面が想定される。例えば、大国主が好きで(忘れられずなど)、地元を逃げてきたなどである。とにかく、地域の主の娘達だから、地域から離れる姫は少なかったのだろう。

 この時代の結婚は、現在と違って、妻の家に入り込んだり、(後でこの話が出る)、妻が夫の家に来たり、その置かれた状況によって、色々な夫婦が居たのである。これは、平安時代まで続いていたようだ。

 このヒメは、スセリビメを畏れて別れを決意した。最後に、子供を「木の俣」に挟んで帰った。サシハサムは、幾つかの意味がありそうだ。子供を差し上げた。また、刺し国に関係するヒメ。また、木の国のヒメ。他にもまだ、ハサムの意味があるようだ。

 なお、現代人は、八上比売の行動を薄情な親のように、感じるが、この時代は、「誓約」によってすら、親子になる時代であり、置いていった子が不幸になるようなことは無かった。親の情は変らないから、大国主に託したのであろう。

 片親の大国主の所に残したのは、子の出世にも関係することである。だから、この子は、神となり、名が残っている。このために、余り気にせず、置いてゆけたのであり、現在の捨て子とは意味がまったく違う。社会が違う。

 この神が「木の俣の神」と呼ばれたのは、子の神の経緯を名にしたものだ。しかし、先の話で大国主が木の国のオオヤビコの家から逃げる時に、「木の俣」から逃げ出した。この話に絡むと、親の名を次いだ可能性も出てくる。

 この名は、まだ、アチコチとどのように整合するか判らないので、未決定だ。が、この子の母の八上比売は、先に言ったように、木の国のオオヤビコの娘の可能性は高いと思う。

 八上比売は名の通り、全国の主(上)のヒメだから、ほかの地域の主の娘の、八上比売が多く居たのである。そして、後半に出てきた八上比売は、木の国のオオヤビコのヒメであろう。

 以上のように、根の国訪問は、実は高天原の麓の宇摩平野にある根の国に言ったのである。この地域に武装しては来れないので、八十神は追ってこなかった。しかし、この後、スサノオの言葉通り、各地を回って八十神と対決はあったと見られる。

 以後は、このような対決の話は無く、求愛の話になる。

なお、次回は、宇摩郡土居町の神社から幾つか関連しそうな神社を紹介する。
天智天皇の衣掛け岩」など、写真が出れば、載せようと思う。


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