「アメリカは」二つ存在している! 7-6 | 愛する祖国 日本

「アメリカは」二つ存在している! 7-6

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.284〜

 一九九九年以降、民主党の牙城であるカリフォルニア州では、民主党の知事の下で講和条約を無視して日本企業へ戦時賠償を求める訴訟が二十八件も相次ぎ、カリフォルニア州地方裁判所は日本企業に賠償を命じた。これは一九九七年七月に、中共ロビーの意を受けたトム・ヘイデン民主党上院議員が提出して成立した所謂「ヘイデン法」に基くものであり、中共の在米反日プロパガンダ工作員と民主党親中派が仕組んだ日米離反工作の一貫であった。ヘイデン上院議員は一九六〇年代には、共産主義革命を呼号するSDS(民主社会学生同盟)という「アメリカの全学連」を創設したSDS初代議長であり、中共や北朝鮮へのシンパシィを宣伝している民主党最左派の一人である。さらに元々より民主党が圧倒的な勢力を誇るカリフォルニア州は反日傾向の強い州であり、日露戦争以後の排日移民法・日系人の土地保有禁止法・日系人学童排除法など、米国の排日運動は大半がカリフォルニア発であった。現在カリフォルニアには在米華僑グループが創立した「太平洋文化財団」という組織があり、さらに中共の国際的反日史観プロパガンダ組織「抗日戦争史実維護連合会」の本部もカリフォルニアであり、中共諜報機関と民主党親中派が協力して、これらの組織を米国の反日史観プロパガンダ拠点に仕上げている。

 このカリフォルニアの反日攻勢はヘイデン法にとどまらず、一九九九年十一月にはカリフォルニア州選出のファインスタイン民主党上院議員が、さらに翌年二〇〇〇年二月には同州選出のビルブレイ民主党下院議員が、それぞれ上下院に日本の戦争責任を追及する法案を提出するに至った。ファインスタインはこの法案の提出時に「日本軍が中国人捕虜に生物・化学兵器の人体実験をしていた証拠が米政府に保管されていないか調査している」という声明を出していたが、その直後に実にタイミングよく中共で七三一部隊の人体実験の証拠文書なるものが突如「発見」されて公表され、民主党系のリベラル諸紙で大きく報じられた。要するにファインスタインの声明と中共の証拠文書捏造は、絶妙の呼吸で連携していた共同謀議だったのである。

 クリントン時代のこの錯乱したカリフォルニア州の反日策動の、その背景に中共ロビーと民主党親中派が暗躍していることを熟知していた共和党は、ブッシュ政権誕生後すぐに「サンフランシスコ講和条約にて全て解決済み」と声明してカリフォルニア州を抑えにかかった。その結果、二〇〇三年一月二十一日にサンフランシスコ連邦高裁は「ヘイデン法は違憲」との判断を下し、同二月六日カリフォルニア州上級裁も同州地方判決を棄却、同十月六日に米最高裁がサンフランシスコ高裁の判決を支持して原告控訴を棄却し、本訴は判決確定するに至っている。日本離反工作を警戒するブッシュ政権であったからこそカリフォルニアの反日策動を抑えたものの、もし民主党政権であったならば「ヘイデン法」の悪禍は全米に波及していたことであろう。

 さて読者氏は映画には、純粋な娯楽作品と政治的プロパガンダを含有する作品の二種類が存在することをご存知だろうか。かつて日本でも若松孝二・大島渚・山本薩夫らが新左翼映画をつくっていたが、例えば「独裁者」で反ナチス・プロパガンダを行ったチャップリンは共産主義者でもあったことから、冷戦下の米国は一九五二年の米出国以後二十年間もチャップリンに再入国ビザを与えなかった。反ブッシュのドキュメンタリーで物議を醸しているマイケル・ムーアも熱心なマルクス主義者である。私は映画史の研究も行っているが、政治性のある大作映画の製作背景を調べるといろいろと興味深い事実が判明する。クリントン政権下の米国で制作された反日プロパガンダ映画の一つとして、日本軍を一方的に悪役として描いた『パールハーバー』がある。日本の大本営がそこらの土手に置いた水槽にオモチャの船を浮かべて米国攻撃の作戦会議を行い、その脇にはフンドシ一丁の兵が並び、あげくには機密会議の筈なのに土手で子供たちが凧揚げをしているという、日本をとことん馬鹿にした屈辱映画だ。この映画の悪質な点は、実際には軍事施設しか攻撃しなかった日本軍が病院爆破をしているという捏造シーンを加えることで、アメリカによる日本への大空襲(民間人大量虐殺)を正当化していることである。実はこの作品の製作には、クリントンの指示で米海軍や国防総省から「PR費用」の名目で多額の製作資金が提供されている。その資金提供の背景にはカリフォルニアの訴訟と同様に、これまた中共ロビーの要請と献金が有り、この映画はアメリカ国民の反日感情を煽る日米離反工作目的に製作されたものなのである。

 フランク・キャプラやジョン・フォードに端を発して、アメリカでは従来より政党が映画を政治的プロパガンダに用いる伝統がある。ハリウッドの大半はユダヤ資本であり、ハリウッド大手映画会社役員の約六十%がユダヤ人であることから、映画産業は民主党の牙城となっており、「ハリウッドの共和党員は、C・イーストウッド、C・ヘストン、、M・J・フォックス、A・シュワルツヘッガーの四人組しかいない」と揶揄するジョークが有るぐらいなのだ。従って必然的に民主党がこのプロパガンダ手法を多用する傾向にある。例えば一九九六年の大統領選挙前にクリントンが協力して製作された『アメリカン・プレジデント』はハンサムな民主党大統領を主人公とするラブストーリーで、登場する共和党大統領候補は醜男で陰険な悪役として描かれていた。また同時期には民主党左派のオリバー・ストーンが民主党支持者の俳優を集めて『ニクソン』を監督し、共和党大統領であったニクソンをケネディ・コンプレックスに悩む卑屈で嫌味な人物として描き、怒ったニクソンの遺族が告訴している。これらの作品に共通していることは民主党系のユダヤ金融資本の資金が製作費に流れているということだ。中共が反日プロパガンダ映画を量産しているのは公知のことだが、ついに同盟国たる米国の民主党政権までもが反日プロパガンダ映画製作に資金提供したという意味で、この『パールハーバー』は一つの分岐点となる。日本ではTVのインタビューでこの映画の感想を聞かれて「感動した」だのとコメントしていた馬鹿な若者たちがいたが、まさに日本人の無知と愚かさを象徴するものである。(なお共和党政権下で『ラスト・サムライ』が製作され共和党系諸紙がこの映画を絶賛していたことにも注目しておきたい。)

 現在、中共は前述の在米「抗日戦争史実維護連合会」を中心として、全米で日本悪玉史観を喧伝するセミナーやシンポジウム、パネル展、書籍発行、エセドキュメンタリー製作などを大々的に展開しており、民主党がそれを全面的に支援している。中共が「日本の侵略・戦争犯罪」を米国民に宣伝する業務を委託契約している大手PRコンサルタント企業ヒル・アンド・ノートン社は、民主党と目されるユダヤ資本企業である。また中共は前述のように闇献金を民主党要人にバラまく一方で、江沢民は訪米時にクリントンへの手みやげとしてボーイング五十機の購入を行っている。ロッキード社が共和党よりなのに対してボーイング社は民主党よりといわれており、ボーイング社は中共に媚びるために台湾の呂秀蓮副総統の工場見学を拒否したぐらいである。こうして赤字転落していたボーイング社は大喜びで民主党に多額を献金し、クリントンは一層対中マーケットに幻惑されていったのだ。この反日の中共と嫌日の民主党との蜜月は、まさに大東亜戦争前夜の日米中の関係を想起させ、すなわち冷戦終結によって民主党は原点回帰したともいえよう。ひたすら中朝の機嫌をとり続けたクリントン、そしてクリントン路線の継承を唱えるケリーの目には、むしろ北朝鮮よりも日本の方がエネミー(敵)として写っているのではないだろうか。

 とにかく日本を目の敵にして中共に媚びた民主党のクリントンに比べて、ブッシュは共和党の本流に位置する人物なので日本に対するスタンスについても正反対である。例えばクリントン政権ではアメリカのみを守るNMD(米本土ミサイル防衛)と同盟国をカバーするTMD(戦域ミサイル防衛)を区別していたのだが、二〇〇一年七月にブッシュ政権は「同盟国の安全保障はアメリカの安全保障である」と宣言してBMD(弾道ミサイル防衛)として一つの計画に統合した。英国などにはミサイル攻撃を受ける差し迫った危機はなく、つまりブッシュは日本のためにNMDとTMDを統合したとも言える。ここにもブッシュの対日観が現れている。

 アメリカの歴代政権で日本核武装を支持又は容認する姿勢を表明したのは、ニクソン政権と現ブッシュ政権のみであり、ともに共和党政権だ。ニクソンは対ソ戦略上の必要と再選へ向けた人気回復目的から米中和解を行ったが、それによって中共から日本を護る安全保障力が低下した代償として、日本核武装を認める信義を示した。ブッシュ政権については詳しくは後述するが、やはり北朝鮮情勢に鑑み同盟国の信義としての日本核武装支持である。共和党のスタンスに比べて、逆に民主党は「いかに日本の軍事力拡大を抑えこむか」を一貫して優先してきた。安保よりも経済優先の民主党にすれば、日本が軍事力を拡大して国際社会での政治力を増大させることは、日本が再び経済的にもアメリカの脅威になることにつながると考えているのだ。つまり分かりやすく例えれば、共和党は軍人であり、民主党は商人である。商人は損か得かで判断するが、軍人は敵か味方をハッキリと区別して経済的な損得勘定では動かない。

 ところで日本は偏向マスコミのせいで共和党に対して「戦争屋」のようなタカ派イメージを持つ日本人もいるが、歴史的に鑑みると第二次大戦に参戦したルーズベルトもベトナム戦争に介入したケネディも民主党であり、二十世紀に米国が参戦又は関与した戦争は、一九九一年の湾岸戦争と今回のアフガニスタン及びイラクを除く他のほとんどが民主党政権下で決定されている。どちらがタカでもハトでもなく、共和党が国家戦略的な戦争を行うのに対して、民主党はムードに流されて結果的に戦争を行ってしまうという、その差があるだけなのだ。例えばクリントンは一九九三年~二〇〇一年一月に渡る八年の在任期間中に、紛争対処のために計七十六回米軍を出動させているが、その全てに置いて失敗している。民主党はユダヤ資本と組んでいることから経済戦争には強いが、本物の戦争については明確な信念や戦略を持たずにその場しのぎの対応を重ねることが多いのだ。

 また民主党が容共主義ゆえに国際戦略に失敗が多いことに対して、共和党はその反共主義の強さゆえに安易な妥協をしないという差もある。レーガンは米国史上初めて核軍縮を行った大統領でもあるが、それはソ連と同時に行われたものであり、この核軍縮会談でゴルバチョフがSDI計画放棄を交換条件に持ち出したところ、レーガンは毅然と席を立っている。このレーガンの強い意志を悟ったゴルバチョフは、結局交換条件を付けずに米ソ同時核軍縮に応じたのである。それに対して民主党カーター政権は、ソ連に対して「善意」と「和解」を呼びかけて米国自ら一方的な軍縮を行った。しかしその結果、「弱いアメリカ」をなめたソ連は、アフガニスタン侵攻を手始めにベトナム、アンゴラ、エチオピア、ソマリア、ニカラグアなど世界中で軍事的かつ政治的な覇権を求めて紛争を引き起こすに至っている。クリントンの甘やかしが中共の軍事大国化を招き、さらに北朝鮮を増長させて核開発を加速させたことと同じパターンである。


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