「アメリカは」二つ存在している! 7-3 | 愛する祖国 日本

「アメリカは」二つ存在している! 7-3

第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.270〜

 民主党大統領候補のジョン・ケリー上院議員もその例外ではなく、一九九六年に中共人民解放軍傘下の「中国航天国際公司」役員の劉朝英(人民解放軍の現役軍人)が米国の中国人実業家ジョニー・チャンに三十万ドルを託し、チャンはこの金をケリーに闇献金している。中共のヒモ付きとなったケリーは、人民解放軍系企業の米国証券市場上場に便宜をはかるなどの中共のエージェントとしての役割を果たしたが、一九九八年ジョニー・チャンがケリー及びクリントンへの不正献金で逮捕され有罪確定となると「金はチャンに返した」と言い張った。自らも後ろめたいクリントン政権が当局に圧力をかけてケリーは訴追を免れたが、もし共和党政権下での発覚であれば逮捕されていた可能性もある。

 この不正献金を自著でスクープしたのは米上院外交委員会元主席W・C・トリプレットだが、クリントンら民主党首脳が中共から一千万ドル以上の闇献金を受け取った行為は、アメリカでは「国家反逆罪」に該当する。しかしFBIが報告したこのクリントンの「国家反逆罪」について、クリントン政権の司法長官は捜査の打ち切りを命じ、米国民の目をそらすカモフラージュとして、ルインスキー裁判偽証事件を前面に押し出して捜査を命じた。当時「なぜ米国司法長官は自らの政権の大統領を偽証で訴追させたのか」と不思議に感じていた方もおられるであろうが、その背景にはこういう事実が存在していたのだ。また共和党もアメリカの名誉に鑑みて「アメリカ大統領が中共からワイロを受け取っていたなどということは、民主党の問題のみならずアメリカ国家の恥だ」と考え、敢えて執拗な追求は控えている。橋本元首相の中共スパイ愛人問題で、西村真悟代議士が批判はしても敢えて執拗な追求を控えられたが、それと同じような想いが共和党にもあったのであろう。

 ちなみにクリントン政権下のバーガー安全保障担当補佐官は元々は中国ビジネス専門のロビイストであり、ペリー国防長官(第一期)は現在北朝鮮ビジネスのロビイストになっており、コーエン国防長官(第二期)にいたっては中共との貿易コンサルタント会社の経営者でもあった。このコーエン元国防長官は二〇〇三年一月に日本の国防筋に対して「北朝鮮の核兵器保有を日本は容認できないか」と打診してきた人物である。そして勿論のことクリントン自身も退任後は複数の中共企業の顧問を務め、たっぷり顧問報酬を受け取っている。このように中朝利権につながる人物たちがアメリカの安保・国防政策を指揮していたのがクリントン民主党政権であった。この中共マネーの民主党汚染について近頃、共和党ギングリッチ前下院議長は「クリントン政権に関していえば、あの連中は本当に恥知らずな連中というしかない。本当に腐敗した人間たちだった。しかし現ブッシュ政権に関していえば、正直な人間だ。ブッシュは約束を守る。彼は日米同盟の信頼関係を壊すようなことは、絶対にやらない。ブッシュは日本を裏切ったりしない」と日本人記者のインタビューに答えている。

 現在アメリカには、約一万五千人の中国人のロビイストが存在しており、その大半は民主党と太いパイプがある。一例を挙げると、アメリカにおいて政治や経済などの分野で成功し社会的影響力を持つ在米華僑約百人が、一九九〇年に「百人委員会」というロビー組織を結成した。そのメンバーは現在は五百名近い人数に膨らんでいるが、主要メンバーとしては、中国系で初めて州知事になったワシントン州知事ギャラリー・ロック、コロンビア・トライスタ・ピクチャーズ社長のクリス・リー、カリフォルニア大学バークレー校前総長のチャン・R・ティエンなどが名を連ねている。このような中共のロビー組織は大小合わせて全米に無数に存在しているが、一方日本はマトモなロビー組織を持っておらずロビー活動も何も行っていない。なお共和党に対するロビー活動は台湾のロビイストの方が活発なのだが、民主党は伝統的に嫌日傾向と中共よりのスタンスが強く、ヒルズ元通商代表、ヘイグ元国務長官、民主党上院議会の有力者ダイアン・ファインスタインなどは今や完全に中共のエージェントとなっている。

 これらの多くの中共ロビー団体に加えて、現在「米中通商ビジネス評議会」(グリーンバーグAIG保険会長)と「米中通商ビジネス連合」(GM、モービルエクソン等が中心)という二つの圧力団体が、中国市場の参入のために中共重視の政策を取るように民主党を動かしている。さらにクリントン時代に中共は人民解放軍のフロント企業を全米に二千社以上設立し、その各社を通じて地元の民主党議員の懐柔を進めており、ブッシュ政権下でDIA(国防総省情報局)がこれを警戒するレポートを発表している。つまり中共と民主党はもはや切っても切れない「裏のつながり」を構築しており、民主党の本音は「中共十三億人のマーケットをユダヤ資本で独占したい、日本の防衛なんかのためにアメリカが血を流すのはまっぴら御免」といったところなのだ。クリントン政権で国防次官補を務めたジョセフ・ナイは、二〇〇三年九月に朝日新聞で同紙論説主幹と対談し、「私は米中の敵対を信じてきませんでした」「日本に憲法改正の必要はない。むしろ危険です。中国や韓国など近隣諸国に不安を抱かせますから」と述べているが、中共に批判的な産経や読売ではなく中共シンパの朝日で対談するところが、中共と手を組んで対日封じ込めを推進する民主党要人らしい選択である。

 民主党の方針を知るために分かりやすいのは、クリントン政権下における民主党系シンクタンク群のレポートであろう。それらのレポートでは「中国が国際秩序に対する脅威だと主張している保守派の見方は単純すぎる。中国は柔軟性があり、アメリカは中国に的確に友好的にコミットしていくべきである」「もし日本が本気で再軍備を行ったら、二〇二〇年〜二〇三〇年までには軍事大国化して、アメリカが唯一の軍事的強国ではなくなってしまうリスクがある。日本の軍事的自立は抑えるべきである」「日本は中国や東南アジアに対して、ドイツを見習って徹底した謝罪を行い、従軍慰安婦その他の戦後賠償を実行するべきである」等々といった趣旨の文言が並んでいる。つまり中共は勿論のこと、日本の左翼が読んだら大喜びしそうな内容に満ちているのだ。

 クリントンは就任後の記者会見で国際経済競争力について述べる中で、世界中のプレスを前に「米国の敵(エネミー)は日本だ」と発言した。アメリカ大統領の口からエネミーという言葉が日本に対して用いられるのは、講和条約発効以来これが初めてである。その言葉どおりクリントンは日本を「防衛タダ乗り」だと非難して、貿易輸入の数値目標を強固に日本に押し付けたが、この時期クリントンの命令でCIAは通産省の電信電話を盗聴していた。これはもうとても同盟国とは呼べない関係だ。一方、一九九五年九月に沖縄で米兵の小学生暴行事件が起こった際、日本の左翼は大々的な反米デモを展開したが、このデモを見た共和党は怒るどころか逆に「クリントン政権は貿易戦争をしかけて反米感情を煽り日米同盟をぶち壊している。民主党は現在の対日政策を転換せよ」と議会で激しく追求している。これは金よりも安全保障を優先させる共和党らしい政治反応である。

 同一九九五年、台湾の李登輝総統のワシントン訪問の査証発行をクリントンは拒否した。日本の外務省じゃないが中共に対して遠慮したのだ。これに対して共和党のギングリッチ下院議長を始め共和党議員の多くが「台湾関係法の趣旨に反する」とクリントンを激しく非難し追求したために、結局クリントンは拒否を撤回して渋々ながら査証を出している。クリントン政権は下院では少数であり、議会は共和党が制していたため、クリントンは逆らえなかったのである。また一九九六年に中共が台湾海峡へミサイルを発射した時にも、当初クリントンはいかなる軍事的アクションを起こすことも拒否した。しかし共和党が空母急派を強く要求し、共和党のC・コックス下院議員が中心となって民主党の一部を説得し、超党派でクリントンを強く責め立てた。下院で多数派であった共和党は「空母を派遣しないならば、下院で大統領の問責決議を行う」と主張し、中共に媚びたいクリントンも淡々ながら空母派遣を命じたのである。共和党と民主党のスタンスをよく知らない台湾人の場合、クリントンに感謝している人もいるようだが、それは大間違いということだ。民主党に台湾防衛の意思は希薄なのだ。

 それに対してブッシュは一九九九年十一月十九日の外交演説で「台湾の自衛力強化を支援する。アメリカは中共の武力侵攻を許さないという、台湾の人々との約束を守る。民主主義体制をとる台湾に北京政府が自分たちのルールを強制する権利はない」と述べており、実際に台湾への軍事協力も増加している。ブッシュ政権は台湾空軍に対して中距離空対空ミサイルAIMー120(アムラーム)の提供を決定しており、共同で実射試射演習を行う計画であることを台湾各紙が報じている。またブッシュは台湾のWHO加盟を支持する法案にも署名しており、中共はこれを「台湾独立へ向けた策謀をブッシュと陳水扁が表裏となって進めている」と批難しているのだ。

 ブッシュが中共に対して「台湾独立を支持しない」と発言を行ったのは、「中共が現在台湾海峡に配備している四百五十基のミサイルを撤去するのであれば」という前提が付随しており、イラクゲリラの抗戦や北朝鮮が片付いていない段階で、万一中共が台湾攻撃に至るとアメリカの手に負えなくなるために予防線を張ったわけである。つまり「イラクと北朝鮮が先だから、台湾問題ではとりあえず中共をなだめて時間稼ぎしておこう」ということなのだ。クリントンが一九九八年に中共に迎合して「三つのNO」(台湾独立不支持、「二つの中国」政策不支持、台湾国連加盟不支持)を安易に口にしてしまったこととは、その根本において全く違うのである。

 パウエル国務長官は「台湾はプロブレムではない。台湾はサクセスストーリーだ」と述べており、共和党のこの基本的スタンスは決して変わらない。だまし合いこそが国際外交であり、その時の状況に応じて表明するコメント内容も「政治的に」変化する。田中真紀子じゃあるまいし、馬鹿正直にホンネを話していればそれは外交ではない。李登輝も元総統も「(台湾独立を支持しないという)ブッシュ発言は戦術にすぎない。戦略的にみれば、長期的に中共は米国の敵に必ずなる。戦略と戦術とは往々にして異なることがある。つまり九・一一テロそしてイラク戦以降、共和党が米中デタントを進めたように見えるのも、敢くまでも戦術であり、アルカーイだ、イラク、北朝鮮との対決を優先するために、中共が安保理などでやたらアメリカに反対しないようにおとなしくしていてもらおうというリップサービスなのだ。

 二〇〇一年五月二十一日、ブッシュは陳水扁台湾総統の訪米を即諾しており、陳水扁は共和党首脳との会談を行っている。さらにその二日後の五月二十三日、中共のチベット支配から満五十周年となるこの日に、ブッシュはダライ・ラマと公式会見を行った。陳水扁とダライ・ラマという中共が最も敵視する人物がワシントンを公式に訪れたことについて、江沢民は「民主党政権ならば、こんなことにならなかった」と側近に対して激しくブッシュを罵ったとのことである。中共からの献金をたっぷり受け取っているゴアが大統領だったならば、台湾やチベットの元首と会うことはなかったであろうということだ。



一言:米下院で民主党が過半数を獲得したので情勢が変わってきている。

次回へ続く

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