「アメリカは」二つ存在している! 7-1 | 愛する祖国 日本

「アメリカは」二つ存在している! 7-1

 アメリカを批判する前に、アメリカの二大政党を理解する必要があると著者の深田匠氏は説いている。このところ、米国議会における反日勢力が策動しているので、むやみにアメリカ全体を批判することは、日米離反工作の面からも、左翼陣営の思うつぼになり、少し冷静さを持ってもらいので、“日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略”の一部を紹介したいと思います。この本は、一節の文字数が多いので何回かに分けてと投稿となります。


第四章 米国の国際戦略
「アメリカは」二つ存在している!
 P.262〜

 アメリカの国際戦略を解析していく上で、まず共和党と民主党はまったく対照的であることを理解してもらう必要がある。共和党も民主党もひとまとめにして『アメリカ』という単位で考えてしまう視点は、日本人が陥りがちな誤りである。「共和党でも民主党でもアメリカはそんなにかわらないだろう」と思っている人も多いようだが、この両党は対外戦略も内政面も大きく異なった思想信条を基盤としており、当然ながら個々の議員によって個人差は当然あるものの党全体のカラーとしては正反対なのだ。

 かつてパキスタンのアユブ・カーン大統領が「アメリカという国とつきあうのは、ガンジス川とつきあうようなものだ」と述べたことがある。ガンジス川は平均して四年に一度、大洪水を起こしてそれまで築いたものを全て押し流してしまう。アメリカも四年に一度の大統領選挙があり、その新政権が共和党か民主党かによって全く違った国際戦略に変わってしまうという意味である。

 未来学の始祖と言われるK・ボールディング博士は、名著『ザ・ダメージ』の中でこの二大政党を「共和党は象、民主党はロバ」として、「共和党は伝統を重んじ、落ち着きがあり、高貴な気位を持つ、厳格な頑固者」「民主党は成り上がり的で、敏感にして小利口だが、自分のことを何も分かっていない陽気な間抜け」と評している。(ちなみにこの象とロバは両党がそれぞれ党のシンボルマークに採用している。)すなわち共和党と民主党とは、陰と陽、リアリズムとポピュリズム、武の誇りと商の利、規律と享楽をそれぞれ代表する政党なのである。それでは両党の支持層・政治的信条・対日戦略などの相違を具体的に比較検証していこう。

 まず民主党のカラーについて言えば、労働運動やマイノリティの集票力が大きく、嫌日親中で容共主義的・国際主義的で国連へのスタンスも好意的である。内政面では、中絶完全自由化・死刑廃止・不法移民容認・労組重視・結婚制度反対・同性愛容認・宗教多様化容認などが特徴であり、いわゆる「大きな政府』志向のリベラル思想の政党だ。

 一方、共和党は伝統的保守層とキリスト教原理主義勢力(三百万人を擁する「クリスチャン・コアリション」を筆頭とする福音派)の集票に支えられ、伝統的に親日反中であり、反共産主義の思想が強い政党である。力による秩序と強力な同盟関係による安全保障策が基本であり、国益重視の反国際主義で、国連に対しては反感を持っている。内政面では、中絶禁止・死刑制度存続・家族制度重視・不法移民反対・銃規制反対などが特徴で、いわゆる「小さな政府」志向の伝統的保守思想の政党である。

 なおブッシュ大統領個人について言えば、ブッシュの生まれ育ったテキサスは今でも「古き良きアメリカ」が残る州であり、ブッシュは家族制度に代表される伝統と規律を重んじ、リベラルの唱えるニュー・カルチャーを否定し、「勤勉に働き、家族と友人を大切にし、約束は必ず守り、国家のために尽くせ」という価値観を確固として持つ人物である。ブッシュのこの信条は同じく共和党大統領であったレーガンの信条と軸を同じくしている。レーガンは荒廃した道徳の復興を掲げてベネット教育長官に道徳教本を編集させ、それは全米三千部のベストセラーになったが、同教本が説く徳目十項目の内九項目までが日本の教育勅語や戦前の道徳教本と同一の内容を米国流に置き換えたものである。このようにブッシュやレーガンに代表される共和党保守派の価値観こそ、我々日本の伝統的保守陣営が共有できるものではないだろうか。

 ところでこれは日本人はあまり知らない様子だが、米国の南北戦争の際に南部側で奴隷制を支持していたのが実は民主党であり、一方北部側で奴隷解放を唱えていたのが共和党である。奴隷解放宣言を行ったA・リンカーンは共和党の最初の大統領だ。南北戦争で敗北した民主党はその勢力挽回のために、新しい移民をターゲットにして「労働者や貧困の党」をアピールし移民船の到着する港で党員勧誘を行った。映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』には、この十九世紀後期の民主党による勧誘の様子が描かれている。つまり共和党は奴隷制に反対すると同時に「白人も黒人も平等であり、黒人優遇は白人の逆差別になる」と一過して正論を主張してきたわけだが、元々は奴隷制度支持の民主党は奴隷解放後は一転して「黒人優遇政策」を唱え出し、企業の入社や大学の入学などにおいて試験の成績に関係なく一定割合の黒人をパスさせる法律を作ったりしている。黒人層の九十%が民主党支持と言われるのも、この民主党の「黒人えこひいき政策」に由来するのだが、この歴史的経緯をみても日本人の多くが持つ「米民主党は弱者の味方」というイメージがいかに誤ったものか明らかである。

 マスコミでは、共和党ブッシュ政権についてネオコン(ネオ・コンサーバティブ派)という呼び方を多用しているが、このネオコンとは、元々はレオ・シュトラウスというユダヤ人政治学者を源流として、マルクス主義から保守主義に転向したW・クリストルという元民主党系評論家が中心となってつくった勢力である。要するに民主党右派が民主党のあまりの容共的左派体質に嫌気がさして内部批判を始めたものであり、共和党にしてみれば対外戦略においては従来の共和党イデオロギーとほぼ一致していただけのことだ。つまり日本で例えると、社会党が自民党に合流して自民党保守派政権が誕生したようなものが、アメリカでいえばブッシュ政権だということだ。民主党リベラルから転向したからこそ「ネオ」と付くのであって、本来の共和党員は単なるコンサーバティーブ(保守)でありネオコンには一人も該当しない。つまり日本の思想界に例えれば、戦前戦後一貫して保守の立場を堅持した田中正明氏や小堀桂一郎氏なんかがコンサーバティブであり、かつてはマルクス主義者でありながら保守に転向した西部邁氏や林健太郎氏なんかがネオコンという立場に該当する。

 W・クリストルに代表されるネオコン陣営は、クリントン政権のウィルソン的理想主義(国際主義)を非現実的な妄想だと断じる一方で、「今世紀に最も成功した米大統領はセオドア・ルーズベルトとロナルド・レーガンである」と述べてレーガン主義への回帰を主張している。セオドア・ルーズベルトもレーガンも共和党の大統領であり、両大統領を手本とするネオコン勢力が、民主党非主流派から共和党主流に合流したのは当然の帰結なのだ。いわばアメリカにおいて政界のイデオロギー再編が行われただけのことであり、ネオコンをまるで闇の陰謀勢力であるかのように批判する向きは、私には幼稚な陰謀論としか思えない。例えるならば、日本の民主党の若手議員たちが民主党の左派体質に嫌気がさして自民党に合流し国防力充実を唱えたところ、マスコミが「ネオコンが自民党を支配した」と騒ぐようなものである。

 ネオコンには内政面では民主党的なリベラル政策を唱える人物が多く、また対外戦略においては民主党の基軸方針たるグローバリズムを信条とするため、反グローバリズム思想を伝承とする共和党主流派と対立することも多い。従来より共和党にはアイソレーションズム(一八二三年にJ・モンロー共和党大統領が唱えたモンロー主義をルーツとする)という他国不干渉主義(反グローバリズム)が根強くあり、P・ブキニャンあたりがこの代表格だが、要するに米国民の生活を第一にしてなるべく外国のことには関わりたくないという考え方である。従ってネオコンが共和党で主流派となることは、このグローバリズムの是非をめぐる思想対立のために有り得ないのだ。ネオコンはユダヤ人が多いのだが、それはグローバリズムなる民主党の世界戦略の目的が、国際ユダヤ資本を中心とする世界中の米国の資産や利権を拡大し保護するために、世界をアメリカの「管理下」に置くことにあるからだ。従ってネオコンは、グローバリズムとシオニズムという元々は民主党の政治思想を併せ持つ「共和党の異端」なのであり、とりわけユダヤ人が中心であるためにシオニズムの要素が強い。シオニズムとは、一八九四年のドレフェス大尉スパイ事件をきっかけにテオドール・ヘルツルが著した『ユダヤ人国家』をそのルーツとして、十九世紀末に欧米で唱えられ始めたイスラエル建国運動であるが、エルサレムの主席ラビであるクック師「ユダヤ民族は神に選ばれた最優秀民族」だとして、ナイル川からユーフラテス川までの広大なる大イスラエル建設とユダヤによる単一世界秩序構築唱えたことから、現在はユダヤ民族至上主義運動に事実上転化している。

 しかし、ブッシュ政権は、ユダヤ系の支配するバーチャル金融経済「ニュー・エコノミー」を否定して実体経済復興政策を採るなど、このシオニズムから距離をあけており、パレスチナを国家承認する意向も持っている。米国歴代大統領の中で、パレスチナ国家承認を明言したのはブッシュが始めてだ。現にイスラエルのシャロン右派政権は、ブッシュのパレスチナ政策に反発して批判してきた。従ってイスラエルがこの時期にハマスのヤシン師とその後継者ランティシ師を殺害という強固策に出たのも、「テロの戦い」を呼号するブッシュ政権がイスラム過激派ハマスに同情的な対応を取れないことを見越して、あまりイスラエル寄りではない共和党をこの際に「パレスチナ側から見た敵」に仕立てて自国側に引きずり込んでしまおうという戦略である。ブッシュがイスラエルのこの暴挙(ヤシン師殺害)について消極的な発言しかできずに内心困っていると、案の定ランティシ師が「ブッシュは神(アラー)の敵」と気勢を上げた。実に巧妙なイスラエルの国際戦略である。ちなみにユダヤ人は全米人口の二%ほどなのだが、全米の金融・マスコミの大半を支配しているため政治的な力が強く、それに対して共和党の支持率基盤の一つである純粋愛国者組織「ジョン・バーチ教会」は反共と同時に反シオニズムも掲げており、「ユダヤ人は国際金融経済で世界を支配しようとしている」と主張している。共和党に対して親イスラエル政策を取るように要請しているのはユダヤ人ではなく、むしろ「聖書にあるようにエルサレムはユダヤ人が支配するべき」と考えるキリスト教福音派勢力なのである。


今日はここまで^^
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※出来れば、次の節の“米国二大政党の異なる対日関係史”まで紹介したいと考えていますが、とにかく文字数が多い(*_*)