オーストリアスキー教程を読んでみた | サラリーマンスキーヤーの日常

サラリーマンスキーヤーの日常

競技スキーをしたり、バイクに乗ったり、トレッキングをしたり、走ったりしてます。その他、全国のうまいものを食べるのも大好きです。2016シーズン後半にACL損傷→再建術→2018シーズンからは競技スキーにも復帰しました。そんな日常をつれづれなるままに

さて、シーズンインも間近というかスキー場によっては営業をすでに開始しているわけですが…

そんな中、最近ツイッターの僕のTLでは、SAJの新しい教程の話題がでることが多いんですよね

基本的に、僕個人としてはここ数年のSAJの教程については、トンデモ科学・理論の領域のもので、タイムを縮めることを目的とした競技スキーをするうえで参考にすべきものはほとんどないと考えています

一方で、ヨーロッパあたりのスキーメソッドについては、ベーシックな経験則に基づいたものになっているという先入観もあり、(スキー教程については)日本<ヨーロッパという図式があったんですが…

ただ、ふと反省してみると

SAJのスキー教程については、(教程の内容そのものをじっくり読んだことはありませんが)雑誌等でもその内容が紹介されることもあり、なんとなく知ってはいるんですが、ヨーロッパの教程についてその内容を知らないなと…

知りもしないのに知ったかぶりは良くない!ということで、勉強してみようかとw

検索してみると比較的新しい教程で、現時点で邦訳で手に入るのはどうも2007年に実業之日本社から発行されていた「最新 オーストリアスキー教程 日本語版」のみのようですが、基本的に在庫なし再版未定ということのようで、アマゾンで中古を見つけたので買ってみました

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あくまでざっとネットで調べた範囲での話ですので、オーストリアあるいは他の国で新しい教程が出ているのかもしれませんが、まあいずれにしても邦訳でなければ読めませんしw とりあえず、これで勉強してみました

で、だいたいターンの一連の運動に関する内容については整理できてきたので、メモ代わりに記事にしてみます。
基本的には、僕の技術レベルの中で参考になりそうな範囲でまとめてみました
カービング技術に絞って、箇条書きが中心ですが、それでもだいぶ長文です

お暇な方、興味のある方は読んでいただければ幸いです。

●●ポジション●●

◆基本となるのは、「アルペン滑走姿勢」である

◎アルペン滑走姿勢のポイント

・あらゆる方向へいつでも動けるように、スキー滑走に重要な関節(足首・ヒザ・股関節)をある程度曲げた中間姿勢
・足首、ヒザ、股関節と肩関節の仮想軸は互いにほぼ平行
・腰とヒザはターン内側へ傾ける、上体は斜度に合わせて前方横へ曲げる
・外スキーにより多く荷重する(特に舵取りでは大きく外スキーに荷重する)
・両腕はひじ関節を軽く曲げ、体の前で横に広げる


このアルペン滑走姿勢は、技術レベルを問わず、ターンの舵取りにおいて共通して現れる

◎前後のポジショニングの基本

・前傾と後傾
前傾と後傾とは、つま先(前傾)、もしくはカカト(後傾)により多く荷重するもの
・中間姿勢で、足裏全体に荷重してスキー全体にわたって圧力が配分されることで最適な滑りが可能となる。


前後の荷重における基本姿勢は、足裏全体に荷重することが基本

◎斜度への対応

・斜滑降の滑りでは、両スキー間の高低差を、山側の腰と山スキーを軽く前方に出すことによって調整する。これを"斜面調整"と呼ぶ。
・腰と脚部は山側へと傾け、角付けする。上体は前方谷側へ曲げる。


両スキー間の高低差への対応と斜度に対する上体の対応の結果として、
適度に山側の腰とスキーが前にでる
脚部を山側に傾け角付けされる
上体は前方谷側へ曲げられる

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アルペン滑走姿勢のイメージ

●●カービングにおける基本操作●●

ここでは、技術的レベルの比較的高いカービング(大回り)~教程が最終的な目標とする技術であるレースカービングに絞る。
ただし、レースカービングといっても、レースに絞った特別な技術ではなく、一連の発展段階の最終的な目標としている技術レベルの呼び方にすぎないので注意

◆ターンにおける基本的な運動の流れ

オーストリアスキー教程においては、1ターンにおける局面分割は「準備局面(準備)」「主要局面(始動、角付けの切り換え)」「終末局面(舵取り、アルペン滑走姿勢)」の3局面と考える

◎準備局面
パラレルによるフォールライン方向への方向付けは、足関節とヒザ関節の伸ばしによる次のターン方向への前方立ち上り運動によって行う。この動きの終りでは、スキーに対して短い抜重となる

◎主要局面
準備局面後における中心的動作は、ターンの始動と、角付けの切り換えを伴った回し始めである。
 
・通常のカービング大回りのターンの始動~角付けの切り換え

-これから行うターンの外脚による立ち上りでエッジを外し、フォールライン方向へのスキーのドリフト(トップのターン内側へのドリフト)によって、ターンを始動する。その際、アルペン滑走姿勢は(両足に均等に荷重された)ニュートラルポジションとなる。
-ターンの始動の後、角付けを切り換える。
-角付けの切り換えと同時にストックを突く。
-ストックを突くのは、バランス保持とスキーの回し始めを助けるためである。
-角付けの切り換え後、両スキーの舵取りが行われ、身体重心は、新しいターンの内側へと移動する。これによりターン姿勢が作られる。

・レースカービングのターンの始動+ターンの角付けの切り換え
-強い角付けから、前方-内側への傾けにより角付けを切り換え、サイドカーブを利用してターンを始動する。
-始動と切り換えが同時に行われるため、ストックも始動のタイミングで突くことになる。通常のカービング大回りに比べて、早いタイミングから両スキーによる舵取りが行われため、ターン前半からアルペン滑走姿勢がみられる。

ここでの記述を読む限り、始動と回し始めは異なる運動段階として理解される。ただし、レースカービングでは、エッジの切り換えによりターンが始動されるため、始動と回し始めは同時に行われるということのように思われる。

◎終末局面

フォールラインを過ぎた後の舵取りが終末局面となる。
フォールラインを過ぎてからの終末局面では、ターン姿勢・アルペン滑走姿勢、角付けによって外力に対抗し、意図するターン弧を描く

と、基本的なポジションと切り換えを中心としたターン運動の要点を見てみると、レースカービングの実現を目指すための、スキー操作における重要なポイントは以下の通り

・基本となる姿勢は、中間姿勢である
・外スキーへの荷重への荷重が基本である
・角付けにおいては、斜度に対応するために山足と腰は少し前に出て、上体は前方谷側へ向けられる(適度な外向傾)
・切り換えに先立って、前方-(次のターンの)内側へ立ち上ることで抜重する
・レースカービングでは、エッジの切り換えによりターンを始動する
・レースカービングにおいては早い段階から外スキーへの荷重が行われる
・切り換えのタイミングでストックを突く


このあたり、要素として抜き出すと、これまで僕がスクールで散々指摘されてきた内容と重複します

僕が指導してもらっているスクールはイタリア系なんですが、オーストリアスキー教程の中でも各国の教程は相違点が少なくなってきているといいますので、近い内容であるのも当然かもしれません

ただ、切り換えについて、僕は「ターン後半角付けを強めながら脚を曲げて圧を強めて、そのまま腰を斜面下に移動、そこから脚を伸ばして圧を抜くことで板の走りを引き出す」という風に指導されてますので、少し違うなぁという感じも受けます。

その差異を解消できるかもしれないポイントかなと思っていますが、オーストリアスキー教程の中で興味深い点がありました。

今までは立ち上り抜重というと、立ちあがっている過程全体がスキーに対して圧を抜いているイメージだったんですが、立ち上り運動と抜重について、教程の中では以下のような図で説明がされています

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上の図の赤の矢印は「通常の力」、つまり身体の重さによる荷重
緑の矢印は「質量慣性」、つまり動きにより生じる慣性力
 
立ち上り抜重の場合、立ちあがっている最中は、重心を上に引き上げていくことから、慣性力は下向きに働き、通常の滑走時よりも荷重が強まります。
立ち上りが終了すると、それまで上方向に運動していた慣性により、慣性力は上向きにごく短時間働きます

つまり、立ち上り動作そのものは荷重を強める運動となり、立ち上りが終了した瞬間、連続した運動として考えると立ち上り→立ち上り終了→沈み込みの折り返し点で抜重されることになる、と…

このあたりは感覚的には納得できる部分もあるわけです
立ちあがっている最中は、(しっかりセンターポジションが維持できている状態では)足元を踏みつけるような運動イメージですので、確かに荷重は増すような気がします

で、立ち上りとは逆の沈み込みによる抜重だとどうなるか…

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沈み込み抜重の場合、沈み込んでいる最中は、静止状態にある重心を下げていくため、慣性力は上向きに働き、抜重となります
沈み込みが終了すると、それまで下向きに運動していた慣性により、慣性力は下向きに働くことから荷重が強まります

今までは、立ち上りにしろ沈み込みにしろ、その運動を行っている間は継続的に抜重されているようなイメージがありました

でも、それぞれの運動と荷重要素を考えると、立ち上り抜重では折り返し点がピンポイントで抜重となり、沈み込みでは沈み込んでいく動作の間が抜重となり折り返し点では荷重となる、という教程の理屈は納得できる部分があります

だとすると、切り換え時における運動と内的な感覚を少し見直す必要があるかな、という感じもします

現在コーチに指導をされている内容と、オーストリアスキー教程における切り換え・抜重のタイミングのズレもそのあたりが影響しているような感じもするんですよねぇ…

とりあえず、こういった内容も意識しながら、シーズンインまで、そしてシーズンイン後、色々試していこうと思います