213-参-決算委員会- 1号 令和6年4月1日

○山本香苗君 
 次に、厚生労働大臣にお伺いしたいと思いますが、小林製薬が製造したベニコウジ成分が入ったサプリメントを摂取した方に健康被害が相次いでいる問題、これは国内外でも大きな問題となってきております。
 被害拡大を防止するとともに、原因特定、全容解明、急がなくてはなりません。今、事業者任せにせずに政府がもう前に出て今対応を取っていただいておりますけれども、今後どういった形の対応を取られるのか、お伺いいたします。
 

○国務大臣(武見敬三君) 三月二十九日に開催されました紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合における官房長官の御発言を踏まえまして、厚生労働省としては、当面、既に回収命令を出している三製品以外で小林製薬のベニコウジを原料とする製品について自主点検の結果報告を受けて必要な措置を講ずること、そして国立医薬品食品衛生研究所と連携をし、引き続き原因物質の特定、分析を進め、その結果の速やかな公表及び原因究明を図ること、そして原因物質等の特定後に適切なリスクコミュニケーションを講ずること等に取り組んでまいります。


 引き続き、今般の健康被害の原因となった物質と当該物質が製品に含有されるに至った原因の特定を含めまして、厚生労働省としては食の安全の確保に全力を尽くしてまいります。その上で、再発防止のためにいかなる施策が必要か検討していきたいと思います。
 

○山本香苗君 制度面での見直し等も含んで検討していただけると思っておりますが、そもそも、機能性表示食品が医薬品でなくて食品だということも御存じない方々もたくさんいらっしゃいます。しっかりそういった国民の不安に寄り添うような対応を急いでいただきたいと思います。


 医薬品の開発、製造といったことも国民の命と健康に直結をするわけでありますが、そこで、我が国の創薬力の現状認識について伺います。
 

○政府参考人(中石斉孝君) お答えします。
 創薬力の問題は、国民の健康、医療に直結する重要な課題だと認識しております。しかしながら、我が国の現状を見ると、世界において日本起源の医薬品の市場シェアが減少し、また、希少シツビョウ等のドラッグラグ、ドラッグロスの問題も指摘されております。
 

 また、昨今の創薬を取り巻く環境は、新規モダリティーなど革新的な技術の進歩やビッグデータ、AIを活用した創薬の開始など、急速に変化しております。
 そこで、そのような環境変化に対応できるよう、創薬力を強化する必要があるというふうに認識しております。
 

○山本香苗君 今お話、御答弁ありましたとおり、我が国のこの今創薬力の現状というのを皆さんとしっかり共有しなきゃいけないなと思っているわけなんですが、我が国の個々の研究機関、企業は世界トップクラスの研究開発力はあるんです。しかし、いざというときに団結できず、総合力が、総合力で負けると、欧米と比べて日本の製薬企業は規模、資本力が小さいと、ベンチャーもまだまだ少ないと、研究費が少なくてリスクが取れないと。コロナにおいて、こうした日本の創薬力の課題というのは大きく浮き彫りになったと思います。


 現在、様々なAI開発が進められておりますけれども、ここでもそれぞれの研究者や企業が個々のアプリを使うだけで、創薬プロセスの全体の高速化とか迅速化とかというものにはつながっておりません。幾ら優れたAI技術があったとしても、一つの要素技術だけでは薬はできません。
 

 そのため、医療、創薬分野におけるデータサイエンス研究の第一人者であります京都大学の奥野先生が代表となりまして、理化学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所、ライフサイエンス分野の企業やIT企業等が参画した一般社団法人、ライフインテリジェンスコンソーシアム、LINCが設立をされまして、どういう疾患の薬を開発すればいいのかというターゲット探索から、患者さんに届けるまでの創薬プロセス全体を多数のAIで制御し統合する、実用的かつ包括的な創薬DXプラットフォームの構築が今進められております。
 

 このプラットフォームには、これまで国が支援して開発してきた優れた我が国の計算技術を実装、連結、制御し統合することによりまして、開発費、開発期間の劇的削減に成功しておりますが、こうした取組の評価とともに、その必要性につきまして、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、それぞれお伺いいたします。
 

○国務大臣(盛山正仁君) まず、私どもの方からお答えをいたします。
 

 文部科学省では、御指摘の創薬DXプラットフォームの取組に対して、スーパーコンピューター「富岳」の計算資源を配分し、研究開発を支援しております。
 具体的には、薬材、お薬の材料の候補となる化合物の大規模なデータベースやAIを活用して最適な化合物を推定する手法の構築に向けた取組を進め、本年七月以降のテスト運用を目指していると伺っております。
 AIやビッグデータなどの最先端のデジタル技術の利活用により創薬研究を加速することは重要であると認識しております。本取組の進展にも期待しているところです。
 

○国務大臣(武見敬三君) 創薬に当たり、AIを活用し、そのシーズの発見のためターゲットとなる疾患の原因たんぱく質の探索等を効率的、効果的に行うことは重要な取組と認識しております。
 委員御指摘のこのLINCの取組に対しまして、令和二年に日本オープンイノベーション大賞の厚生労働大臣賞を受賞していただいております。
 

 創薬AI技術の発展は、創薬の加速化や我が国の創薬力の強化のためにも大変重要でございます。厚生労働省としても、現在、AMEDを通じて創薬AIの開発に関わる研究費を支援しております。こうした技術の実用化に向けて、引き続き関係各省と連携をして支援をしてまいりたいと思います。
 

○国務大臣(齋藤健君) 新薬創出のため、薬材の候補となる化合物の大規模なデータベースですとかAIを活用した探索手法、これらを構築することは非常に重要であると認識しています。
 経済産業省では、iPS細胞から作り出した臓器の細胞で動物実験を不要とする生体模倣システムの開発や、RNAの構造解析装置の技術開発を行っているところであります。こうした機器から得られたデータ、これを統合的に分析することで効率的な新薬創出が推進されるものと期待をしておりまして、こうした取組をしっかり努力していきたいと思っています。
 

○山本香苗君 今、三大臣から御答弁いただきました。三大臣からも必要性を認識していただいたと思っておりますけれども、この創薬DXプラットフォームは今後更に拡張して本格運用していくことが求められておりますけれども、こうしたプラットフォームをどこが持ってどう運用していくのかというのが今大きな課題となっております。
 このプラットフォーム構築というのは、国民の命と健康を守り、創薬産業の持続的発展に欠かせないものであります。本来、国が責任を持って推進すべきでありまして、是非とも、総理、国家プロジェクトとしてしっかりと推進をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 国民が医薬品へのアクセスを確保する、そして安心して使用できる環境とする、このためにこの我が国の創薬力向上することが不可欠ですが、その中で、昨今の創薬を取り巻く環境については、委員の方からも御指摘がありましたが、医薬品の開発の期間や費用が増大している、また確度の高い標的を発見することが困難になっている、こういった課題があると考えており、御指摘の創薬DXプラットフォームのようなAIを、AIを始めとするデジタル技術は、こうした課題を解決し、我が国の創薬力向上につながる可能性を有している、このように考えております。
 ただ、その際に、政府としてニーズの開発、開発から医薬品が国民の手に入るまで切れ目のない創薬エコシステムを構築していかなければならない、その際に、御指摘のように、各省庁の取組の連携、そして総合調整、これが不可欠であると認識をいたします。
 そのために、内閣官房の下に、創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議、これを昨年末立ち上げました。村井官房副長官を座長として議論を行っているところであり、この会議では、研究から開発、製品製造が日本で行われるようにするためのアカデミアやスタートアップ等への支援の在り方、ドラッグラグ、ドラッグロス問題への対応などの課題に対して、創薬分野におけるAIなどのデジタル技術の活用の可能性を含め、様々な議論、これを進めているところであります。
 この、こうした議論の成果も踏まえつつ、デジタル技術の活用を始め、我が国の創薬力向上のための取組が各省庁の縦割りではなく政府一体となって推進される、このために政府として努めてまいりたいと考えています。
 

○山本香苗君 是非よろしくお願いしたいと思います。このプラットフォームは、実は今やっているのは理化学研究所の理事長裁量経費から二億円いただいてつくったそうなんですが、まだしっかりとした位置付けができていないそうなんです。今総理がおっしゃっていた創薬力構想会議の中でも、しっかりとこうした、つなぐハブとなるようなものでございますので、是非、五月中旬には報告書を取りまとめると伺っておりますので、そうした中にも反映していただければと思っております。