F.A.Lでイベントをする理由 | 山本義幸 シルバーアクセ デザイナーブログ

山本義幸 シルバーアクセ デザイナーブログ

シルバーアクセサリーのデザイナー&彫金師。F.A.Lにまつわるあれこれを書き残しておきます。



今週末の2/26(日)からF.A.L Venom Gothicer ワンメイクエキシビションと題したイベントを東京店と名古屋店、岡崎店の直営店のみで予定していますが、ツアーイベントの前哨戦みたいなスケジュールでして、

これも含めてF.A.Lでイベントをする理由を改めて思い返してみました。



シルバーアクセブランドとしてF.A.Lという名前で看板を出してから、ツアーイベントと題してお店を回らせていただくようになって昨年で10年が過ぎました。

ブランドとしては名前を使い出したころからして17年目くらいですかね。

昨年はRound.10といったタイトルでやらせてもらい、これまでやれてきたことや支えられてきたことの10年の感謝を思い返すようなツアーイベントでした。

今年は11年目の企画として、いま各ショップさんとの相談をし始めたタイミングですが、改めてF.A.Lのデザイナーとして新たな節目の1年とするためにいまの気持ちを知ってほしいなとブログを書いています。




メーカーがショップと協力して行う"イベント"は、いわゆる”催事”とよばれる展示販売会や特売会といった販売企画をイメージをされるでしょうが、

もちろんF.A.Lでもショップさん側とはそういった販売主体の企画事が話し合われています。

開催店舗では、未発表や新作のレギュラーアイテムやワンメイクアイテムといった商品をどれだけ用意できるのか?デザイナーが在店することでお客様にどんなサービスが行えるのか?はたまたその日にお買い物をされた方にどんな特典があるのか?などなど、そんな話し合いはお店に足を運んでくださるお客様が楽しめるイベントをメーカーとして実現するためにも必要で大切なことだと思っています。



ただ、だからといってお客様にイベントをやるから買いに来てくださいなと売り買いだけを行う場かと聞かれればそうではなく、イベントに在店させてもらうデザイナーである僕自身が来店してくださるひとりひとりの方に買い物ではない別の何かを持ち帰ってもらいたい、そんな気持ちしだいでイベントが楽しくなるかならないかを変えてしまう大切なことだとも感じてきました。




過去、F.A.Lで10年やってきたツアーイベントのタイトルは

「The work to calling」

といったF.A.Lとしての冠、デザイナーの自分としてはコンセプトとしてやってきました。

それぞれの立場からすれば、

来店下さったお客様に選んでもらったアクセは選ばれた後にその人を語るものになると感じたこと。

自分としてはイベントを通して、F.A.Lだからこそやれることやできあがったモノをその場での作業や創作を見てもらうことで伝えていきたいといったコンセプトにしていること。

お店の場を提供くださっている販売店やスタッフさんにとっては、お客様にF.A.Lの商品を薦めてもらうということは僕のモノづくりを信頼して、まさにwork to calling してくれていること。

今になってみれば色んな立場から考えてもイベントを始めたときと気持ちの芯はブレていないと感じられます。

もちろん始めた当初の考えなんて、昔にバンドをやっていた経験から、バンドが各地のライブハウスをドサ回りしていき、ライブで大切なことを伝えながらみんなで盛り上がるような活動を今度はシルバーアクセでもやりたいって簡単な動機でしたけど、やっていく中で関わってくださるスタッフさんや応援してくれるお客様の声を聞きながら変化してきたことでもありました。

やってきた裏方側の話では、そこには色んな同業者の意見があったり時代が変わりショップさんの方針が変わったりする中で、純粋なコンセプトも感じづらくなったこともあれば忘れそうになるときもありました。

だからこそ今年の11年目となるツアーをするなら過去の10年に節目を引き、新たに1年目の気持ちとしてスタートを切るべきだとスタッフと相談をしていたりもするのですが、

正直なところ僕が作っているシルバーアクセが身につける人にとってどうあるべきかは自分自身もよくわかっていません。

僕がやっているモノづくりといえば、

F.A.Lとして自分の内にある世界観をアクセのデザインとして表現してレギュラーアイテムとしてリリースしていること、

銀職人として独自に考え出した技術や技法でアクセサリーとしての独特な形を作り出すこと、

ブランドのディレクターとして一定方向のファッション性を考えて身に付ける人のイメージを作り出すことや、

シルバーアクセクリエイターとしては、自分の手でデザインから製作まで一手に手掛けられる能力を活かすことで、アクセに関心の高い人に向けた一点物に限り制作したワンオフアイテムと呼んでいるオーダーメイド品の製作や、レギュラーアイテムをベースにカスタムをほどこすことでワンメイクカスタムアイテムと呼んでいる一点物を作り出したりなど、

自分がやりたいこととやれることの組み合わせの中でモノづくりをしているといったことだけです。

もちろんアクセに限らず、オブジェやオーナメントみたいな作品をつくり作家として海外にいき個展をしたいなんて目標もあったり、

ときにはF.A.Lとしてのモノづくりではなく、友人のためだけに作家個人の気持ちだけで制作をすることもありますが、

F.A.Lでのモノづくりだけを見れば、今やっていることはどれも普段では自分の内にあるものだけを表現するような自分の内面としか向き合っていないモノづくりとしか感じられないときもあります。




思い返してみればイベントで自分のモノづくりの評価をその場で直接聞ける機会はすごく大切な時間で、そんな貴重な時間に気がつかずにやってきた時代もありましたが、そんなイベントを通して自分の創作スタイルが良い方向に変化したことに嬉しい気持ちにもなっていたりもします。




シルバーアクセなんて興味のない人からすれば機械でガッチャンガッチャン作ってるようにしか感じられないモノかも知れませんし、

僕が作っているメッセージ性の強いデザインやインパクトの強いアクセが皆さんにとっての最高なシルバーアクセのあり方だとも思っていません。



もしかしたら、メーカーとして専門分野に長けたスタッフでチームになり、マーケットやトレンドを思考しながら商品をプロダクトする、そんな組織がつくるブランドを望んでいるお客様のが多いのかも知れませんしね。そういったやり方も正しいことだとも思います。



僕が右も左もわからずに趣味で作り始めたシルバーアクセにF.A.Lと名前をつけて売るようになった流れで作られてきたアクセが本当の意味で皆さんのために喜ばしいことなのかはわかりませんが、ただイベントを続けてきたことでわかったことは喜んでもらってる顔がたくさん見てこれたことや、作ったものにカッコイイとかカワイイとか言ってもらえた声が聞けたことがこれからも続けていかなきゃと強く思う心持ちになっているということだけです。


それでも自信をもっていえることは、

結局は自分で作品と呼べるほどにこだわって作っている商品が誰かの気持ちを確実に動かせるって信じているからこそモノづくりを続けているわけで、また動かしたいって思うからセンスや技術の向上にこだわり続けているということです。



今年はイベントをやるにあたって特に心に留めていることは、できるかぎりモノづくりと販売に線を引かないこと。

今まで通り自分の作品を目の前にしてもらう中で作業している僕の動きや作業音でモノづくりのリアルを見てもらいたいですし、その場で彫刻をして今日という1日の楽しかった気持ちを形として残してあげたいとかモノづくりについてはいままでやってきたことを続けていこうと思っていますが、

そもそも話すことが苦手だったり自分が作ったものを自分で勧めることに抵抗があったりしましたが、今年からは自分自身の言葉で作品の思い入れを伝えたり、その中で自分だけの特別なアクセを望む人がいるなら親身に相談にのりたいと思う気持ちで販売となるイベントに挑まなきゃなと。

じゃなきゃ、来てくださるお客様に失礼だなと。

正直なところ、やっていることが”イベント”なんて呼び名じゃなくてもよくて、個展みたいな呼び名のがやりたいことに対してはしっくりくるような気もしますし、F.A.Lを好きといってくれるお客様を集めてワイワイと楽しいパーティーだけをしたいわけでもなくて。
それはそれで、別の機会にやりたいなとは思っています。


ただ、僕が想うF.A.Lはイコール山本義幸ではないですし、できれば販売してくれているスタッフさんも購入くださるお客様も含めて皆さんで育てられているF.A.Lであってほしいので、最後は求めてくれるお客様のためにやっていることですし、強いては求めてくれることに挑んでいかなきゃなという気持ちでイベントを続けていくと考えるのが正しいことだと思っています。

きっとこの考え方は会社という組織でやっている他のシルバーアクセブランドさんにも言えることだとも思います。


イベントをやるにあたっては協力してくださるショップスタッフさんにもイベントのコンセプトは理解してほしいですし、お客様に薦める商品にはご自身の情熱やプライドを乗せてお話ししていだだきたいとも思います。どんな想いで作られ、どんな魅力があるか、目の前にいるお客様にとってどの作品をお薦めするのがベストなのかをプロの販売員としての目利きで見抜いてほしいなと思います。

偉そうなことを言わせてもらうなら、僕はその目利きに見合う作品を創り出すだけの自信は持っています。



今年のイベントのタイトルを前回までと同様にするのか、また新たな10年のためのコンセプトとしてリネームするのかはまだ決めていませんが、そこについてはもう少し考えてみたいなといった感じです。


まだツアーイベントのスタートには少し早いですが、まずは良い節目ということで今年の夏は過去最高にみんなに喜んでもらえるツアーイベントにしてやろうという意気込みだけお伝えしておきます。