第9回特別活動希望の会研究会報告 | やまかん日記

第9回特別活動希望の会研究会報告

第9回特別活動希望の会研究会の報告がアップされました。詳細は書きアドレスへ
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日本特別活動学会九州・沖縄支部第6回研究会,第9回特別活動「希望の会」研究会 報告
 10月4日(土)佐賀県佐賀市立春日北小学校において、日本特別活動学会九州・沖縄支部第6回研究会(遠藤忠会長・中川昭則支部長),第9回特別活動「希望の会」研究会(今村信哉世話人代表)を森悦郎実行委員長のもと開催しました。

 当日は、約100人の参加者を迎え、6本の実践事例発表に基づく3つの分科会と杉田調査官によるご講演を通して,研究主題「新学習指導要領における特別活動の実践課題」を深めました。 

 大会総括につきましては,下記のリンクをクリックしてPDFファイルをダウンロードしてください。

第9回研究会「大会総括

十月四日(土)佐賀県佐賀市立春日北小学校において、日本特別活動学会九
州・沖縄支部第六回研究会(遠藤忠会長・中川昭則支部長)、第九回特別活動「希
望の会」研究会(今村信哉世話人代表)を森悦郎実行委員長のもと開催した。
当日は、約百名の参加者を迎え、六本の実践事例発表に基づく三つの分科会と
杉田調査官によるご講演を通して、研究主題「新学習指導要領における特別活
動の実践課題」を深めた。
◆ 第一分科会「学級づくりと学級活動の実践的課題」
司会…黒木義成(沖縄) 会場責任者…廣瀧修一(佐賀)
○ 発表① 福岡県宗像市立赤間西小学校木村篤典
「仲良く助け合う子どもを育てる第一学年の学級活動」
入門期の話合い活動についての提案だった。計画〜実践〜評価と活動過程
を捉え、そこに、次の三つの視点で工夫を取り入れてあった。
これらの視点を明確にして「二くみのうたをつくろう」という議題が、、学
級の文化として生まれ、育っていく様子が伝わる内容だった。
○ 発表② 佐賀県佐賀市立東与賀小学校今村昇治
「よりよい学級生活を目指す係活動のあり方」
PDSAサイクルを係活動の基本過程として子どもと教師が共有し、係活
動を活性化した実践報告だった。理論の明快さと実践の密度の濃さは、説得
力があった。
常時教室環境としてサイクルの図を掲示して、それぞれの係がどういった
計画をもち、どういう段階かが、常に学級全員に分かるようになっている。
係組織内の者にとっても、周囲の者にとっても刺激的で、支援の持続性とい
う意味でも大変興味をそそられる内容であった。
○ 指導助言國學院大學新富康央先生
参観者によるワークショップでは二つの実践から活発な論議がなされた。
これを受け、新富先生が、新学習指導要領の重点「自己の生き方・考え方」
にふれられ、特別活動における不易と流行を分かりやすくご示唆いただいた。
「特活があるけん学校たい!」の新富先生ならではの話が続き、「『「太郎が太
郎になる』挑戦」の話では、特別活動の視点から見ると、世の中の間違った
個性観が浮き彫りになる。「なぜ今特別活動なのか」再確認させられると共に、
強い使命感も与えていただいた。
◆ 第二分科会「人権教育と特別活動の実践的課題」
司会…吉田卓(福岡) 会場責任者…中村尚志(佐賀)
○ 発表① 福岡県福岡市立原小学校土田涼子
「自分の価値を高める特別活動の創造」
〜他者とかかわりながら自分のよさや可能性に気付き始める活動づくり〜
発達段階に応じた育成したい自己価値力(よさや可能性)の内容をもとに、
事前・事中・事後の各段階の指導のねらいと手立てを明確にした実践だった。
子どもが自分の価値の高まりに気付けるように、意欲・態度、役割取得能力、
共感性などの六つの観点で記入していく「個人振り返りカード」の工夫がな
されていた。
○ 発表② 佐賀県教育センター江頭幸子
「人とかかわるよさを実感できる学級活動をめざして」
意図的・計画的に「よりよい人間関係を構築するための人権教育の視点(七
つ)」を学級活動で取り扱い、日常生活に人権意識が広がった実践が紹介され
た。成果として、子どもがだれとでもかかわり、友達関係の固定化を防ぐ手
立てとなったことが挙げられた。
○ 指導助言佐賀大学松下一世先生
人権教育の目標と特別活動の目標には多くの重なりがある。この共通点は、
文科省の「人権教育の指導方法等の在り方についてのとりまとめ」に表れて
いる。この背景については、大きく二つの流れがある。一つは、国連人権教
育十年である。もう一つの流れは、同和教育五十年の歴史である。これまで
の同和教育実践の上に、国際的な人権教育を取り入れて再構築していくため
に、「とりまとめ」がある。
同和教育実践は、五十年前、学校に行けなかった被差別部落の子どもたち
の教育権を保障するために始まった。それは、「教師の望む子ども像」から阻
害された子どもを学校の中心に位置付ける、これまでの学校観、子ども観を
転換するものだった。それは、厳しい生活現実にある子どもの思いを大切に
した「仲間づくり」の取り組みとして広がった。こうした取り組みは、もち
・「書く活動」…自分の意見をもち、積極的に意見を出し合う態度を育てる
・「試す活動」…出された意見を確かめ、よりよい集団決定へと導く
・「認め合う活動」…自他のよさに気付き、自分とちがう立場を受け入れられるよう
にする
ろん学級活動を基盤とした特別活動そのものである。
新指導要領では、「人間関係」「生きる力」が強調され、これまで以上に人
権教育との共通点は多い。どちらも、一人一人の子どもの人権を大切にし、
社会の中の他者との関係を通して成長を促す教育と言える。
◆ 第三分科会「道徳教育と特別活動の実践的課題」
司会…井原竹始(佐賀) 会場責任者…佐々木英利(佐賀)
○ 発表① 福岡県古賀市立古賀東小学校藤井龍一
「よりよい学級集団に主体的に働きかける子どもを育てる学級活動」
学級集団に主体的に働きかける三つの特性、「有用感」「信頼感」「期待感」
を身に付けさせるために、学級活動の三つの形態である係活動・集会活動・
話合い活動を関連させた実践報告がなされた。具体的実践として、「実習生を
送る会」と「舞里クリーン作戦」の二つが紹介された。「実習生を送る会」で
は、レク係が企画を全体に広げ、主体的にイベントに関わったことが紹介さ
れた。また「舞里クリーン作戦」では、新聞係の企画・広報活動と学級によ
るクリーン作戦を関連させて取り組まれた。
○ 発表② 佐賀県佐賀市立本庄小学校中村佳代
「積極的に集団に働きかけ、よりよい生活の実現に向けて、豊かな人間関
係を築く子どもが育つ学級活動のあり方を探る」
〜意見交流を取り入れた五年生話合い活動の取り組み〜
話合い活動で、だれもが集団決定に納得できる手立てとして、「とくとくタ
イム」を設定した実践報告がなされた。「とくとくタイム」は、意見が対立し
たり、発言が滞ったりした場面で席を離れさせ、流動的な状態で互いの意見
を交流させることを目的に取り入れた活動である。実践報告の中では、「縦割
り班の1年生と学級探検をしよう」という題材を話された。意見交流の観点
を二つに絞り、A案とB案について話し合わせ、その後、集団決定の場で交
流して互いの立場を尊重した話合いができたことが報告された。
○ 指導助言文部科学省杉田洋調査官
道徳教育をしやすい集団をつくることが大切で、そのために特別活動があ
る。さらに、その特別活動をよりよく進めていくのが教師の力量である。指
導要領に明記された「自己の生き方」は、道徳、特別活動、総合的な学習の
時間、すべてに入っている。
具体的に道徳と特別活動の関連を考えたとき、特別活動での経験を道徳で
使うという捉え方がいい。逆に道徳から特
別活動という流れは、行事をやるための道
徳になりかねない。道徳で特別活動を生か
してほしい。学校の教育活動で道徳的でな
いものはない。ただ、放っておくと道徳的
でない場合がある。話合い活動の意義につ
いては、例えば、ただドッジボールをした
ことと、話合いをしてドッジボールをした
ことが同じなら、意味がない。必ず違いが
ある。だからこそ、子どもたちにとってそ
の活動が道徳的になる。
道徳と特別活動は、ゆるやかなかかわり、
関係を保ってほしい。なぜ学級集団をつく
っているのか。集団の中で一年間過ごす中
で育つ道徳性があるからである。
◆ 講演「新学指導要領における特別活動の実践的課題」
文部科学省杉田洋調査官
・新学習指導要領のキーワードを紹介され、丁寧にその意味するものや目
指すところをご教示いただいた。「よりよい生活や人間関係」「自己の生き
方についての考え方」「自治的能力」「言葉と体験」「学級や学校の生活づく
り」「勤労観・職業観」「食育」「集団宿泊体験」「指導計画の作成と内容の
取り扱い」「人権を尊重する態度」など
・最新の脳科学を紹介された。脳の中の「海馬」でシナプスをつなげてい
く可塑性が、学習のメカニズムに通じるところがあることを話された。話
合い活動中の子どもの様子を例に出され、インプット後に子どもは考えて
いるのかという問題提起をされた。ワークシートにあらかじめ書かれたこ
とを読んでいるだけではないか。みんなで押し黙って途方に暮れている時
間も大事、柱は一つでいいからじっくり考えることが大事というお話には
考えさせられた。
今回の研究会は、前回に引き続き、学会と「希望の会」の共同開催となった。
実り多い研修となったことに感謝したい。