9-3 | アキヨシとカレン  ・・・少女漫画風恋愛小説・・・

9-3

 レイさんと品川は、仕事だから当たり前なのかもしれないけど、掲載された記事をきちんとチェックしていた。

「佐藤さんのことが、まるで血の通わない鬼だったみたいに書かれてるわよ」

 週刊誌を目の前に差し出し言ったレイさんの言葉に、心臓が一気に冷たくなった。佐藤さん、とは。亡くなった祖父のことだ。

「会いたいって何度懇願しても会わせてもらえなかったって」

「……アホくさ」

「読む?」

「いや、いい」

 そんなもん、絶対読みたかねえや。

 週刊誌を、汚いものでも触るような触れ方で押し戻した。

「なぜ? 読みなさいよ」

「いいって。ってか、読みなさいってなんだよ」

「どうして読まないの? 相手を訴えることも可能なのよ? あなたが読まないと話にならないわ。この前の白戸さやかの件だって」

「やだね」

「アキ」

「読んで、がっかりしたくないんだよ」

 こちらのセリフにレイさんが絶句した。

 がっかり?

 何に対して?

 自分でもよくわからないんだけどさ。いろんなことに。いろんな人に。落胆したくなかった。ましてや血の繋がった人間に。


 マンションに戻り、廊下の灯りを点けた途端、後ろポケットの携帯電話が震えた。平澤かも、と期待して素早く手に取り開く。

 表示された名前に軽く目を見張った。

「── はい」

 期待のあまり大きく打った心臓はまだ静まらない。そのまま電話に出たので、声が少し上ずっていた。

『あれ? なんか声、変だけど、元気?』

 こちらとはあべこべに、高本の爽やかな声が耳に届く。

「元気、かどうかはビミョーですけど、まあフツーです」