林檎の誓い | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜中に無性に林檎を食べたくなった。しかし、果物屋が営業しているような時間帯ではないので私は寝床の上で目を閉じたまま唾を飲み込んだ。少なくとも明朝まで待たなければ入手できそうになかったが、そのように考えただけで狂おしいような心境にならされた。

 腹が空いているわけではないし、喉も渇いていなかったが、それでも林檎が欲しくて堪らなくなっていた。これだけ強烈な欲望は十年以上も経験した記憶がなかった。まるで子供時代に戻ったかのようだと私は思った。あの頃は喉から手が出そうな程に欲しい玩具が世の中に一杯あったのだった。

 そして、私はそれらの玩具を飽きて捨てた場面を思い出し、一段と胸が締め付けられるように感じた。きっと林檎を入手しても期待していた程には美味しくないだろうという予感を覚えた。私は玩具で経験した幻滅を繰り返したくないと思った。むしろ林檎を入手できないまま何ヶ月でも何年でも身悶えしながら過ごしていたいと願った。

 それで、私はその夜に誓いを立てた。一生、林檎を口にしないでおこうと決めた。

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