殺される役 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 また映画の夢だ。この男優には見覚えがある。子役の頃から色々な映画に出演していた男だ。今ではすっかり中年だが、顔立ちに幼さが残っているせいで髭がまるで似合っていない。でも、本人は顎の辺りを撫でながら余裕綽々とした笑みを浮かべている。そういえば、彼の出演作を最近も鑑賞していたような気がする。あれはホラー映画だった。

 「お前はこの世で何が一番怖い?」この男優の台詞には聞き覚えがある。やはり、あのホラー映画が再現されているらしい。「俺は稲妻が怖い。雷鳴が聞こえてくるだけで足が震えて何も手には着かなくなる。物陰に隠れて震え続けるしかなくなる。みっともないだろう?自分でも馬鹿げていると思うよ。でも、恐怖心の克服は簡単じゃない。今、お前の足はがたがたと震えているな。それを止められるか?どうだ?俺が十数える内に止められるなら見逃してやろうじゃないか」

 足の震えは止められない。別に、こんな童顔の男を恐れているわけじゃない。この台詞を浴びせられた俳優はナイフで刺殺された。その結末は知っている。でも、一分後に殺害されるとして夢はどのように続いていくのだろう?目が醒めるのだろうか?死後の世界を見れるのだろうか?面白くもなかった映画の再現などに付き合わされて鬱陶しいが、そこにだけは興味がある。さて、どのような展開が待っているのだろうか?


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