夕食会に出席していたのだが、私は普段から無口なので会話にはほとんど参加せず、しかも、下戸で酒も飲まないので食事にばかり関心を向けていた。私以外の出席者達は酔っ払って賑やかに騒いでいたが、私は黙々と料理を食べていた。特に獣肉の焼き加減が絶妙で旨かった。周りの出席者達は酒を呑むばかりで料理にはあまり手を出さないので私は好きなだけ獣肉を胃袋に詰め込んでいた。
そこに出席者の一人が隣席から話し掛けてきた。「凄い食欲だね。消化が追い付くのかい?」
質問を受けたので私は仕方なく食事の動作を止めた。「不要なら消化されずに排出されるだろう」
その返答のどこかに可笑しさを感じたらしく、出席者の一人は軽い笑い声を出した。「判断を内蔵に任せているんだね」
馬鹿にされたような気がしたので腹が立ったが、酔っ払いの言動に対して真面目に応答しても仕方がないと考えたので私は黙り込んだ。ただ、しばらくは食事の勢いを落とした。空腹感の有無を確認しながら獣肉を味わっていたが、なかなか満腹にはならなかった。
目次(超短編小説)