夜の電車に乗っている。駅に停まったり、鉄橋を渡ったりしている。乗客は疎らで、おかげで気兼ねせずに座席に腰を落ち着けていられる。私は瞼を閉じたり、開けたり、といった行為を静かに繰り返している。退屈を感じているが、かといって気分が苛立ってくるわけでもない。
既に一日が終了したのだという実感を抱き、私は虚脱感を覚えている。意欲や期待などといった類いの感情はほとんど持ち合わせていない。窓の外を流れていく夜景にも興味はない。ひたすら休息を取りたいという欲求に縛られている。退屈な現状こそが好ましいと感じている。
電車は滑らかに走行している。私は車内の様子を窺っている必要を感じなくなってきている。だんだんと、瞼を下ろしている時間が長くなってきている。眠い。電車が深い暗がりに吸い込まれていく。
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