市民の憩いの場として長年愛されているＹ市立公園内の遊歩道沿いに、Ｘらが屋台を構え、客にアルコール飲料やカラオケを提供しているケースについて、Ｙ市は行政代執行法に基づき屋台を撤去することができるか否かについて検討する。

設問（１）Ｘらは、徹底抗戦の構えを見せ、屋台をバリケードで覆い、自ら居座る旨を言明している。Ｙ市は、代執行にあたり、Ｘらの身柄を強制的に排除して屋台の撤去・廃棄を行うことができるか。

設問（２）Ｘらは、「Ｙ市から２０年以上何もお咎めがなかったのだから、取得時効が認められる」と主張している。この主張の当否を検討する。

市立ふるさと公園は、Ｙ市が設置管理する都市公園である。その都市公園は、一般公衆の自由な利用に供することを目的とする市民の憩いの場である。都市公園内に設けられる公園施設や公園内を占有し利用する行為に関しては、都市公園法で定められている。

また、都市公園を管理する者以外の者が、公園施設やそれ以外の工作物その他の物件又は施設を設けて、都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。

まず、都市公園法第２条２項において、都市公園の設置者である地方公共団体又は国が当該都市公園に設けられる施設が掲げられている。それらの公園施設は、政令で定めた都市公園の効力を全うするための施設である。また、同法２条の３において、「都市公園の管理は、地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体が、国の設置に係る都市公園にあっては国土交通大臣が行う」と規定されている。

都市公園法第５条１項においては、「その都市公園を管理する者以外の者が、都市公園に公園施設を設け、又は公園施設を管理しようとするときは、条例で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない」旨が定められている。

その公園管理者以外の者が設けることができる公園施設とは、①当該公園管理者が自ら設け、又は管理することが不適当又は困難であると認められるもの、②当該公園管理者以外の者が設け、又は管理することが当該都市公園の機能の増進に資すると認められるものに限り許可される（同条２項）。公園施設の設置及び管理期間においては、１０年を超えることができない（同条３項）。

そして、都市公園法第６条１項において、「その都市公園を管理する者以外の者が、都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない」と規定されている。その許可を受けようとする者は、占用の目的、占用の期間、占用の場所、工作物その他の物件又は施設の構造その他条例で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出しなければならない（同条２項）。都市公園の占用の期間は、１０年をこえない範囲内において政令で定める期間をこえることができない（同条４項）。

法第６条第１項の許可の申請に係る工作物その他の物件又は施設においては、同法第７条１項１から７号に掲げるものに該当し、都市公園の占用が公衆のその利用に著しい支障を及ぼさず、かつ、必要やむを得ないと認められるものであって、政令で定める技術的基準に適合する場合に限りにおいて許可を得ることができる。

また、公園管理者の許可を受けなければならない行為においては、都市公園法第１２条１項１から３号に規定されている。①都市公園を利用して物品を販売し、又は頒布する行為、②競技会・集会・展示会その他これらに類する催しのために利用する行為、③都市公園の管理上支障を及ぼすおそれのある行為で、政令で定める行為である。

例えば、東京都中央区においては、東京都中央区立公園条例昭和３３年６月９日条例第１４号第４条において公園内行為を制限し、同条例第６条において公園内行為を禁止している。

区立公園条例第４条１項１から６号においては、予め区長の許可を受けない募金・露店・行商その他これに類する行為をすることや公園の風致を害し、または公園の全部もしくは一部を独占して使用することを制限している。また、同条例第６条１項１から9号において、公衆の利用に危害の恐れのある行為や公園の管理上支障があると認められる行為をすることを禁止している。

それらの行為の許可を受けようとする者は、申請書を中央区長に提出しなければならない（同条２項）。区長は、公衆の公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合に限り許可を与えることができる。

以上のような都市公園法や各地方公共団体の公園条例規定を踏まえると、屋台の経営者Ｘらが公園管理者であるＹ市の許可を受けることなく市立ふるさと公園内の遊歩道沿いに屋台を設け、営業する行為は違法であると解釈する。市立ふるさと公園は、広く一般公衆の利用に供されるものであり、原則として公園の占用や行為を禁止しているからである。

Ｘらの屋台は、都市公園法第２条の２項に規定される売店に類似する形態であるとも言えるが、それは都市公園の効用を全うするための便益施設を前提とする都市公園の設置者であるＹ市のみが設けることのできる施設であって異なる。仮に、Ｘらの屋台が同法第７条１項１-７号に挙げる公園管理者以外の者が設け占有することができる施設に該当し、同法第１２条１項１から３号にも該当する行為であれば、同法第６条１項の占用許可を受けることによって適法な行為となる。

設問（１）におけるＸらの行為は、都市公園法第２７条１項1号及び中央区立公園条例第２３条１項１号における監督処分の対象となる。同法第２７条において、「法律もしくは政令の規定に基づく処分に違反している者に対し、工作物等の除却や行為の中止・退去などの処分を命ずることができる」と規定されている。また、区立公園条例第２３条２項２号においては、「公園の保全または公衆の公園の利用に著しい支障が生じた場合には必要な措置を命ずることができる」と定められている。

従って、Ｙ市は、政令の規定又は法律の規定に基づく許可処分に違反しているＸらに対し、屋台の除却を命じ、市立ふるさと公園の機能を原状回復する義務を課すことができる。その除却命令によって課した義務をＸらが守らない場合には、Ｙ市には行政上の強制執行をすることが認められる。Ｙ市にとって、行政上の義務の不履行を放置しておくことは公益に反するため、行政代執行法における代執行を行うことができると解する。

設問（２）におけるＸらの主張に関しては、民法第１６２条の所有権の取得時効において、権利者としての事実状態を根拠に権利の取得が認められている。しかし、公物に関する適用は、具体的場面において適用されるべき法律関係を探るという解釈の方向性が示されている。

Ｘらは２０年以上にわたり市立ふるさと公園内に屋台を構えているが、Ｙ市はそれを放置してきたという事実がある。しかし、Ｘらの行為は、そもそもＹ市の占用の許可を受けておらず、違法な行為である。その行為は、一般公衆の利用を排除して公園の一部を占用するものであり、Ｘらが所有権の取得時効を主張することは道理に合わないと考える。

以上を踏まえ、（１）Ｙ市は代執行にあたり抵抗するＸらの身柄まで排除し屋台の撤去・廃棄を行うことができるか詳しく考察する。また、（２）Ｘらが主張する取得時効が適用されるか否かについて判例を踏まえつつ検討する。

1.都市公園内で、屋台を構えて営業するのは違法？