河合塾には親と子で考える医学部入試セミナーで前回、面接について記載しましたが、今回は医系小論文の入試傾向を記載します。

今回のお話の他、当該セミナーでは医学部個々の小論文パターンの実例を挙げ説明しています。是非参加した方が良いでしょう。

場所は、河合塾麹町校です。この件で、医者の社会的責任が重いと娘は気づき、医者という進路を止めてしまいました。

だが、これから医者になろうという気持ちの強い方にとってアドバイスになればと思います。

またこのブログで書きたいお話はもう終わりです。6年間ブログを読んで頂いた読者の皆様、お疲れ様でした。申し訳ございませんが、一週間以内に読者を解除させて頂きます。


◆医系小論文の入試傾向

(a)医系小論文で試される医師の適正・資質

(1)知的能力:

 ①医療に関する問題意識や関心があるか⇒私的には関係無いは駄目!

 ②医療に関する知識があるか⇒具体的な話ができるようにすること

(2)人間性:

 ③人間に対する理解があるか⇒子供、老人の立場や考えが理解出来ているようにすること

 ④社会的な責任を自覚しているか⇒365日中362日出勤可能か(正月のみ休み)、社会的な責任の自覚が無いと続けられない


(b)出題の形式(各医学部の詳論部形式は多様性がある)

課題文読解型Ⅰ:日本語の課題文を読破し、指定されたテーマに即して意見論述を行うもの[設問単数]

課題文読解型Ⅱ:日本語の課題文を読破し、要約や説明、意見論述を行うもの[設問複数]

図表分析型:図表(グラフや表)の課題資料を読解し、指定されたテーマに即して意見論述を行うもの。⇒分析論述

テーマ型:(課題文・課題資料がなく)指定されたテーマに即して意見論述を行うもの。

英文問題:英語の課題文を読解し、要約や説明、意見論述を行うもの[設問複数]。群馬大

理科論述型:理数系の課題文を読解し、内容に関して計算・分析・説明・推理・考察を行うもの。遺伝、実験の構想

※①②は一般的

※①~④は私立大、①~⑥は国公立大


(c)出題の内容

①医療トピックス

医療の原:(who誰の)「健康」の定義や現代の疾病構造の特徴など医療に関わる基本的な事項を踏まえながら、医療とは何かを原理的に問う。

医療者患者関係:患者の自己決定権やQOL、インフォームド・コンセントなどの概念を軸に、臨床現場における医療スタッフと患者や家族との関係のあり方を問う。

末期医療:末期患者のQOLや延命治療と緩和医療の違い、ホスピスケアや在宅ケアなど、ターミナルケアに関わる基本的な事項を軸に、末期医療のあり方を問う。

高齢者医療:高齢者に特徴的な疾患や地域医療、在宅ケア、介護の実態など、近年急速に需要が高まりつつある高齢者医療のあり方を問う。

先端医療技術:脳死臓器移植(脳死の定義、脳死判定の方法、臓器移植法、臓器移植に関する諸前提(ドナーの発生率、免疫抑制)など)、生殖医療(体外受精、人工授精、代理母、出生前診断など)、遺伝子医療(遺伝子診断・治療、再生医療など)などの高度先端医療の関連事項を軸に、その実態や生命倫理的な問題を問う。倫理的な問題、希少病看にはお金はかけられないという事実

看護学・保険学:キュアとケアの違い、看護の実態、障害の定義、リハビリテーションの方法など、看護学や保険学に関わる問題を問う。


②医療以外のテーマ

人間関係論・現代社会論:現在の死生観や人生観、若者の生態、情報社会の現状など現代社会の事例を通して、現代における人間関係のあり方や社会のあり方を問う。

自然科学的テーマ:科学(技術)論、地球環境問題、エネルギー問題など自然科学的な分野から現代科学技術文明の諸問題を扱う。


※志望校の出題傾向を睨みつつ、幅広く多様な出題形式・内容に対応できるように練習を積むのが望ましい。


◆問題例

課題文読解型Ⅱ(医系):2013東京医科歯科大・医学部・医学科・後期・「延命至上主義に対する反省」

テーマ型:2014日本医科大・医学部・医学科・「データ捏造事件の背景と対策」←あのSTAP事件とは関係なく、偶然だそうです。

テーマ型:2014横浜市立大・医学部・医学科・前期「グループで課題に取り組むとき」

英文問題(医系):2014大阪大・医学部・医学科・後期・小論文2「遺伝子治療と新薬」


◆学習対策

(a)医系小論文の基本課題

①課題文(資料)の読解力

・論理的読解力:課題文の論旨を正確に(=客観的に)読み解く力⇒要約・説明問題

・批判的読解力:課題文の趣旨を自分の視点から理解・解釈する力⇒意見論述問題

②設問への応答力

・設問への応答:設問の要求に正しく応えているか

③論述の説得力

・具体性:事実・現状認識が正確か、適切な具体例を挙げているか、当事者意識があるか

・論理性:的確な概念を使用しているか、論理整合性があるか、対立論点を意識しているか

④文章の表現力

・文章の構成:読み手に伝わるような文章になっているか

・表現・表記:表現・表記が正確か

⑤知識

・一般教養:文章を読解し、表現するに必要な基礎的な教養があるか

・系統別の知識:系統に関わる基本的な知識があるか

(b)参考図書

◆医療系問題集

・「医学・医療概説」(河合出版)[医療倫理を中心とした受験生向けの唯一の医療概論]

・「医学部の小論文」(河合出版)[医学部医学科受験生向けの問題集(参考書)]

・「新・理系の小論文」(河合出版)[英文問題・理科論述型問題の問題集(参考書)]

◆医療系図書

・福井次矢「医者のしごと」(丸善株式会社)[医師という職業の入門的紹介]

・矢崎義雄編「医の未来」(岩波新書)[医学・医療の現状と将来的課題を展望した概説]

・川嶋みどり「看護の力」(岩波新書)[看護の原理と実践の実例が豊富]

・大田仁史「リハビリテーション入門」(IDP新書)[リハビリテーション医学の入門書]