一応店名に偽りこそないけれど、江戸=東京といっても極端に東北の端・高島平、それも都営三田線新高島平駅近くにある、やきとん居酒屋。

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店は中も外も歴史がありそうな作り。この高島平は昭和40年代に新興住宅地として開発され、高層マンションが林立した。その無機質な空間がもたらした不穏さゆえか、しばらくしたら自殺の名所として日本中に知れ渡った(俺は板橋区のことなんか全く知らなかった最果ての田舎にいた少年時代に、ケイブンシャ発行の『妖怪・幽霊大百科』に載っていたのを見て知った)。そんな頃からあるのではないか。現在では自殺もめっきり減ったようだが、当時の悩み多き人々のオアシスとしてこの店のやきとんは心を癒してきたのでは? この店で気分良く酔って、命が救われた人もいたんだろう、そんなことを思わせる店構えだ。時には癒し切れなかったみたいだが。実は以前、一回だけ入ったことがある。悪くない印象を抱いていたので、再訪を試みた次第。前回は何となくの入店だったが、今回はやきとんガッツリいきますかって気分。

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まず飲み物。やきとんと言えばホッピー。置いてあるのは常識として、惜しくも400円。板橋なのに。

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やきとんはタン、ハツ、シロ、レバ、カシラを塩で頼む。しかしシロが売り切れだったのでガツを代用。それからお新香、300円。キュウリの糠漬けしかないんだけど、と言われたが全く無問題。これはすぐ出てきた。上にかけた味の素がキラキラしていて華やぐ(そうか?)。味は良い意味で予想を裏切らなかった。

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やきとんは、出てきた途端臭いが鼻についた。レバの仕業だ。ただし、焼き加減は最低限に抑えられ、ジューシー。臭かったのに悪くない、という不思議な現象。つまりは、素材はその程度なのだが、焼き加減塩加減を司る技量があるということか。

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その他、タンとハツとガツは臭くなくていける。辛味噌もあわせて出されたのだが、ピッタリの相性。しかし、いつまでもカシラが出てこなかったので、中をお代わりする時に催促したら、どうも注文が入っていなかったようで、追加注文をされたような対応。違うってば! まあ、いいか。その代わり、カシラは2本、塩とタレで頼んだ。

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よく見たら、焼き場を担当しているのはお母さん。女の人が焼き場って珍しいが、腕は悪くないことがわかった。

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タレは焼き鳥に使うような甘口タイプ。塩の方がやきとんには良いかな。

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決して大きな店内ではないが、奥まった部分には仕切りがあってちょっとした団体で利用する時にも良さそうだし、カウンターとテーブルの位置と数のバランスも良い。わざわざ遠方から訪ねてくるような立地でもないが、常連もしっかり定着しているようで雰囲気も悪くない。メニューはあまり多くないが、歳とって馴染んできたら少ないツマミで十分だから、サッと飲みに重宝な店だ。並びには中華料理屋とかもあって、この辺は地域のための超小規模な歓楽街なんだなあとしみじみ。

Text by 大王

江戸っ子居酒屋 / 新高島平駅西高島平駅高島平駅
夜総合点★★★☆☆ 3.0