十条駅から自転車の帰り。
小腹が空いていたのと、突然降ってきた雨から少しでも逃れるために入った、「宝龍」。

カウンター10席未満、テーブルは二人掛けが3つ程度の狭い店。
店頭に停まるバイクをみるに、出前で稼いでいる店なのだろう。

以前、この近辺に住んでいたこともあり、何度か入ったことがある。
もう3、4度目になるだろうか、今回ももやしかた焼きそばを頼んだ。

この店は、500円メニューが何種類か揃っているのがウリのようで、店頭にも卓上にも500円メニュー記されている。
最近の消費税アップにも負けず、そのポリシーを貫いている点が、まず立派。

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何を食っても味気ない「満州」みたいなダメ中華チェーンにいくなら、絶対にここにくるべきだ。
ただ、「福しん 」と「王将」は許す。

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麺は太くてゴツゴツしている。
皿うどんだと細麺が出てくる店が多いが、俺は太い方が好き。

その麺の上に皿からハミ出さんばかりに乗った、あん。
名前のとおり、もやし主体で、きくらげがアクセント。
タケノコ? にんじん? 豚肉も申し訳程度に入っているが少なさに文句はない。

500円で何を求めるのか。
これで十分です。

あんは一回一回キチンとつくってるから、そのアツアツなのが雨で冷えた体にうれしい。
横につけられたカラシをまぶしつつ、ハフハフガツガツと口の中にねじ込む。

味は、まぁ、こんな感じかなってくらいで、特筆すべきものはない。

だが、カタい揚げ太麺のクリスピー感が、あんに浸った部分から少しずつ柔らかくなってくるのがよい。
微妙な食感の違いを楽しみながら、食べ進む。

この楽しみ、かつ丼や天ぷらうどんにも似たような感覚。
最初からツユでグダグダになったカツや天ぷらを出している店は、俺にとってダメな店。

ちょっと違うが、コーヒーフロートとかで、バニラアイスの冷たさでわずかにシャーベット状になったコーヒーなんかも好きだ。

出会いの妙、とでもいうのか。
単独ではなし得ない味わい。

俺が入ったこの日は、雨がけっこう降っていたこともあり、俺以外は客ゼロ。
でも、昼時に覗くと混んでいる。

近くには大学とその付属の大きな病院がある。

大学時代、安く腹を満たせればよかったあの頃、牛丼でもなく、ラーメンでもなく、立ち食いソバでもなく、もちろんハンバーガーなんかでもない、このもやしかたやきそばが選択肢の一つにあったら、豊かな学生生活を送おくれただろうな。
そんなプチありがたい存在である。

昔、仕事でお世話になった方に中華料理をご馳走になったのだが、そこで食べたあんかけ焼きそばが非常に気に入って、その後、一人でもう一度食べ直しにいったことがある。

その方が、「ここの料理はマズいけど美味いんだ」と表現していた。

決して洗練されてないし、食材にこだわっているようにもみえない。
すこぶるリーズナブルで、盛りがよい、というわけでもない。

でも、美味い。
街のなんとなく存在する中華料理屋なんだが、昼時に閑古鳥が鳴くことはない。

あと、全然関係ないけど、カウンターの下に漫画や雑誌が置いてあって、その1冊に自分が関わった本があったのが、意外とうれしかった。

Text by 大王

宝龍中華料理 / 十条駅板橋本町駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.7