前回のつづきです。
帰ってきたウルトラマン第1話放映45周年を記念して好きなシーンベスト10をダラダラ語っていきます。順位は付けず話数順に挙げています。今回は6番目から10番目。
マットガンを撃ち続ける六助
第25話:ふるさと地球を去る
脚本/市川森一 監督/冨田義治 特殊技術/大木淳
村のいじめられっ子・六助はマットガンを盗み出し怪獣ザゴラスに立ち向かおうとする。かつて似た境遇で同じような無茶をした経験のある南は六助を連れて共にザゴラスを攻撃する。
このシーンは戦いが終わり、気弱ないじめられっ子が勇気を持つことが出来てめでたしめでたし…と思いきや、六助は「また起きないかな」とマットガンを撃ち始めるというシーン。いじめられっ子が得たのは勇気ではなく、これまで溜まりに溜まった鬱憤を爆発させる力だったのか…。南は険しい表情でマットガンを取り上げ、「もういいだろう」と今度は優しく微笑む。
市川脚本は子供の内に秘めた暴力性を描きつつ、それは違うと正してくれる大人も見せている。六助がこうなってしまったのは当然いじめられた影響が大きい。いじめられる六助を助けようとしなかった(いじめだとすら思ってなさそうな)担任教師と南は対照的な大人だった。
理想を語る伊吹隊長…
第31話:悪魔と天使の間に・・・
脚本/市川森一 監督/真船禎 特殊技術/高野宏一
「私はあの子を、何かの偏見で人を騙したり、疑ったり、差別したりする子に育てたくないんだ」
伊吹隊長の娘・美奈子は聾学校の輝夫と親しくなるがその正体はゼラン星人だった。郷は伊吹に何度もその事実を告げるが耳を貸さない。そこで出たのが先の台詞。
理想論を語る伊吹だが、他ならぬ彼自身が「子供は清廉潔白」という「偏見」を持っている(輝夫が障害者であることも影響しているだろう)。そればかりか郷を精神鑑定に出そうとしたり郷こそ宇宙人ではないかとまで言ってしまう。
僕が小学生の頃、この回が地元で再放送され録画したテープを繰り返し繰り返し視聴していたが、ある時、伊吹の矛盾に気付いてぞっとしたことをよく覚えている。
しかし、輝夫=ゼラン星人を目の当たりにした伊吹は彼を射殺。美奈子には真実を告げると語り、物語は幕を閉じる。真実を知る前の天使のような笑顔の美奈子というラストカットに心を抉られるが、後の第43話を観る限り美奈子に落ち込んでいる様子はなくほっとする。
ウルトラマン対レオゴン
第34話:許されざるいのち
脚本/石堂淑朗(原案/小林晋一郎) 監督/山際永三 特殊技術/佐川和夫
この戦闘シーンに流れるBGMはお馴染みの戦闘テーマでもピンチテーマでもない「MATのテーマ・勇壮」(M-71)である。ワンダバこと「MATのテーマ」(M-3)をアレンジしたこの曲は悲愴感を盛り上げる名曲。レオゴンを誕生させレオゴンに食べられてしまった水野の屈折した悲しいドラマの流れを継続し、ウルトラマンの辛い戦いを音楽で演出した。曲の終わりに倒されたレオゴンがゆっくり沈む構成も素晴らしい。これも小学生時代の再放送で視聴し、悲しい曲の流れる戦闘シーンは子供心に強烈な印象を残した。
冷静さを失い暴走する岸田
第42話:富士に立つ怪獣
脚本/石堂淑朗 監督/佐伯孚治 特殊技術/佐川和夫
蜃気楼怪獣パラゴンにレーダーを狂わされたマットアロー1号。ムキになった岸田は攻撃の手を緩めず、アローのミサイルが地上にいる隊員や村人たちを次々に襲ってしまう。
石堂脚本ならではの凄まじい展開と恐るべき爆破演出がとんでもないシーンを生み出した!(画像を見てわかる通り役者と爆発が異常に近い)
普段は論理的な岸田だが感情的になると無茶してしまう。ああ見えて実に人間臭いキャラクターだ。演じる西田健氏の鬼気迫る演技も見所。
黙祷~旅立ち~ウルトラ五つの誓い
第51話:ウルトラ五つの誓い
脚本/上原正三 監督/本多猪四郎 特殊技術/真野田陽一
郷に黙祷を捧げた伊吹隊長と隊員たち。去りゆく隊長たちの背中が無性に寂しさを誘う。これは次郎とルミ子の前から去ってゆくだけではない、僕たち視聴者とMATのお別れでもある。考えてみれば、ウルトラ最終回で主人公を見送ることはあっても隊員たちを見送ることは無い。
「帰ってくるような気がするんです」というルミ子の言葉通り、スーツ姿の郷が帰ってきた。だが彼はすぐに「旅に出る」と告げる。
「グッバイ、次郎」
「グッバイ・・・?」
郷は次郎とルミ子の眼前でウルトラマンに変身、大空へ飛び立つ。
(BGM・M-29)
「郷さーーん」
「ウルトラ五つの誓い
一つ、腹ペコのまま学校へ行かぬこと
一つ、天気のいい日に布団を干すこと
一つ、道を歩く時は車に気を付けること」
「次郎ちゃ~ん」
「他人の力を頼りにしないこと
土の上を裸足で走り回って遊ぶこと」
「聞こえるかい郷さーーーーん」
…映像を観ずに書き出してみたけどダメだ、やはり目がうるうるしてしまう。子供の頃からもう何十回観たかわからないのに。このシーンの次郎を見ると昔の自分のことまで思い出してしまう。僕にとっては心の故郷みたいなものなのかも知れない。
帰ってきたウルトラマンは視聴者の心に響く何かを持った作品であることは確かだと思う。まだ観たことないという人も何度も観たという人も、45周年のこの機会に帰マンの世界に触れてみてほしい。
さぁ、みんなで観よう!