↑幕末期の拳銃
今日は、東中野にある酒場「14」で、火縄銃に関するイベントが開催されたので参加して参りました。
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イベントの企画運営は私の友人でもあるS氏。S氏は森重流砲術と天眞正伝香取神道流剣術をそれぞれ免許皆伝で、かつ日本における銃砲研究の最高峰”銃砲史学会”にも所属されている方です。
さらに銃砲史学会で理事を務める日本銃砲のプロ中のプロ、峯田元治先生が講師として火縄銃および幕末期の洋銃に関し、解説して頂けるという話。S氏よりお話を聞いた時、即参加決定というイベントでした。
↑イベント内容
やはり銃砲に関する専門知識は、実際に銃砲研究に携わっている方に聞くのが一番ですし、射撃免許を持たない私のような人間は、実際に射撃や古流砲術の型を体術として身に付けている人に聞く以外にないです。なにしろ”自分で試せない”以上、実際に”試せる技術”を持つ人からお話を聞くしかないですからなぁ。
専門家や技術・銃砲に関する資格を持たない人から話を聞いてしまうと、”また聞き”になってしまい、史学の手法で言われる”また聞きは勘違いや誇張が入り、真実性・信憑性がなくなる”という現象にハマってしまう可能性があります。これだと歴史を知ろうとする上では悪手となりますので。
↑イベントで紹介された古銃(実銃)
イベントでは国友筒(火縄銃)、薩摩筒(火縄銃)、幕末期の拳銃やゲベール銃、ミニェー銃に関し、実銃を用いながらそれぞれの特徴や注目すべきポイントなどを解説。六匁玉や雷管などは実際に参加者に廻されて見聞。先込め銃以後の薬莢を用いる後込め銃に関しても触れられました。
お話のなかで、薬莢(カートリッジ)を用いたものが現代銃、それ以外は古銃というのが私の認識でしたが、この区分けについて「ハンマーで打撃する部分が中央にある(センターファイアー)ものが現代銃で、縁を叩く(リムファイアー)ものは現代銃扱いにはならない(古銃は美術品扱いとなるため、触っても銃刀法違反にならない)」という話も出てきておもしろかったです。
思えば、故あさくら先生が「手に入れたスペンサー銃はセンターファイアーで現代銃扱いだから、触っちゃダメだよ」と注意を受けたことが思い出されます。スペンサー銃は本来はリムファイアーの薬莢を用います。が、あさくら先生は現代で復刻したスペンサー銃を購入しているため、現代の薬莢を使用できるようにセンターファイアー仕様になっていたなぁと。
↑スペンサー騎兵銃を撃つ故あさくらゆう先生
↑スペンサー騎兵銃(復刻版現代銃)
↑雷管(管打ち銃に用いるもの)
↑幕末ごろの拳銃
↑雷管をセットする部分を拡大
拳銃に関してはリボルバー形式だけど中折れするタイプのもので、雷管を差し込んで撃つタイプみたいでした。ちょこっと触らせて頂いたりして楽しかったですわ~。
↑薩摩筒
イベントで重点を置かれたのは、やはり火縄銃で国友筒と薩摩筒に関して解説。薩摩でも砂鉄が取れ、それが良質だったことから薩摩筒は筒の厚みが薄くても強度があるという話でした。薄く作れるということは、その分だけ重さも軽くなるわけで銃としては有利だったろうなぁと思います。ホント、銃は重いですから(汗)。
戦国時代はもちろん、江戸時代を通じて薩摩藩島津家は鉄炮重視の合伝流兵法でしたから、性能の良い鉄炮と薩摩藩は相性が良かったはずですしねぇ。
↑上側がミニェー銃、下側がゲベール銃
ゲベール銃でおもしろかったのは、ストック部分を削って和銃方式に改造されているところでしょうか。ゲベール銃も洋銃ですから、本来は肩当てストックがある。しかし、日本人は頬に当てて構える和銃形式の取り回しに慣れているため、ストックを取っ払って頬当て形式に変えているみたいです。
また、ライフル銃は銃口内で弾丸を回転させてるわけですが、よく説明で”ぐるぐる回転”という説明がされる。しかし、実際には銃口内での回転はだいたい一回転前後程度で銃口から弾丸が出ていくという話もありました。つまり、その程度のライフリング(溝)が銃口内に掘られているということです。
最新研究の成果を聞きながら、火縄銃や幕末期の洋銃への発展など聞き、とても勉強になりましたわ~。イベント終了後は、銃砲史学会の会報販売や火縄の販売がありましたので、資料用に購入します。
↑薩摩筒の解説レジュメと購入した通常の火縄「切り火縄(森重流砲術)」と村上水軍が用いた耐水性のある火縄「露の火縄(合武三島流)」
↑銃砲史学会の会報各種
銃砲史学会の会報は、本来は会員のみに配布されているもので、一般たる私が読もうとすると図書館に所蔵されているものを読むしかないのです。今回は、特別販売されていたので幕末に関係する論文があるものを購入いたしました♪。
以上、大変有意義に過ごせたイベントで楽しかったです。あさくら先生が世を去ってからは、本物の古銃を見る機会が激減し、それこそ間近で撮影させてもらえる機会もないという状況。古銃は博物館でガラスケース越しに眺めるだけかなぁと思っていたところ、このような機会に恵まれたことは幸せですのう。
また、こうしたイベントがあれば参加していこうと思っております。
【業務連絡】
今年の夏コミ新刊『歴史企画研究叢書11輯 幕末期の学問』の通販開始を8月10日ごろより開始する予定です。ネット上の通販案内に詳細をアップします。購入希望の方は、しばしお待ち下さい。
また、8月12日のコミケ104(二日目)にサークル参加しますので、実際に中味を見て買いたい方はコミケに来て頂ければと思います。コミケの入場券は前売りで当日券はないみたいですので、コミケット準備会のサイト等で参加方法を確認して頂ければと思います。