屋根裏と安楽椅子とパイプ

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読んだミステリー、遊んだボードゲームの感想など、趣味を中心につらつらと綴るブログです。

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・大村益次郎:

多くのゼミ生がBBSに書いているように、ユウタが敬愛する大村益次郎も宇和島と縁がある。


やや余談めいたことかもしれないが、宇和島藩が高野長英を招いた時、自宅に匿って支えたのが二宮敬作だ。


長英と二宮はともにシーボルトの直弟子であり、同じ蘭学者にして医者だった。二宮は、シーボルトの娘の楠本イネを一時宇和島に引き取って養育し、また蘭学、医学を教授した。


大村益次郎も宇和島藩に仕えていた時期、やはり二宮の厚恩を受けた。


二宮宅を訪問するうち、イネとも交流を深め、互いに特別な感情を育んだともいわれている。


この家が、高野長英の隠れ家として今でも卯之町に残っている。

私も学生の頃に訪ねたことがあるが、ユウタも立ち寄っただろう。



・かごめ唄は開明学校から?:

ここまではいわゆる史実といわれていることや、史・資料からの考察を中心にまとめてみた。


最後に、ゼミ生諸君がBBSで展開しているほどではないが、私も少し推理をしてみたい。


多くの蘭学者を育て、高野長英のような先覚者とも積極的に交わり、大村益次郎も招聘したことなどからもわかるように、宇和島は開明の風を誇りとした土地だった。


ユウタが送ってきた音声ファイルの中で、証言者は「(かごめ唄は)ここらの学校から広まっていった」という意味のことを話している。


私はこの学校というのが、宇和島に今も遺されている開明学校やその周辺の学校ではないかと推測している。


開明学校は宇和島藩の藩校をベースとする、江戸時代から続いた学問所だった。


児島惟謙もその藩校時代に通ったといわれているし、明治の初期に全国に小学校が作られる時には、開明学校がモデル校の1つにされたという。


音声ファイルには、「“昔の人たち”は、かごめ唄にはこんな意味があると言っていた」というくだりもある。


前後の語りから、この“昔”とは、竜馬の謀殺以後で、「司法省の偉い人」を意味するくだりから、児島の存命中、活躍期のあたりまでのことと推測できる。


これらの事柄から、天赦園こと児島はかごめ唄の歌詞を変え、地元の先進的な旧藩校であり、全国の小学校のモデルになった開明学校などを経由して、全国に広めたのではないだろうか。


さらに大津事件の後、隠棲期にも新聞小説でそれを流布しようとした。こんな推理してみたが、どうだろうか。




・小説と音声ファイルの示唆:

音声ファイルでは、他にも、

「籠の中の鳥は竜馬」

「竜馬を囲め」

「竜馬はいつ出遣るか」

「明治維新の夜明けの晩に(維新前夜という意味か?)」

「竜馬と中岡慎太郎があんな目に遭わされた(殺されたことを指すのだろう)」

さらに、

「竜馬の死には陰謀があり、後ろには黒幕がいた」


という衝撃的な内容が続く。


新聞小説第三回のことわり書きを読むと、かごめ唄の歌詞は天赦園の筆によるもので、解釈も作者に拠るものだと書かれている。


第二回の歌詞は、地方や時代によって少々違いがあるものの、西日本一帯で歌い継がれてきた歌詞に近い

(事実、私の祖父母や、四国、九州出身で一定以上の年齢の知人には、第二回に近い歌詞で歌う人がいる。私を含め、それより若い世代は、第三回の歌詞しか馴染みがないが)。


これに加えて、多くのゼミ生が推理しているように

「五人組から仲違いして退け者にされた一人は竜馬」だとして、

さらにことわり書きに従うならば、第三回の歌詞の中でも、赤文字で書いた部分こそ、天赦園が改作した箇所だということになる。


第二回では西国の一般的な歌詞だったものが、

「退け者が殺される第三回」で変えられているからだ。


天赦園は郷里の学校や新聞小説を使って、このことを伝えようとしたのではないか。

以上が私なりの推理なのだが、自分でもこれではまだ足りないと思っている。


有志のおかげで、文字起こしと読み下しはなされ、他の多くのゼミ生も共有できるものとなった。


私はここから先、さらに小説の“意訳”を進めるつもりだ。

kuontuiさんの「超藩的」、森の水さんの「一帯の長連中が諸大名?「同調」して倒幕勢力になった?」といった考え方には、激しく心を動かされた。

あじのひらきさんの複数にわたる長文も、読み応えのあるものだった。


私も「【整理】小説をどう読むか」に挑戦したい。ゼミ生からもぜひ、様々な意見がほしい。



LIONさん、izouさん

力量不足で、教授ほど大胆な飛躍や仮説を構築するには至っていません。

私は意訳を進めてみようと思います。ぜひご意見をください。



最後になったが、土曜日の夜、遠くから見守る者への挑戦(?)に応えてくれたみんな、本当にありがとう! 


教授について聞いても答えは得られなかったが、大勢の力が結集されて、あんな見事な戦いに参加できたことに今も心が震えている。


(私もバックギャモンは少し嗜んでいるが、ワイジローさん、あそこであのゾロ目を振れる自信はないよ。お見事でした!)

ユウタから取材成果が届いて以来、この新聞小説のことをあれこれと考えていた。


何人かのゼミ生が小説の文字起こしや、読み下しをしてくれたことは、非常に有意義だったと思う。

それをきっかけに、ゼミのBBSで活発な意見や情報の交換がなされた。私を含めて多くの者が触発されたはずだ。


少し時間がかかってしまったが、新聞小説について、私なりに歴史的、史・資料的観点からの考察をしてみたい(以下、特に名前を挙げている方以外の方々の尽力にも、大変感謝し、参考にさせてもらっていることを始めに書いておきます)。




・小説の題名:

「土之絵多津=つちのえたつ=戊辰」という朝霧さんの推測に、異論のある者はいないだろう。私も同じ考えだ。

江戸や明治期の戯作者、小説家たちには万葉仮名遣いをもじって漢字をひらいたり、文字をひねって洒落た題名をつける風潮があったようだ。



児島惟謙の事歴からすると、“戊辰”は鳥羽伏見の戦い以降の戊辰戦争を指しているというよりは、明治維新の頃を意味すると考えたほうが通りが良さそうだ。




・作者:

作者についても、poly6さんの指摘に大きく頷かされた。“天赦園五郎蔵”は、天赦園、五郎兵衛、謙蔵と、すべて児島惟謙の号や幼名、通称に使われている文字だ。

また、第三回のことわり書きと、児島の履歴や時期も符合する。




・高野長英の『戊戌夢物語』:ワイジローさんのこの書き込みは非常に示唆に富んだものだったと思う。


長英が天保9年(1838)に著わしたこの書物は、幕府政治を批判する痛烈な内容で、瞬く間に写本が全国を駆け巡り、有為の士の間に広まった。


竜馬や土方歳三といった、幕末のゴールデンエイジが生まれてから、数年後のことだ。



「夢の中の世界では、人々が自由に西洋の学問を学び、意見や論を交わしている」とし、当時洋学を厳しく禁じていた幕府の政策に疑問を投げ、「外国の船を武力で追い払っていては、日本は仁のない国になる」と、その対外方針を憂えた。外国の船を追い払うとは、異国船打払令とモリソン号事件を受けてのことだが、ここでは割愛する。



長英は「夢の中の絵空事」とすることで、幕府からの追及を免れようと考えたが、前述のように広く人々に愛読されたことから、この著作の存在を知られ、江戸で投獄される。



その後、獄舎が火事になった隙に脱獄した長英を匿ったのが、宇和島藩主の伊達宗城だった。宗城は長英の知識と鋭い先見性を必要とし、幕府には秘密裡に長英を宇和島に招いて庇護した。ここで児島惟謙との接点が出てくる。




・天赦園五郎蔵の『土之絵多津夢物語』:

この新聞小説と『戊戌夢物語』には重なり合う点が多い。

題名もそうだし、舞台の設定も「海の向ふの外つ国の事、絵空の事」とされている。



そして小説の作者が児島惟謙とするなら、やはり高野長英と符合する部分がある。

長英が書物で幕府政治を批判したように、児島惟謙も明治政府と一時、激しく対立し、その姿勢を痛烈に批判した事実がある。

その最たるものが大津事件だ。



これも詳細は述べないが、発端は、訪日中のロシア皇太子が警護の日本人警官に襲われたという事件だった。

時の政府は“恐露病”と揶揄されたほどロシアを恐れていて、この事件が外交問題に発展する前に、強引に犯人を死刑に処そうとした。

これにストップをかけたのが、当時司法省の大陪審院長だった児島惟謙だ。

この肩書きは、現在で言うなら最高裁か高等裁判所の裁判長というべきものだろう。



児島は「いかなる罪人であろうと、法に則って正しく裁かれるべきだ」と司法の独立を訴え、法を無視した政府の介入に抵抗した。

それが元で職を奪われ、在野での隠棲を余儀なくされた。

新聞小説が書かれた時期は、児島の隠棲時期に重なる。



わずか三回で終わってしまっているが、作者が児島だとするなら、理非曲直を正すことを旨とする児島の性格からも、小説の続きは明治政府の誤りを糾弾するような内容になったのではないだろうか。



そのため、小説の題名を夢物語とし、舞台設定も絵空事にし、政府からの追及をかわそうとした。

さらにいえば、郷里・宇和島にゆかりの深い先達の長英を想い、痛烈な批判精神を継承しようとした、というのはうがった見方だろうか。

ユウタが岡山で襲われた。




かごめ唄と坂本竜馬に関して、教授と早紀さんが狙われた。

そして今またユウタにも大変な事が起きてしまった。

同じかごめ唄を調べている最中にだ!




もしかしてユウタにも何かが起きるかもしれない。



そんな不安を感じないわけではなかった。

それが実際に起きてしまった。




だからといってもうあきらめることはできない。

とことん追究して、真相を突き止める。




だが、今は何よりユウタの容態が気がかりだ。