こんにちは。



これで一章ラストです!!


☆      ☆      ☆


繊細な模様で縁取りされた絨毯、鳥のレリーフが掘り込まれた木造家具、天井から下がるシャンデリア。



豪奢を極めたその部屋で、火里領主の威音はティーカップに口をつけ、安堵のため息を吐いた。



だが苦い。医者の処方する薬なんて比じゃないくらいだ。



けれど、しだいにしびれていた手が動くようになり、動悸も整い出す。



太古、不老不死を求めてあらゆる食べ物を食したものたちから毒素を拭い取った「仙茶」の威力は抜群だ。



と。



がたん。



脇を見れば、窓越しに世舵の使い魔こと火の鳥ポニーの姿が見えた。



「ああ」



鍵を開けて室内に入れてやり、くわえている手紙をとる。同時に棚からパンを取り出して、ポニーに食べるよう促した。



こうして動きを封じておかないと、ときどき木造家具が燃え上がるから大変だ。



なんでもないように見えて、重要かつ不可欠な動作なのだった。



いつもながら、手紙はすこしこげている。



紙片を手早く広げれば、文字が浮かび上がった。



<沙羅との取引に成功。今後火里内滞在の予定。>



ああ、だろうなと威音は机の端の書類をちらりと見る。



いままで威音は世舵の頼みを断る人間に会ったことがなかった。



しかし、今後が思いやられるのは事実だ。



伝言はこれで終わりと思いきや、さらに続いて文字が羅列した。



<P.S.おまえ又茶会で毒飲まされたんだろ~。早く周囲の神官抑えろよ。



奴らの娘でも押し付けられた日には恐ろしいことになるぜ!>



威音は眉根をよせる。確かにそうだが、よけいなお世話だった。



<そろそろ中型の商家あたって、お前と一緒に神官に嫌がらせしてくれるくらい性格のいい奴捕まえて来いよ!



オレもじき力自由に使えるようになるからさ!!>



しかし、その後に続く文字に威音は驚く。

盲点だった。



一緒に嫌がらせ!!それは非常に魅力的に思えた。



権力を乱用する恐れのある宮中の神官ら娘よりも、外から引き入れ、こちらに味方してくれるような人間の方が心強い。

確かにそうである。



この頃はやたら神官たちが「うちの娘は美しくてかわいい」だとか進言してくるし、そろそろ断りきれなくなりそうな勢いでもあった。



どの道「領主」なんて派手な権力持っていると、周囲の営利団体と結びつかざるをえないのだ。



それなら、と威音は熟考し、にやりと笑った。



「頃合いか。

世舵の回復とオレの婚姻を機に、城内の要注意分子を選別しさばく。他にも手を組むべき人材は確保しておかなければな。



さて」



紙片に伝言を上書きして、ポニーの嘴にくわえさせる。



「ポニー、その手紙を世舵のところに運んでくれ」

そう頼むと同時に、不死鳥は羽ばたき舞い上がる。



ふと見ればよほどおいしかったのか、パンの食べ残しは一欠片もなかった。



どうやらあの美食家の鳥にも満足する味だったらしい。



また注文しておこう。威音は見た目によらず動物好きなようだった。





先ほどまで明るかった空はもう暗く、けれど夜明けにはまだ遠い。



突如吹いた強風に、書類が一束飛ばされた。

それは、「地里、天里にて破邪の一族惨殺」と記された二、三枚の資料だった。




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(一章完)



ヾ(@°▽°@)ノやった!!



ちょっと収まり悪いけど、切るならここなので、切ります。


いくつか、複線説明できてないような。ちゃんとチェックしておきますね!!



ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!!



二章は最後らへんで威音が言っている展開で一騒動するでしょう。では、お楽しみに!!