デヴィッド・ボウイ分析(98) ボウイ哲学で貫かれた深遠なるラヴソング | デヴィッド・ボウイ(DAVID BOWIE)を100倍楽しむ方法

デヴィッド・ボウイ分析(98) ボウイ哲学で貫かれた深遠なるラヴソング

デヴィッド・ボウイ分析(98) ボウイ哲学で貫かれた深遠なるラヴソング
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アルバム、ロウとヒーローズ、どちらの評価が高いのでしょうか?私はロウのどことない未完成さが好きなんですが、発表当時はタイトル曲のおかげでヒーローズの方が評価が高かったようです。ボウイは自分の周りの環境を重視するようで創造力を養うために音楽、映画、絵画など芸術が発達していたベルリンを選んだようです。これらのアルバムが録られたHANSA STUDIOから当時、圧政を示すベルリンを東西に分ける壁を見ることができ銃を構えた兵士が常に監視していました。そこにいつも恋人同志と思われる男女が現れます。他に逢う場所はいくらでもあるはずなのに何故兵士が銃を構えるような場所で逢うのかボウイは理由を考えます。壁近くで逢うことは危険を伴う犯罪すれすれの行為であり、ささやかではあるが英雄的、政治的な主張があるのではないかと解釈します。これを描いたのがHeroesです。


僕は王になろう
そして君
君は女王になるだろう
何者も彼らを
追い払えはしないけれど
僕たちは彼らを打ちのめすことができる
たった一日だけ

僕たちは英雄になれる
たった一日だけ

そして君
君はあさましくもなれる
そして僕
僕はいつでも飲んだくれよう
僕たちは恋人同士なのだから
それが事実なのだから
そう 僕たちは恋人同士
そして それはそういうことなのだから

壁が崩壊した現在、歌詞の意味は失われたように見えますがいつの時代にもこうした圧政、失政の下で生きる人々は存在し時代が変わってもそうした無常感を訴えるメッセージの本質は不変でしょう。意外な感じがしますが以下はジョージ・オーウェル「1984年」に登場し明らかにHeroesを連想させるフレーズです。

二人(ウィンストンとその恋人ジュリア)の抱擁は一つの戦いであり、その最高潮は一つの勝利であった。それは党に対して一撃を加えることであった。それは一つの政治的行動であった。

これを読むとHeroesの歌詞の言わんとすることがより明確になります。ボウイは直感的に「1984年」の抑圧された社会と東西のベルリンに生きる人々を重ねインタビューで語ったようにこの曲の歌詞を短時間で書き上げたのでしょう。

Heroesではその種のリアリティに直面すること、立ち向かうことを歌っている。そういう状況の中で懐からうまい具合に引っ張り出せる唯一の英雄的行為と言ったら、自分を抹殺しょうとするあらゆる攻撃にもめげず、人生とうまく付き合い、生き続ける中から単純極まりない喜びを引き出すことぐらいだ。1977年10月 (異星人デビッド・ボウイの肖像/シンコーミュージックより)

ヒーローズ(紙ジャケット仕様)
ヒーローズ(紙ジャケット仕様)



映像はこちらをどうぞ

David Bowie - Heroes/Helden


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