わもんなわたふ(54)
わたふとよしこの黒帯チャレンジ。
あやちんと、本日初めて黒帯に参加したピースが見守る。
わたふ、よしこ、あやちん、ピース。
話し手、馬、羽織。
代わる代わる役割を交代しながらチャレンジしていた。
チャレンジして、シェアして、またチャレンジしてシェアして。
いけそうでいけない。
できそうでできない。
しばらくして、やぶちゃんが言う。
「ここは――4人連続取得や!」
「えっ!?」
あやちんとピースが目と口を開いた。
場の空気が変わった。
わたふが黒帯を取得する日と誰もが思っていた。
わたふに黒帯を取ってもらおうと誰もが思っていた。
わたふ自身もそう思っていた。
そこに、よしこが加わり、ピースとあやちんが加わり――、
――結局は、参加者全員で黒帯取得を目指すことになった。
それまでも、わたふをはじめ、みんな真剣だった。
手を抜いていた者はいない。
それでもさらに、越えることができる。
他人事が自分事になり、自分事が他人事になる。
自分が黒帯を取得することが、他の人の黒帯取得を後押しする。
この場にいた全員の思いが、一カ所に集まった。
羽織は話し手に集中する。
話し手は今の思いを振り絞り話す。
馬は羽織の音を聞きながらも話し手の音に集中する。
わたふも集中する。
今、ここで、自分は何をすべきか。
話し手のとき、馬のとき、それらを観察するとき。
今、ここで、感じたことを感じたままに。
羽織のときも同じ。
今、ここ、自分に集中する。
そして――、
「わたふ、認定!!」
やぶちゃんの声が聞こえた。