ブリッジをどう考えるか | レスリングを考える

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 ブリッジはレスリングの基本練習とされています。しかもレスリングの「象徴」という側面が少なからず存在します。一般的な見方からするとプロレスでそれが印象づけられている部分が多いのだと思いますが、しかしアマレスの世界でも「鼻が付けば一人前」とか「人を乗せたら一人前」みたいな感覚で一つの象徴となっていることは間違いありません。


 一方で「医学的視点」に基づけば、頸椎の形から考えて決して望ましい練習ではない、ということになります。チビッ子レスリングで親御さんが始めに心配するのは「ブリッジなんか練習させて大丈夫なんですか」ということです。
 私は医者ではありませんからこの件についてブリッジのトレーニング方法としての善し悪しを正確に語る資格はありません。ここでは、「どうしてブリッジは必要なのか」と「どうしてレスリングで頸椎を痛めるのか」この2点について考えていきます。
 

まずブリッジが必要な理由なのですが、これはレスリング選手はみんな分かっている気になっているんですが、私は今回の入不二さんの怪我を通して「分かっているつもり」なだけの可能性があるという気になってきました。というのは「ブリッジは基本だ」という説明以外に「何で必要なのか」という説明は納得行く形で受けた記憶がないからです。とりわけ、どうして「鼻が付くくらい反り返った方が良い」のか。ここは大変重要な問題のはずです。
 

レスリングで首を鍛えなければいけない根本的な理由は安定性を作ることかと思います。強い人はおしなべて首が強い。これは間違いありません。崩しをしたって全然崩れませんし、ガブリも全然極めさせてくれません。フォールに持ち込まれても簡単に肩を付けません。タックルも首の安定感があるからこそ強い衝撃を与えたり持ち上げたり出来るのです。でもその意味でのトレーニングならば「極端に反っくり返る必要はない」のです。適当な角度の範囲で最大筋力を発揮するトレーニングの方が筋トレとして効率的です。
 

もう一つ考えるべきことは柔軟性です。これは確かに一理あると思います。レスリング、とりわけ寝技の動きの中ではそれが求められます。その意味ではブリッジの意味はあるでしょう。鼻が付けられれば当然動きの幅も増えてくるでしょう。

 しかし注意しなければならないのは、「鼻を付ける」ほど反っくり返れるのは、首の柔軟性ではなくて背中の柔軟性故なのです。これは私が段々年を取ってきて柔軟性が欠けてきてからはっきり分かりました。なので現在私がブリッジをする理由は背中の柔軟性の為です。

 そして、ブリッジを練習する際に絶対に意識しておくべき事は「背中の柔軟性がないのに反っくり返るブリッジをすると首への負担が大変に強くなる」ということです。背中が曲がらない分、首をより大きく曲げてしまうことになるからです。特にマスターズの場合はそれを強く意識していなくてはいけないのです。ブリッジをやるならばまずは背中の柔軟性に意識を持っていきましょう。首はその次です。

 

では「反っくり返る」練習はどこから来たのか。あれはおそらく「グレコローマン」の動きの練習なのではないでしょうか。反り系の技はあの極端な反りを怖がらないでかけることが不可欠ですからそれに馴れる為にブリッジの意味があるのだと思います。準備運動でよくやる後ろローリングもその為の練習になります。
 

 もう一つ、頸椎を怪我するのはどういう場面か、というと実はブリッジをしている時ではなくて殆どがタックルなんですね。例えばタックルを切る時は相手の頭を手で受け止める形になるので、入ってきた選手の首が曲がった状態で衝撃がかかってやってしまうことが大変多いです。或いはタックルに入った時に頭が脇に抜けずに胴体にめり込んでしまうことも結構あります。これも頸椎を痛めるパターンです。レスラーが首を痛めるパターンは殆どがこれのはずです。つまり自分から技をかけて自分で怪我をしているのです。強い弱いは関係ありません。あとは投げられた時に頭から地面に突っ込むという場合もありますがあまり多くはないでしょう。しかしこの場合の怪我は半身不随など大変な怪我に繋がります。

 

 最後に、肩ブリッジの方が負担が少ない、というご意見があったのですが、実は私の場合、肩ブリッジが頸椎に響きます。とりわけ左はビンビン入ってしまいます。でも真後ろのブリッジは大丈夫なんですね。ということは、おそらく損傷の状態によってそれは変わってくるのではないか、というのが私の推測です。
 

ということで特にマスターズの方は余り無理はなさらないでください。そしてちょっとでも変だなと思ったら必ずお医者さんに見て貰ってください。