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アメリカ合衆国の重要な州の2つ目として,今回はニューヨーク州を取り上げます。

アメリカ全体の地方と州については,「アメリカ合衆国の地方と州」の記事をご覧ください。


総論

アメリカ合衆国におけるニューヨーク州の位置

<アメリカ合衆国におけるニューヨーク州の位置>


ニューヨーク州は,アメリカ合衆国の北東部,大西洋の沿岸に位置する州で,北側ではエリー湖・ナイアガラの滝・オンタリオ湖やカナダと接し,南東の端では大西洋に面している。


現在のアメリカの州のなかではGDPは第3位,人口は第4位で,上位ではあるもののトップではないが,世界最大級の都市ニューヨークシティが存在し,世界の経済・文化において重要な地位を占めている。


また,人種・言語・信仰など,いずれの面でも多様な人々が集まっていることが特徴で,アメリカの国際的・多文化な面を象徴する州だと言える。


都市・地名

ニューヨーク州拡大図

<ニューヨーク州拡大図>


ニューヨーク州の都市としては,州の南東部,ハドソン川の河口に位置し大西洋に面したニューヨークシティが圧倒的に重要で,世界史においても重要であり現在の世界でも最重要の都市となっている。このニューヨークシティの内部に,マンハッタンや自由の女神像などの有名な場所が存在する。

その他では,州の東部のサラトガは,アメリカ独立戦争の際にアメリカ軍がイギリス軍を破って戦争の転機となったサラトガの戦いが行われた場所として知られている。


地形に関するものでは,ニューヨーク州東部を流れるハドソン川は比較的重要で,沿岸にオールバニやサラトガ,河口付近にニューヨークシティなどの都市をもち,エリー湖とも運河で結ばれていて,重要な交通ルートになっている。

他に,州の北側では,五大湖のうちのエリー湖オンタリオ湖に面しており,その二つの間にあるナイアガラの滝にも接している。


歴史


ニューヨーク州やニューヨークシティの成り立ちは,17世紀のオランダの進出に始まる。

17世紀前半に北米に進出したオランダは,現在のニューヨーク州の南東部にあたるハドソン川の河口部を中心にニューネーデルラント植民地を建設し,その中心都市としてニューアムステルダムを築いた。

基本的には,このニューネーデルラント植民地が後のニューヨーク州(および周辺の州の一部),ニューアムステルダムがニューヨークシティのもとになる


その後,イギリスは1664年にニューネーデルラント植民地を占領し,第2次英蘭戦争の結果,ニューネーデルラントはイギリス領として認められた。

こうしてイギリス領になると,名称もオランダ風からイギリス風へと改められ,ニューネーデルラント植民地はニューヨーク植民地へ,ニューアムステルダムはニューヨーク(シティ)へと改称された。

イギリス領の植民地になって以降,ニューヨークシティは港を生かして貿易で発展していき,アメリカ最大の貿易港にまで発展していった。


18世紀後半のアメリカ独立戦争の時期には,1777年にニューヨーク州東部のサラトガでアメリカ側がイギリス軍に勝利し,このサラトガの戦いでの勝利はフランスのアメリカ側での参戦にもつながった。

そして,独立を果たし,憲法を制定した直後の1789~1790年には,ニューヨークシティは一時的にアメリカ合衆国の首都にもなっている。


19世紀前半には,エリー湖とつながるエリー運河が開通し,五大湖周辺の中西部の地方と結びついたこともあって,ニューヨークシティはアメリカ最大の都市へと発展していった。

また,ニューヨークシティは移民が流入する玄関口になり,ドイツ系・アイルランド系,その後は東欧・南欧など,多様な移民が到来した。


第一次世界大戦後にはアメリカの国際的地位が上昇するなか,ニューヨークシティは世界最大級の都市へと発展し,マンハッタンではエンパイヤステートビルなどの高層ビルが立ち並び,ウォール街が世界の金融の中心になるなど繁栄した。

そして,第二次世界大戦後には,アメリカが世界の覇権国家となるなかで,ニューヨークは世界の中心的都市となり,新たに設立された国際連合の本部も置かれた。


その後,アメリカ合衆国のなかでカリフォルニアやテキサスなどが台頭していったことで,ニューヨーク州はかつてのような中心的な地位は失ってきているが,現在でもニューヨークシティは世界の経済と文化の中心的な地位にあり,大きな存在感を維持している。



アメリカ合衆国の地方と州」の記事ではアメリカ合衆国全体について紹介しましたが,これから世界史の学習の上で特に重要な州を個別に取り上げて,その州の都市や歴史について説明してきます。

まず今回は,マサチューセッツ州を紹介します。


総論

アメリカ合衆国におけるマサチューセッツ州の位置

<アメリカ合衆国におけるマサチューセッツ州の位置>


マサチューセッツ州は,アメリカ合衆国北東部,ニューイングランド地方の代表的な州であり,アメリカの歴史において最重要の州の一つである。


この州は,アメリカ合衆国の形成と独立を主導し,また自由・民主主義の思想や学問・工業をリードした地域であり,合衆国の精神的な故郷としてもみられている。


都市・地名

マサチューセッツ州拡大図

<マサチューセッツ州拡大図>


代表的な都市・自治体としては,東部・大西洋沿岸のボストンが最も重要で,戦場として知られるレキシントンコンコードハーバード大学もボストンの近郊に存在する。


このほか,同じく大西洋沿岸にあるプリマスも世界史では有名な地である。


歴史


マサチューセッツ州は,イギリス13植民地のなかで早くから成立・発展した地域で,北部のニューイングランド地方では最も早く成立した植民地である。

この地域に最初に到来したのはピルグリム・ファーザーズと呼ばれるピューリタンの集団で,彼らが自由を求めて1620年にプリマスに入植してプリマス植民地を建設した。

つづいて,1629年にはマサチューセッツ植民地が建設された。この植民地では,ボストンを中心に貿易と造船業が発達した。また,1636年にハーバード大学が創立され,これはアメリカ合衆国で最古の大学となった。

プリマス植民地とマサチューセッツ植民地はもとは別の植民地だったが,1691年にプリマス植民地はマサチューセッツ植民地に併合され,この結果,プリマスはマサチューセッツ州の一部となった。


この地域は,独立戦争の初期にイギリスとの対立の主な舞台となったことで有名である。

1773年にイギリスが茶法を制定すると,反発した人々によってボストン港でボストン茶会事件が起こった。

そして,1775年には,ボストン近郊のレキシントンおよびコンコードでイギリス軍との衝突が起こり,これがアメリカ独立戦争の始まりとなった。


独立後,19世紀前半頃からマサチューセッツでは貿易や工業が発達し,アメリカ合衆国の産業革命を先導する地域となった。

また,19世紀半ばには,奴隷制をめぐる南北対立のなかで,マサチューセッツは奴隷制廃止論を積極的に主張し,奴隷制を否定する北部の中心的存在になった。


その後,20世紀に入ってからは,工業の中心の地位を失って,現在では人口の面でも経済力の面でもアメリカにおいて上位ではなくなっている。

しかし,高等教育や学問においてはトップレベルで,それを生かしてハイテク産業も発達している。そして何より,独立戦争や南北戦争の際にも示されたように,現在も自由や民主主義の精神を重んじ,アメリカ合衆国の精神面において重要な役割を果たし続けている。


世界史を学ぶうえで,アメリカ合衆国の州のうち重要なものは,位置・主要都市・関連する事件などを把握しておく必要があります。

今回,アメリカの地方と州のマップを制作したので,それも使いながら世界史の学習において重要なアメリカの地方と州を紹介します。

なお,今回はアメリカの全体を扱いますが,特に重要な州は改めて別の記事で紹介しようと思っています。


全体

アメリカ合衆国の地方と州 マップ

アメリカ合衆国の領域は,大きく分けて,①北東部・②南部・③中西部・④西部・⑤その他,という5つの地方(region)に区分することができる。さらに,その地方の内部は2~3の地区(division)に分けることもできる。

そして,それら地方あるいは地区のなかに,合計50の州が存在する。


まず,5つの地方(region)の区分を,地図を見ながら大まかに把握しておくとよい。(地方の内部の地区(division)については参考程度でよく,覚えなくてもかまわない。)

そのうえで,その地方のなかで特に重要な州を確認し,それから,必要に応じてその州に存在する都市などの地点を把握するとよいだろう。


大学受験や高校の世界史の上では,特に北東部南部に重要な州が多く集まっているが,中西部西部その他でも特定の歴史的事件との絡みで重要な州がある。

そこで,北東部南部を重点的に確認し,中西部西部その他は重要な州をピンポイントでおさえるとよいだろう。


なお,この現在の区分は,イギリスの13植民地時代の「北部(ニューイングランド)」・「中部」・「南部」という区分とは異なるので,注意しておく必要がある。

13植民地時代の「北部」・「中部」は現在の北東部に含まれており,「南部」は現在の南部の沿岸部となっている。


以下,地方ごとに特徴や重要な州を紹介していく。


北東部

アメリカ合衆国 北東部

アメリカ合衆国 北東部

北東部は,アメリカ合衆国の北東部,大西洋岸のうち北部に位置する地方である。この北東部はさらに,北東のニューイングランド,西南の中部大西洋岸の2つの地区に分けられる。


イギリス植民地時代の初期から形成されてアメリカの政治・社会・文化などをリードしてきた地方で,世界史の学習においても最重要となる地方である。


マサチューセッツニューヨークペンシルヴェニアなどがこの地方の代表的な州で,植民地時代・独立戦争期などのアメリカの初期に活躍した地域が多いが,現在でもアメリカの経済・文化の中心地となっている。


南部



南部は,アメリカ合衆国の南東部にあたる地方である。さらにこの南部は,東から順に南部大西洋岸東南中部西南中部の3地区に分けられる。なお,首都のワシントンD.C.はどの州にも属さない特別市であるが,位置としてはこの南部に存在している。


大西洋に面した南部大西洋岸の州は初期からアメリカの歴史において重要な役割を果たしたが,黒人奴隷を使用して奴隷制を擁護した地域であって現在もその影響が残っている。


大西洋岸のメリーランドヴァージニアジョージアは初期から重要な役割を果たし,フロリダテキサスも領土拡大の過程において重要である。また,黒人奴隷制を維持を主張して南北戦争で南側(アメリカ連合国)についた国は,全てこの南部に属している。


中西部

アメリカ合衆国 中西部

アメリカ合衆国 中西部

中西部は,アメリカ合衆国本土の中北部にあたる地域である。中西部はさらに,東側の東北中部と西側の西北中部の2つの地区に区分される。


高校世界史ではそれほど有名な州は多くないが,西部開拓が早くから展開された地域であり,それもあって奴隷制をめぐる南北対立に関係する州が多い。


ミズーリカンザスネブラスカは,ミズーリ協定・カンザス・ネブラスカ法などで,いずれも奴隷制をめぐる南北の対立の焦点となった地域である。


西部

アメリカ合衆国 西部

アメリカ合衆国 西部

西部は,文字通りアメリカの西部,太平洋側にあたる地域である。太平洋に近い西側の太平洋岸と,内陸寄りで山岳地帯の多い山岳部の2つの地区に分かれる。


アメリカ人が西部開拓の最後に到達した地域で,メキシコやアジアとの関わりも強い。高校世界史では有名な州は少ないが,わずかながら重要な州は存在する。


何といっても一番重要なのはカリフォルニアで,メキシコから獲得したこと,ゴールドラッシュが起こったこと,自由州・奴隷州をめぐる対立が起こったことなど,中国・日本などからの移民が到来したことなど,世界史と大きく関わり,現代でも映画やIT産業の世界的中心として有名である。このほか,ニューメキシコもカリフォルニアと同じくメキシコから獲得したことを知っておくとよい。


その他

アメリカ合衆国 アラスカ

アメリカ合衆国 ハワイ

アメリカ合衆国の本土以外の場所に存在する州としては,アラスカハワイがある。現在のアメリカの行政上はこれらも西部の一部として扱われることが多いようだが,世界史の学習のうえでは他の地方とは異なる特別な州として見た方がよいだろう。


アラスカ・ハワイは,いずれもアメリカの領土拡大の文脈で重要である。また,もちろん,ハワイは太平洋戦争においても重要な舞台となった。