日本はワクチンの後進国
日本の予防接種は、先進国と言われている国の中では、最も遅れています。
他の国よりも接種するワクチンの種類も少なく接種のし方も異なります。他の国では複数のワクチンを一度に接種する同時接種が当たり前ですが、日本では別々に接種しています(過去のブログ記事を参照してください)
米国のワクチンスケジュール(2005年12月現在)を紹介します。
多少州によって異なりますが、B型肝炎(HepB、新生児期・4か月)・三種混合(DTaP、 2・4・6か月 )・インフルエンザb菌(Hib、2・4・6か月)・ポリオ(IPV、米国など欧米では不活化ワクチンの注射、2・4か月)・肺炎球菌(2・4・6か月)の5種類を接種します。これらのワクチンは別々ではなく同時に接種します(特に4か月では5種類一度に)。12~18か月に麻疹・風疹・おたふくかぜ混合(MMR)1回目、DTaP追加、Hib追加(あるいはDTaP/Hib混合で追加)、A型肝炎を2回、4~6歳でDTaP追加、MMR2回目、IPV追加、11~12歳までに髄膜炎菌を、また高校入学前までには必ず水痘・MMRは済ませておくことになっています。
中国や韓国でもほぼ同じようなスケジュールです。
Hibワクチンは日本でもようやく2006年秋に認可されましたが、まだ予防接種のスケジュールに組み込まれていません。現在Hibワクチンを接種していないのは、中央アフリカの一部の国々、中東からインド西部のいくつかの国、アジアでは北朝鮮と日本くらいで、先進諸国をはじめ世界中の多くの国で実施しています。
おたふくかぜのワクチンが定期接種のスケジュールに入っていないのは先進国では日本だけです。
乳児期から幼児期にかけて予防接種をいろいろとしなければならないのですが、日本以外の国では複数のワクチンを同時に行ってスケジュールを組んでいます。ですから、米国などのように、三種混合を2・4・6か月にする時に併せて別のワクチン(ポリオなど)をすれば、医療機関へ行く回数が減ります。1歳までに米国は3回で済むのに対して、日本は、BCG1回、ポリオ2回、三種混合3回の5回行かねばなりません(2年前まではBCGの前にツベルクリン反応があったのでそれを入れると6回だった)。しかも、米国よりもワクチンの種類が少ないにもかかわらず回数が多いのです。
日本でも「予防接種ガイドライン(2007年3月改訂版)」には『あらかじめ混合されていない2種以上のワクチンについて、医師が特に必要と認めた場合には、同時に接種を行うことができる』と明記されています。しかし、実際には同時接種は通常は行われておらず、海外への転勤や留学が決まっていて限られた時間内に多くの接種を受けたいといった希望がある時に考慮されるだけにとどまっています(希望があれば僕は積極的に同時接種を実施しています)。
将来的には(といっても10年以上先?)日本でもポリオ生ワクチンは不活化ワクチンの注射(IPV)になり、同時接種で、BCG・Hib・DPT・IPVを3か月に、Hib・DPT・IPVを5・7か月に同時接種で行うことになるだろうと思います。
日本ではワクチンの種類がこのように他国に比べて少ないのに、なかなか接種率が上がりません。小学校の就学前健診に行くと、年長児できちんと予防接種の終わっていない人が意外と多く、中にはポリオ以外は何もしていないという子どもを見かけることがあります。
前にも述べましたが、米国ではワクチンが全て終了していない子どもの就学は拒否されます。今でも米国への留学希望者はワクチン接種歴が事前調査され、麻疹や風疹ワクチンの1回接種の場合は抗体検査の結果報告と抗体の低い場合は追加接種を、またB型肝炎ワクチンが全員に要求されます。
ワクチンは一人ひとりの個人的な予防だけではなく、社会全体での予防という考えがなければなりません。そうでなければ日本から麻疹などの感染症はなかなか排除されないのです。