昨日は、上野の国立西洋美術館の建物ツアーに参加してきました。
こちらの建物は、アジア(インドを除く)に唯一残るコルビジェの建物。
ここも、これまでに、何度も訪れた美術館なんですが、建物自体を
じっくり見るのは初めて!

用事があって、まいみぃちゃんと同じ日に行けなかったので、
今回は一人で参加してみました☆

国立西洋美術館は、第一次大戦で、造船所で財をなした、
松方幸次郎氏が4年程の間に、数百億円かけて集めた1万点もの
コレクションが元になっています。

ですが、第一次大戦後にその川崎造船が経営悪化した時に、
コレクションの一部が売却されたり、第二次大戦が始まって、
ロンドンの倉庫に保管されていた絵が全て焼失してしまったり、
戦時中に、フランスに保管されていたコレクションは、敵国財産として
フランス政府に差し押さえられたり・・・

戦後、フランス政府から、「返還」ではなく「寄贈」される時に、
コレクションを展示する施設をつくること。設計は、フランス人の
設計によることなどの条件がついたのだそうです。

そこで白羽の矢がたったのが、スイス人でフランスに帰化していた
ル・コルビジェ氏。

ただ、コルビジェ氏は、グランドデザインを描く基本設計を行い、
実際の設計は、その土地の風土を知る弟子たちに任せるという
方法をとっていたのに、それを知らなかった外務省は、設計費の
全額を支払ってしまい、弟子の前川國男氏、坂倉準三氏、
吉坂隆正氏らが無償で、設計を行ったというエピソードが、
私の持っている本では紹介されています。

前置きが長~くなりました。 (→o←)ゞ

 

 

 



コルビジェ氏はデザイン重視の方だったので、のっぺらーとした表面は
ありえなかったらしく、美術館の外壁は、小さな石を敷き詰めたパネルに
なっています。

こちらは、高知県桂浜の小石が使われていたそうですが、後の修復では
その小石が手に入らず苦労したそうです。これは、乾燥しているとグレー、
雨にぬれると青みがでるという小石なのだとか。
写真を撮ったのは、雨上がりだったので、色々な色が見えますね。

 

 

 



こちらの建物で、特徴的なのは、この天窓です。

 

コルビジェ氏は、設計のために日本に訪れたのは1回だけ。
その時に、東京から京都へプロペラ機で訪れたそうで、
設計用紙のあちこちに、富士山の絵が描かれていたため、
富士山をイメージして、三角を多用したデザインになっているのでは?
と言われているそうです。

 

 

 



コルビジェ氏は、自然光が作る、日々の違いや時間毎に変る陰影を
楽しむというデザインにしたそうなのですが、日本人の国民性は、
「いつ行っても同じように見えることを求める」ため、今は、天窓の下に
大きなライトが設置されています。


ル・コルビジェ氏と言えば、モデュロールを使ってデザインしたことで
有名です。これは、183cmの身長の人をモデルに、黄金比に近い比率を
使って、建物が設計されています。

 

 

 



こちらの階段の幅は70cm。 元々のデザインは、手すりもなく、
日本の建築基準法上は、階段とは認められないため、
使用できなくなっているものです。

 

 

 



(こちらの常設展は、個人利用で、フラッシュと三脚を使わなければ、
美術館内の写真を撮ることもできる、日本では貴重な美術館です。)

左の天井が低いエリアは、モデュロールで1単位(226cm)、
その右側の天井が高いエリアは、モデュロールで2単位になっています。

この低い天井の方には、小さな絵を飾り、天井が高い方には、
大きな絵を飾って、その特徴を活かしているそうです。


本来、コルビジェは、無限成長美術館として、今の真四角の美術館を、
外側にぐるぐると取り囲む、かたつむりのような形に増設して行くことを
イメージしていたそうです。

ぐるぐる・・・というと、1回だけ行ったことのある、グッゲンハイム美術館
しか思い浮かびませんが。。。 

結局、土地が用意できず、その拡張はできなかったので、
弟子の前川國男氏の設計で隣に新館が建っています。

その新館からの中庭の眺め・・・

 

 

さすが、師匠と自分のデザインをうまく調和させておられますね。

今は、耐震補強工事に入ってしまっていますが、お向かいに建つ
前川國男氏の設計による東京文化会館は、コルビジェ氏のデザインの
一部を窓で繰り返したり、国立西洋美術館と東京文化会館の高さを
揃えて、師匠へのオマージュとしたのだそうです。

 



コルビジェと言えば、椅子をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんね。
ロビーの一角に、その座り心地を体感できるよう、椅子がいくつか置かれてます。
(沢山の方が体感中で、これしか撮れませんでしたが。。。)
すっごく座り心地がいいので、こちらも是非、体験してみてください。


最後に、国立西洋美術館を支える免震装置の一部を見学させてもらいました。
阪神淡路大震災の時、関西の美術館で展示作品がかなりダメージを受け、
全国の美術館で、耐震、免震が急がれたのだそうです。

そのおかげで、東日本大震災の時、美術品は無傷だったそうです。
ただ、その免震装置の周りの地面は、四方に隆起してしまったのだとか。
地震国で美術品を守っていくというのは、大変な事なんですね。

すっごく長くなってしまいましたが、とても楽しく勉強になる1日でした。
機会がありましたら、みなさまも、是非、足を運んでみてくださいませ。