Esso Trinidad Steelband | WONDERFUL ROCK

Esso Trinidad Steelband

text by Kaorak

■めかくしジュークボックス〈22〉答えあわせ

オリンピックの開会式を見ていると、つくづく自分の無知を痛感させられる。知らない国名が次々と出てくるし、どこにあるのかと聞かれても、ちゃんと答えられる国の方が少ないのだから、我ながらひどいもんだと思う。

たとえば、カリブ諸国。地図を見て指させるのはバハマ、キューバ、ジャマイカあたりまでで、ハイチやドミニカになるともう怪しい。ブエルトリコ、英領ヴァージン諸島なんていうのも名前はよく聞くが、どこにあるかわからない。

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何より音楽ファンとして恥ずかしいのは、今の今までトリニダード&トバゴの場所を知らなかったことである。だって、カリプソとスティールパンを生んだ国ですよ。

ヴァン・ダイク・パークスの《ディスカバー・アメリカ》というアルバムで初めてカリプソやスティールパンの音楽に触れ、細野さんの《トロピカル・ダンディ》や《泰安洋行》に夢中になった日々からはや三十数年。今頃になってトリニダード島が南米ベネズエラの海岸からわずか15Kmの沖合にあると知って、へえ、そうだったのかなんて言っているようじゃ、話にならないよなぁ(笑)。

さて、恥をさらすのはこのくらいにして、正解を発表しておこう。

大編成のスティールパンで〈いとしのセシリア〉を奏でているのはエッソ・トリニダード・スティールバンド。1940年代初頭、トリニダードでスティールパンという楽器が発明された頃から活動していたというから、大変に由緒正しき楽団ということになる。

1971年にリリースされたこのアルバムは、ヴァン・ダイク・パークスが《ディスカバー・アメリカ》に先がけてプロデュースした作品ということで、その手のロック・ファンの間では「幻の名盤」とされてきた逸品。'98年にワーナーミュージック・ジャパンが「世界初CD化」に成功し、入手しやすくなったのは誠にめでたいことであった。


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エッソ・トリニダード・スティール・バンド

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映像で見ていただいたように、スティールパンはドラム缶を輪切りにして、表面を叩き、音程をつけて楽器にする。そうした発明がなされるに至ったトリニダード&トバゴの地理的・歴史的背景を調べると、それはそれで大変興味深いのだが、わかったようなことを書くのはやめておこう。何しろ正確な場所さえ知らなかったヤツだから(笑)。

例によって何曲か聞けるようにしておくので、お時間のあるときにでも、妙なるドラム缶の調べに耳を傾けていただければ本望である。

1曲目の〈I Want You Back〉は、ごぞんじジャクソン5のカバー。'90年代にクラブDJに「再発見」されて流行ったから、聞いたことのある方もいらっしゃるのではなかろうか。もう1曲はヴァン・ダイク・パークスの〈Come To The Sunshine〉。ハーパース・ビザールのカバーでも知られている。どちらも聞いていると、どこか遠い場所に連れていかれるような、そんな気持ちよさがあると思うのだがどうだろう。