ウエルカム赤ちゃん(1)こんな街なら産みたい  2014/8/18付日本経済新聞 朝刊 | wombプロジェクト(うーむ・ぷろじぇくと)

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いつか母になりたいあなたへ
『卵子の老化』をご存知でしょうか?自然妊娠率は、35歳で18%、40歳で5%と言われています。

もしもこの数字を知っていたなら、もっと早く子供を持とうと思ったのに、、、

☆正しい知識で、女性に少しでも若く子供を産んでほしい☆


 「この会議が50年先、100年先の京都の未来を握る。タブーを恐れない議論をしてほしい」。7月17日、京都府知事の山田啓二(60)は、京都市で開いた「京都少子化対策総合戦略会議」の冒頭、こうあいさつした。



 山田は前日まで開かれた全国知事会議で「日本は死に至る病にかかっている」と危機感をあらわにし、会長として少子化非常事態宣言をまとめたばかり。実はおひざ元の府の状況も深刻だ。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推定される子の数)は2013年で1.26。都道府県別で東京都に次ぎワースト2が定位置になっている。

 5年前に比べ出生数は2千人近く減った。6月には補正予算で約11億円を少子化対策に投入。「5年で出生数を2千人増やす」と目標を掲げた。

 赤ちゃんが産みにくくなった日本。13年の出生率は1.43。人口維持に必要な水準2.07は遠い。現状のままでは日本の総人口は60年に9千万人を割り込む。危機感を抱いた政府は6月下旬に閣議決定した骨太方針で「50年後に人口1億人を維持する」と明記し、抜本的対策に乗り出す。


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 事態が深刻なのは都市部への人口流出が続く地方の自治体だ。熊本県山鹿市は人口約5万5千人でありながら毎年500人程度減っている。背景に未婚率の上昇があるとみて、市は11年に結婚支援に踏み出した。出会いを求める男女を登録しボランティアが仲介する。

 「皆さんが結婚し、子宝に恵まれますように」。7月4日、恋愛成就のパワースポットといわれる市内の七夕神社に、ボランティア約10人が訪れた。「登録者は現在130人。これまで15人が結婚し、13組が交際中。今後は合コンも主催し、出会う機会をさらに増やす」(地域生活課)

 全国1800の市区町村の半数は消滅する可能性がある――。有識者でつくる日本創成会議がまとめた人口予測に衝撃が広がっている。出生を主に担う若年女性人口(20~39歳)が10~40年に5割以上減少すると出生率が回復しても消滅は免れないと会議は指摘する。

 状況打開のモデルはある。石川県川北町は若年女性人口の予測増加率が15.8%と全国一。出生率も1.62(08~12年平均)と国を上回る。人口は6295人と1980年の町制施行以来48%増えた。背景には思い切った子育て支援策がある。

 保育料は0歳が月額2万円、1~2歳が1万6千円の定額。00年度からは不妊症治療費の7割を助成(年間70万円を限度)する制度を全国に先駆け導入した。「住むなら川北、と言ってくれる人は多い」と町長の前哲雄(60)は胸を張る。町民支援の質を保ち、約6300人の人口を7000人まで増やすのが目標だ。

 秋田県大潟村は増加率15.2%で川北町に次ぎ2位。13年の出生率は1.43だが、集約農業による県内トップの平均所得が若者を引き付ける。


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 8月初め、野菜用ハウスで雑草取りに精を出す若い夫婦の姿があった。21ヘクタールの農地でコメと野菜を作る松橋ファームの3代目、松橋拓郎(27)と妻の明子(26)だ。

 拓郎は教師を目指し東京の大学に進学。だが都会暮らしで農業の魅力に気付き、大学で知り合った明子を伴い、村に戻り家業を継いだ。ここなら安心して子どもを産める。明子も目を輝かせる。経済的な安定に加え、地域で支え合う土壌が残っているからだ。

 日本創成会議の座長、増田寛也(62)は「若者に魅力ある地域が増えれば少子化の歯止めになる」と強調する。それには企業の協力も不可欠だ。

 生活用品製造卸のアイリスオーヤマ(仙台市)が宮城県角田市に置く製造拠点。8月上旬のある日、ホーム開発部の前田理江(36)は午前8時に出勤した。午前9時の始業を1時間早める時差出勤制度を利用。その分、退社を1時間繰り上げる。

 7歳と2歳の子を持つ。毎朝5時に起床し、洗濯や弁当作りを済ませて出社する。子を送り出すのは夫で、終業時間の早い前田が迎えに行く。「柔軟な働き方ができるので子育てしやすい」

 同社はここ数年、半日有休など子育てしやすい環境づくりに力を入れてきた。「毎日満員電車に乗り、狭いオフィスで働くのではよいアイデアは生まれない」。社長の大山健太郎(69)はゆとりある地方暮らしこそ、仕事と子育て両立の基盤と強調する。

(敬称略)



 子は持ちたいが持てない――。少子化の根底には、出産をためらわせる様々な要因が横たわる。理想と現実のギャップは埋まるのか。



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