アンリ・ルソーはご存知のように、はじめから画家を目指して、
画家になるコースを歩いていたひとではありません。
税官吏を経て、40歳から画家になったのでした。
でもそれまでの人生のなかで自身の世界を築いていたんだろうなあと
思います。
美術展の最後の部屋の壁一面を覆う、
巨大な一枚の絵、その中央の白い服の女の子。
一瞬、「もののけ姫」がよぎり、
次に「長くつしたのピッピ」が浮かびました。幼年向けのイラストの方のピッピです。
「戦争」
黒い馬(でも顔がアリクイに酷似)にまたがって、ではなく、
単独で宙を翔る少女は正義の剣を掲げています。
その足元には、裸で横たわる人々の死屍累々。
白い死体に群がる黒いカラス。
背景は透明感のある青い空と薔薇色の雲で
明るいのですが、
凄絶な闘いのあとにあらわれたこの少女は、
いわば阿修羅なのでしょう。
この絵はあまりにも大きいためか、
それほど人だかりもしていなかったので、じっくり見ることができました。
(小さい絵で前に人だかりができていると、悲観してしまいます)
「蛇使いの女」
こちらはそれほど大きくない絵でしたが、
独特の雰囲気があって惹かれました。
蛇使いの女は体に蛇を絡ませていますが、
画面のいたるところにくねくねとうねる大蛇が描かれ、
アンリ・ルソーの絵らしい、南国の奇怪な植物が
だまし絵のようにも見えます。
私は写実的な絵があまりすきではなくて、
幻想的な絵や、そこに画家の世界が広がっているような絵がすきです。
とはいえ、抽象画や現代絵画は苦手で、けっこうオーソドックスな絵が
すきみたいだなあ…ということが最近になってわかってきました(笑)。