厄除け詩集から 秋2井伏鱒二の詩が好きです。 月がうつくしい季節になりましたので。 逸 題 今宵は仲秋明月 初恋を偲ぶ夜 われら万障くりあはせ よしの屋で独り酒をのむ 春さん蛸のぶつ切りをくれえ それも塩でくれえ 酒はあついのがよい それから枝豆を一皿 ああ 蛸のぶつ切りは臍みたいだ われら先づ腰かけに坐りなほし 静かに酒をつぐ 枝豆から湯気が立つ 今宵は仲秋明月 初恋を偲ぶ夜 われら万障くりあはせ よしの屋で独り酒をのむ (新橋よしの屋にて)