【独偏ベストテン 30-1】 吉田拓郎 作曲シングル作品 (11~20位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 読者の皆様の温かい応援のお蔭で、独偏ベストテンもついに30回目を迎えましたm(u_u)mわ~、ぱちぱちぱち 記念すべき今回は、コンポーザー別の独偏シングルベスト10として、吉田拓郎を取り上げてみましょう。ちなみに、作曲家編ということでは、加藤和彦、小室哲哉、川口真、井上ヨシマサ、網倉一也、坂田晃一、細野晴臣、杉真理に続いて9人目になります


 吉田拓郎の音楽活動は、1966年頃に始めたボブ・ディラン風の弾き語りと、その翌年に結成したダウンタウンズというR&Bをベースとしたロックバンドの“二足のワラジ”でスタートしました
。コンポーザーとしては、’70年代初頭からフォーク系アーティスト向けに曲を書いていましたが、1973年には由紀さおりに歌謡曲としてのオリジナル作品「ルーム・ライト」を提供。これが、ニューミュージック系シンガーソングライターが歌謡曲歌手に作品を提供した嚆矢(最初)とされています。1974年に森進一に書き下ろした「襟裳岬」が大ヒットしてからは、’90年代までの長い期間にわたって、幅広い世代(アイドルからベテラン)のアーティスト向けに、ジャンルの垣根を超えたオリジナル作品を大量に書いていることは、皆さんもすでにご存知ですよね

 コンポーザーとしての吉田拓郎の最大の特徴は、いわゆる「俺節」で歌い手を染め上げる典型的なタイプだという点にあると思います(他の例としては桑田佳祐小林武史など。ミュージシャン出身者に多い
)。そのオリジナリティ豊かな独特のメロディが、拓郎の”専売特許”として世間一般から歓迎されている状況は、もう彼の非凡な才能によるものとしか言いようがないですよねぇ

 このタイプのコンポーザーに曲を依頼するということは、その強烈な「アク」の影響でヘタすると歌い手の個性(持ち味)が吹っ飛ぶ結果につながるリスクがあると同時に、確実なセールス(あわよくば大ヒット)が期待できるというメリットもあり、彼らを起用するスタッフ側としては、一種の賭けに出るくらいの覚悟が必要となります。・・・この辺の駆け引きが、端から見ているとなかなか見もので面白いところなんですよねぇ


 吉田拓郎が紡ぎ出すクセのあるメロディ(あるいはコード進行)は、食べ物に喩えるなら、まぁほとんどゴルゴンゾーラチーズみたいなもの
。カビ臭いニオイが強烈だけど熱狂的なファンも多いというアレですね。・・・私そりゃもう大好物ですよ~。鼻がもげそうなくらいクサ~いところが特にね。だもんで、今回の独偏企画でも、10作品に絞るなんて全然ムリっ(←嬉しい悲鳴) そんなこんなで、今回はベスト20でいきたいと思います。記事は、11~20位、1~10位、資料編の全3回にわたってお送りする予定で~す。

 独偏ベスト20を決めるに当たっては、これまでと同様、オリコンに記録が残っているシングル作品(1968年~)をすべてピックアップした後に、オリコンランク外のシングル作品を可能な限り調べて追加。吉田拓郎が他人に提供した98作のシングル曲(A面のみ)を対象として、私の独断と偏見によって上位20曲を選定しました。今回も、1アーティストにつき1作品、また、カバーなどの同一作品については1アーティストのみをエントリーするという制限を付けています


 ・・・さてさて、また長くならないうちに(もう充分長いか)結果の発表に移りましょうね。今回は1回分の記事で10曲も紹介しないといけないので、1曲ごとのコメントはいつもより控えめにしてお送りしたいと思います。それでは20位から11位まで、一気にどうぞ~



第20位 僕の大好きな場所 (高木ブー) 【オススメ度★★】
作詞:篠原ともえ、作曲:吉田拓郎、編曲:勝又隆一
[1999.7.1発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 この曲では、聴く者を次から次へと拓郎ワールドの虜(とりこ)にしてしまう蟻地獄のような拓郎節 (←もちろん誉めてます)が、どういうわけかまったく登場しないという、ある意味“異色作”なんですよねぇ。だけど、ハワイアンテイスト溢れる心地良いヒーリングソングに仕上がっていて、ブーちゃんの持ち味がきちんと生かされているところが好きなんだな。拓郎作品の作曲者当てクイズをしたら、この作品に限っては不正解者続出に違いありません



第19位 さよならロッキー (カーニバル) 【オススメ度★★】

作詞:竜真知子、作曲:吉田拓郎、編曲:船山基紀
[1978.10.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 当時何気なく流していたラジオで聴いて気に入った作品。拓郎作品としてはかなりカッコイイ感じの曲ですよねイントロからAメロあたりはあまり拓郎っぽくないのですが、Bメロからサビにかけて登場する拓郎節が“いかにも”な感じで思わずニヤリ。ちなみに、歌っている“カーニバル”なるアーティストに関するリアルタイムの記憶はまったくありません・・・ 私がCD化を熱望してやまない作品(たぶん出てないはず)の一つなのです



第18位 恋かくれんぼ (富田靖子) 【オススメ度★★】

作詞:松井五郎、作曲:入江剣、編曲:白井良明
[1990.11.21発売; オリコン最高位86位; 売り上げ枚数1.0万枚]


 テレビアニメ「三丁目の夕日」のオープニングテーマに相応しく、昭和っぽいテイストに溢れた佳曲です。イントロのコード進行や、冒頭の ♪ 風は木枯らし かくれんぼ いつも泣き虫 女の娘(こ)~ あたりを一度聴いただけで、誰が作者かバレバレなのはご愛敬といったところでしょうか・・・。クレジットをいくらペンネーム(入江剣)にしても、これじゃ“かくれんぼ”自体が成立してませ~ん。まぁ、吉田拓郎も’90年代に入ると他人へのオリジナル提供作品がグッと減りましたから、拓郎ファンにとっては嬉しい作品なんじゃないかと思いますね



第17位 六月の花嫁 (倉沢淳美) 【オススメ度★★★】

作詞:森雪之丞、作曲:吉田拓郎、編曲:武部聡志
[1985.5.29発売; オリコン最高位28位; 売り上げ枚数4.2万枚]


 拓郎作品にしては珍しく、お得意の哀愁を誘うコードが含まれておらず、しかもアレンジが非常に華やかな典型的なアイドルPOPSです彼の作品の中では「聖・少女」(西城秀樹)と並んで、“爽やか度数”がおそらく一番高いのではないでしょうか。”かなえちゃん”の歌唱は、特に ♪ うふっふ~ のあたりの歌い方なんかは、ほとんどお約束のような“たどたどしさ”だったりするワケですが、この手のアイドル歌謡はあまり歌の上手いコにはむしろ似合わないってことで、まぁよろしいんじゃないでしょうか



第16位 僕 笑っちゃいます (風見慎吾) 【オススメ度★★★】

作詞:欽ちゃんバンド+森雪之丞、作曲:吉田拓郎、編曲:後藤次利
[1983.5.21発売; オリコン最高位6位; 売り上げ枚数33.0万枚]


 風見慎吾といえば、ブレイクダンスを日本で初めて流行らせた功績が光りますが、歌の方はイマイチでしたねぇ(なぬ、かなえちゃんに対する態度と随分と違うじゃないかって いや、アハハハ・・・)。

 この曲、歌詞をちゃんと聴いてみると、男側のマヌケっぷりがあんまり笑えない“失恋ソング”
なんですよね。慎吾クンってば、軽~い感じで歌うもんだから、悲壮感がさっぱり伝わってこなかったっす曲の方はどこを切っても拓郎節全開ながら、しっかりとメリハリの効いた軽快な歌謡ポップスに仕上がっていて、大ヒットしたのも「なるほど納得」といった感じがしますネ



第15位 たどりついたらいつも雨ふり (ザ・モップス) 【オススメ度★★★】

作詞:吉田拓郎、作曲:吉田拓郎、編曲:モップス
[1972.7.5発売; オリコン最高位26位; 売り上げ枚数14.4万枚]


 モップスの代表曲。以前取り上げた「お前のすべてを」は全編セリフのみの“超”異色作でしたが、こちらは一般ウケしそうな良質なメッセージソングに仕上がってます。私の知る限り、大抵の拓郎作品では音が大きく飛ぶことがあまりないように思うのですが、この曲では、♪ それでもやっぱり考えてしまう~  の「も」のところで珍しく音が跳ね上がってます。セルフカバーでは拓郎本人も歌いにくそうにしている箇所なので、「なんでまたこんな面倒なメロディにしたの・・・という疑問は拭えません

 そういえば、吉田拓郎がかの有名な「テレビ出演拒否」宣言をしたのは、この作品がリリースされた頃でしたっけねぇ
。彼がそんなことを言い出したのは、TBSの歌番組に出演した際に「新人なのに生意気だ」とかいう理由で布施明と大ゲンカになったのがきっかけだったとか。イヤァ、「LOVE LOVEあいしてる」でKinki Kidsと共演するときに見せた、物わかり良さげなオヤジっぷりからはとても想像できない“トンガリぶり”じゃあーりませんか。“コワい者知らず”の若さにかんぱ~いっ



第14位 メランコリー (梓みちよ) 【オススメ度★★★】

作詞:喜多条忠、作曲:吉田拓郎、編曲:萩田光雄
[1976.9.21発売; オリコン最高位11位; 売り上げ枚数31.3万枚]


 この「メランコリー」は、職業作曲家でもないのにアイドル(浅田美代子、キャンディーズなど)からベテラン(由紀さおり、梓みちよなど)まで幅広いアーティストに作品を提供してしまう拓郎の偉大さを端的に表す一作だと思います。 ♪ メランコリー メランコリー の背中がゾクゾクするような節回しから、シレッと”拓郎”節に帰着させるメロディ展開があまりにお見事で思わずため息が出てしまうのは私だけでしょうか・・・梓みちよの意識的に「ぬいた」歌い方も絶妙で、さすがベテランといった感じがします



第13位 青春試考 (中村雅俊) 【オススメ度★★★】

作詞:松本隆、作曲:吉田拓郎、編曲:馬飼野康二
[1978.5.10発売; オリコン最高位55位; 売り上げ枚数3.1万枚]


 吉田拓郎が中村雅俊に提供したシングル作品としては、もう一作、大ヒットした「いつか街で会ったなら」(1975.5.1発売、オリコン最高位6位、売り上げ枚数42.3万枚)があるのですが、私はこちらの方が好き
。この曲が主題歌になったドラマ「青春ド真中!」も欠かさず見ていただけに、売り上げ枚数がたった3万枚というのはかなり意外でした・・・

 ♪ 水すましみたいにすいすいと 東京の空を渡るヤツもいる~ という歌詞から想像されるように、ちょっとエエ加減でバンカラな拓郎のイメージが、青春ドラマ中の中村雅俊のイメージにピッタリ
でしたね。 ♪ だけどぶきっちょに肩寄せて 明日への道を探すのもいいさ~ あたりのコード進行は、思わず脳内からドーパミンが出まくるポイントで、拓郎ファンにとっちゃ嬉しくてたまらんです~



第12位 東京メルヘン (木之内みどり) 【オススメ度★★★】
作詞:松本隆、作曲:吉田拓郎、編曲:石川鷹彦
[1976.11.25発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 1984年に松尾久美子もカバーしている「東京メルヘン」が12位にランクイン。ハッキリ言って二人とも歌は下手っぴですが、情感がこもっているのは木之内バージョンの方 瀬尾一三センセによる松尾バージョンのアレンジは、ちょっとシンセドラムが前面に出過ぎの感あり・・・かな「東京メルヘン」の織りなす世界はもっと地味なくらいが合っていると思うので、ここはオリジナルの方に軍配ってこと「ポッケ」、「おとぎ話」あたりのフレーズの選び方は、いかにも松本隆センセっぽいですよね~



第11位 我が良き友よ (かまやつひろし) 【オススメ度★★★】

作詞:吉田拓郎、作曲:吉田拓郎、編曲:瀬尾一三
[1975.2.5発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数70.1万枚]


 もし世の中に“拓郎濃度”(なんじゃそりゃ
)という指標があったとしたら、この作品は吉田拓郎が自分以外のアーティストに提供した作品の中で、間違いなく最高レベルの拓郎濃度と言っていいのでは・・・ 詞に登場する連中のまとう雰囲気といい、メロディの拓郎くささといい、曲の隅から隅まで拓郎だらけでドロドロもうメーター振り切ってますから

 この作品を聴くたびに私の頭を去来するのは、「昭和は遠くなりにけり」という言い回しですねぇ
。“時代遅れ”と言ってしまえば確かにその通りなのかも知れませんが、私の中にはいくつになっても、この作品に描かれた連中の生きざまとか美学に憧れる想いが消えることはないのです・・・



 ・・・さて、今回はここまでとしましょう
。次回の記事は、【独偏ベストテン 30-2】 吉田拓郎 作曲シングル作品 (1~10位) と銘打って、いよいよ上位10曲の発表です 皆さん引き続きお付き合い下さいね~