【お薦めシングルレビュー 23】 シンプル・イズ・ベストのお手本のような爽やかアイドルポップス! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 現在私は、MD(←すでに化石みたいな機械だからって、「それってなぁに・・・」なんつー方はさすがにいないですよね)のメディアに、お気に入りの歌謡曲を編集してぶち込んだ”オリジナルコレクション”を通勤中に愛用しています(何しろ片道1時間半ですからね。とにかくヒマなんですよ・・・

 私の場合、コレクションのほとんどはCD音源から作るんですが、中に1枚だけ、MDの出始めの頃('90年代初めくらいだから、私が20代後半の頃ですね
)に、シングルレコードから作ったコレクションがありまして、これが、つい先日ウチの押し入れの奥から発掘されました。久しぶりに聴いてみたら、これがまたもう、ネッ(←さっぱり意味不明)。

 私は、レコードが主流だった時代に購入した音源がCD化されたら(買ってよっぽど後悔したものじゃない限り)再購入することにしてるもんで、”件(くだん)のコレクション”は、「90年初頭の段階でCD化されていなかったお気に入りマイナー女性アイドルポップス」のオンパレードになってしまったというわけです・・・

 一体どんな曲が入ってるのか、ちょっと書き出してみましょうか。えっ別にいいって まぁそんなイヂワルなこと言わないで、見ていってやって下さいよぉ。・・・って言ってるそばからさっそく書いちゃおう

「キャラメル・ラブ」(松本明子、1983年)
「夏に フレッシュ。」(渡辺千秋、1984年)
「シャンプー」(中島はるみ、1981年)
「ティーンエンジ・ソルジャー」(中村容子、1984年)
「吐息まじりに恋をして」(井森美幸、1985年)
「処女飛行」(川島恵、1982年
「いちごの片想い」(岩井小百合、1983年)
「スタア」(甲斐智枝美、1980年)
「風とブーケのセレナーデ」(秋本理央、1985年)

「チェリーガーデン」(木元ゆうこ、1983年)
「虹いろの瞳」(新井薫子、1982年)
「3秒体験」(山口由佳乃、1984年
「セプテンバー・クィーン」(若林加奈、1985年)
「Bye, Bye, September」(原真祐美、1983年)

「恋人達の明日」(白石まるみ、1983年)
「土曜日のシンデレラ」(北原佐和子、1982年)
「恋人白書」(渡辺桂子、1985年)
「Summer Breeze」(横田早苗、1983年)

 んまぁ見事に、1980年から1985年までにリリースされた”日の目を見ることなく埋もれてしまった名曲ばかりじゃありませんか・・・ リリース時期に偏りがあるのは、私のお気に入りの曲が多い時期だってこともあるのですが、CDが出始めて世間に普及する”直前の数年間”にリリースされた作品はCD化が後回しにされちゃったってことも結構大きな理由の一つだったりしますね

 
ま、そんなこたさておき、その後約20年が経過して、嬉しいことに過去のレコード音源も次々とCD化されているわけですよ。上に挙げた作品群も、着々とマイCDコレクションに加わってきて、現時点でCD化されていないものは、ついにたった2作品のみとなりました。そのうちの一方である「虹いろの瞳」は昨年、「芽瑠璃堂」のスタッフの方がCD化にご尽力下さったのですが、権利関係の問題がらみでハードルが高かったみたいで、残念ながらCD化がほぼ絶望ってことになっています(ご尽力下さったスタッフの皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m)

 さてっと。相変わらず長い前フリでしたが、今回レビューするのは、そのもう一方の作品ですこれがとびっきりの名曲であるにもかかわらず、ほとんど全くと言っていいくらい世間に知られていない作品でしてねぇ。コレなんですけど()。


「処女飛行」(川島恵)
作詞:売野雅勇、作曲:大野克夫、編曲:大野克夫

[1982.10.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★★]

 

 

 

 
 やぁ、久しぶりに手放しで「オススメ度」に★5つ付けられるアイドルポップスの登場です川島恵(メグ)は、いわゆる「花の82年組」の一人としてデビューしました。同期にはセールス面で彼女よりも数字を残しているメンツが沢山いるのですが、こと「歌唱力」の点では、中森明菜つちやかおり(フックンの奥さんですな)くらいしかメグと張り合えるアイドルはいないでしょう。いや、”アキナっちゃん”はメグとは守備範囲が違うので、「どっちが上手いか」を論じてもきっとラチ明きませんね。一方、つちやかおりの歌の上手さはどちらかと言えば「”女優”的な表現力」の方にあるので、良質なポップスの歌い手を切望する私としては、やっぱりメグの方に軍配を挙げたいなぁってことで

 いやはや、当時からそれほど歌唱力に定評のある逸材だったメグなのに、結局ヒットには恵まれずにソロシングル4枚とオリジナルアルバム1枚をリリースしてフェイドアウト
。その4年後に、さいたまんぞうとのデュエット(いわゆる企画物です)でお茶を濁してそのまま引退だなんて、つくづく勿体ないことをしたなぁと思います

 メグの所属する「東芝EMI」は、レコード会社の中では”老舗”ということもあって、'80年代の前半に売り出す女性アイドルについては、「アイドル性」よりもまず「歌唱力」を重視するという方針を打ち出していたようです。80年デビューの石坂智子、82年の川島恵、83年の桑田靖子というラインナップを見ると、「なるほど」と頷けませんか。まぁそれでも'80年代中旬以降になってくると、東芝EMIも悠長なことを言ってられなくなって、方針の軌道修正を余儀なくされることになるのですが・・・(誰とはいいませんケドね)。

 さて、この「処女飛行」はメグの3枚目のシングルになります。そしてこれがまた見事なことに、歌詞、メロディ、アレンジのすべてが”無駄な要素を一切身にまとわない”単純明快なものでありながら、アイドルポップスとして珠玉の名作に仕上がっているのです。そんな名作をメグが本当に心から気持ちよさそうに謳いあげるもんだから、もうほとんど”向かうところ敵ナシ”ってヤツなのです
 
 作曲とアレンジは、デビュー作「ミスター不思議」からずっとメグのシングル担当の大野克夫センセによるもの。ジュリーの大ヒット曲「時の過ぎゆくままに」、「勝手にしやがれ」、「ダーリング」や、「太陽にほえろ!」の一連のテーマ曲のコンポーザーとしてお馴染みですよね。 いやはや「さすが大野克夫センセ」というべきでしょう心浮き立つ魅力的なイントロ大空を自由に飛び回るイメージが心地良いメロディと、それを後方からしっかり支えるグランドピアノの透き通るような音色が非常に効果的で重要な役割を果たしています。まぁ、お見事というほかない仕事ぶりです
 
 そして、彼女の素朴でピュアなイメージと伸びやかで爽やかなヴォーカルが存分に生きるように作られた売野雅勇センセによる歌詞が、これまた素晴らしいんですよねぇ~
 
 ♪ あなた連れていって みんな初めてづくしの
   旅がいま始まるわ ふたりこの空で
   そっと薬指で 窓辺なぞる愛の文字
   頬に恥じらい色の 夕陽かけてゆく
   心の火照りを 鎮めるように
   あなたがささやく 「戻れないよ」と
   いまの私 きれいでしょうか 
   17の秋 ときめくときめく 処女飛行


 売野センセの使ったフレーズには、奇をてらったものや特別なものは一切ありません。でも、どのフレーズも確かな「息づかい」をもって聴く側の心に響いてくるのがお分かり戴けるでしょうか。一見、「Simple is best!」を地でいくような仕事のように思えますが、これは実は売野センセによる”確かな言葉選び”があればこその結果なのであって、シンプルだったらいいってもんでもない。「これは誰でも真似できるワザではないゾ」と、私なんぞは考えておるわけです

 それではこの辺で、YouTubeをアップしておきますね。私がYouTubeを見るようになってからもう数年くらい経つんですが、この「処女飛行」を見かけることはほとんどないですねぇ(【2016.1.16追記】 テレビ出演時の様子がアップされていたので早速挙げておきますね~)。要はそれくらいマイナーな作品だってことです・・・




 今回の記事で取り上げた「処女飛行」を気に入ったという方には、メグのデビュー曲「ミスター不思議」と、2作目「ザ・サンシャイン・ボーイズ」の方もオススメしておきましょうね。これら2作品と「処女飛行」は作品のコンセプトも近くていずれも秀作だと思うので、きっと気に入って戴けること請け合いです。ちなみに、「ミスター・・・」と「ザ・サンシャイン・・・」は、「処女飛行」と違ってCD化されていて、入手するのも多少は楽だと思います

 ・・・さて、新井薫子の一連のシングルのCD化がムリとなってしまったいま、私が一番期待しているのが「川島恵の全シングルのCD化」です。東芝EMIさん、ぜひ私が生きてるうちにCD化をお願いしますね~
4/6の記事でも何だか似たようなこと書いた記憶が・・・

 それでは、今回はこんなところで。またお逢いしましょう~