最低賃金の決定は企業の生産性踏まえよ
日本経済新聞 社説 掲載
最低賃金の上げ幅が今年度は拡大する方向となった。
都道府県ごとの地域別最低賃金引き上げの目安を議論してきた中央最低賃金審議会の小委員会は、時間当たりの上げ幅を全国平均で14円とすることを決めた。2桁に乗ったのは3年ぶりで、時給は平均763円に上昇する見通しだ。
デフレ脱却は賃金の上昇のカギを握る。ただグローバル競争の激化で、とりわけ中小・零細企業は厳しいコスト削減を強いられている。最低賃金やそれに近い水準で人を雇っている。そうした企業の経営が悪化しないか心配だ。
実際の引き上げ額を決める各都道府県の地方最低賃金審議会は、地域の景気や企業の経営状況をよくみて慎重に判断してほしい。
今年度は田村憲久厚生労働相が中央最低賃金審議会に出席し、直接引き上げを求めた。景気回復のけん引役である消費拡大を息切れさせないためには、所得増を促す必要があるとの判断からだった。上げ幅の目安が2桁になったのは政府の要請が効いた面がある。
しかし、こうした政府の介入は、賃金は企業の生産性や収益力の上昇によって上がるという市場経済のメカニズムを損ないかねない。
生産性などの伸び以上に賃金を上げることになれば企業のコスト負担が増大する。最低賃金を上げても企業が苦境に陥って雇用が失われれば元も子もない。
この数年の最低賃金引き上げが若年層の雇用減につながっているとの研究報告もある。副作用を防がなければならない。
政府に求められるのは企業の生産性や競争力向上を促す政策だ。消費増税の家計への影響を抑えるためにも、企業が利益をあげ、賃金も無理なく上げられることが重要になる。
たとえば中小企業が成長性の高い分野に進出するのを支援したり。環境、エネルギー関連や医療・看護・介護分野などに参入しやすくする規制改革は欠かせない。
従業員が新しい技能を身につけて高めの賃金が得られるよう、国や自治体は成長分野の仕事に就くための職業訓練を拡充すべきだ。
最低賃金で働く人の手取り収入が生活保護の受給額を下回る逆転現象は、北海道についてはまだ解消されない見通しだ。
解消は勤労意欲をそがないため欠かせないが、最低賃金を引き上げればいいという問題ではない。地域の産業を育てて雇用機会を広げるなど総合的な取り組みが求められる。
以上
税理士ゆーちゃん より
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