事業主が加害者として損害賠償金を支払ったとき
事業主が交通事故などを起こし、損害賠償金を支払ったときの取扱いについて説明します。
この場合の損害賠償金には、慰謝料、示談金、見舞金等の名目を問わず、他人に与えた損害を補てんするために支払う一切の金額が含まれます。
この損害賠償金が事業所得の必要経費となるかどうかは、事故の業務関連性の有無と事故原因に故意又は重大な過失があったかどうかにより判定します。
まず、事故が業務に関連のないものは必要経費になりません。
次に、業務に関連してはいるが、事故原因に故意又は重大な過失があった場合も必要経費になりません。
なお、重大な過失があったかどうかについては、加害者の職業、地位、事故当時の周囲の状況、侵害した権利の内容及び取締法規の有無などの具体的事情を考慮して、加害者が本来払うべきであった注意を払ったかどうかにより判定します。
例えば、交通事故の場合ですと、無免許運転、高速度運転、酔払運転、信号無視などによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったとされます。
このように、事業主が加害者として支払った損害賠償金が事業所得の必要経費となるのは、商品の配送や売掛金などの集金の途中など業務に関連した事故で、しかも故意又は重大な過失がない場合に限られます
参考
所得税法基本通達45-6(使用人の行為に基因する損害賠償金等)
業務を営む者が使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているもの(以下この項において「家族従業員」という。)を含む。以下この項において同じ。)の行為に基因する損害賠償金(これに類するもの及びこれらに関連する弁護士の報酬等の費用を含む。)を負担した場合には、次によるものとする。
(1) 当該使用人の行為に関し業務を営む者に故意又は重大な過失がある場合には、当該使用人に故意又は重大な過失がないときであっても、当該業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入しない。
(2) 当該使用人の行為に関し業務を営む者に故意又は重大な過失がない場合には、当該使用人に故意又は重大な過失があったかどうかを問わず、次による。
イ 業務の遂行に関連する行為に基因するものは、当該使用人の従事する業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する。
ロ 業務の遂行に関連しない行為に基因するものは、家族従業員以外の使用人の行為に関し負担したもので、雇用主としての立場上やむを得ず負担したものについては、当該使用人の従事する業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入し、その他のもの(家族従業員の行為に関し負担したものを含む。)については、必要経費に算入しない。
所得税法基本通達45-8(重大な過失があったかどうかの判定)
令第98条の2《必要経費に算入されない損害賠償金の範囲》に規定する重大な過失があったかどうかは、その者の職業、地位、加害当時の周囲の状況、侵害した権利の内容及び取締法規の有無等の具体的な事情を考慮して、その者が払うべきであった注意義務の程度を判定し、不注意の程度が著しいかどうかにより判定するものとし、次に掲げるような場合には、特別な事情がない限り、それぞれの行為者に重大な過失があったものとする。
(1) 自動車等の運転者が無免許運転、高速度運転、酔払運転、信号無視その他道路交通法第4章第1節(運転者の義務)に定める義務に著しく違反すること又は雇用者が超過積載の指示、整備不良車両の運転の指示その他同章第3節《使用者の義務》に定める業務に著しく違反することにより他人の権利を侵害した場合
(2) 劇薬又は爆発物等を他の薬品又は物品と誤認して販売したことにより他人の権利を侵害した場合
税理士ゆーちゃん より
最後まで読んで頂き、有難うございます
人気ブログランキングに参加しています
クリックお願いします。 ↓