むーん!
迷走中…!

とりあえず出来たとこまでUP!!


*****


貴方からの距離ーそれぞれの現在(いま)ー前編《リクエスト》


「あ…やっ…」

「キョーコ…」

暗い寝室から聞こえる二人の乱れた呼吸と切羽詰まった声。
一際高い声を上げて、キョーコはグッタリとシーツの波に身体を埋めた。
そんなキョーコの隣にゴロリと倒れこんだ蓮は、呼吸を整えながらキョーコを宝物を扱うように胸に抱き寄せる。

「ん…」

夢うつつを漂うキョーコの額にキスを落として、蓮もキョーコの温もりを抱き締めて眠りについた。



「おはよう。」

「おは…よう、ございますっ!」

目覚めたキョーコを愛おしそうに見つめて蓮が声をかければ、キョーコは恥ずかしそうに返事を返す。
こんな反応も何時ものこと。

狼狽えて真っ赤になるキョーコが可愛くて蓮は抱き締めたまま、幸せそうに笑う。
キョーコは居た堪れなくなって離れようと身動ぎする。

「ん…そろそろ、起きないと…。」

「まだいいだろ?今日は俺は午前中オフなんだし。キョーコも夕方からだろう?もうちょっとゆっくりしよう。」

身を起こそうとしたキョーコを蓮は捕まえて、再びベッドに沈める。
明るい中で素肌を晒しているのが恥ずかしいのか、キョーコは無駄な抵抗を試みる。

「いいからいいから。」

そう言って宥めすかして、肌触りのいい肌を蓮は腕の中に収める。
キョーコの肌がピタリと寄り添う至福の時を蓮は噛み締めていた。

もう…なんて少し呆れた声を出しつつ、キョーコもおずおずと蓮に寄り添う。

「甘えん坊ですね~。蓮さんは。」

キョーコのふわふわした言葉を聞きながら蓮が幸せそうに目を閉じたのだが、暫くしてキョーコの視線を強く感じた。
そろりと目を開いてキョーコを伺う。

「…ん?キョーコ?」

キョーコがジトっとした目で蓮を見つめていたので、蓮はタジタジになって呼びかける。

キョーコは蓮に呼びかけられ、ハッとして我に返ると罰が悪そうにフイっと顔を逸らした。
蓮が心配そうに覗き込むのを感じて、隠しきれず蓮の胸板にそっと手を滑らせながら呟いた。

「いえ…なんか、泉さんにも、こんな風に甘えてたのかなぁなんて、一瞬思っちゃいまして…」

蓮の心臓が冷え、体はギシリと固まる。

「ぇ"…」

「だって蓮さん、泉さんに私を重ねてたんですよね?だったら…」

「いや!泉には甘えたりしてないから!こんな風に甘えるのはキョーコだけで…」

「でも、私だと思って泉さんを抱いたんですよね?!」

「ゔ…いや、でも、それとこれとは違うというか…」

キョーコの追求に蓮は青くなりながら慌てふためく。
幸せな朝がまずい空気になって行く。

「泉さんのこともこんな風に…」

キョーコは、そうぼそり呟いて、暫く間をおいてから、それ以上何も言わず蓮から離れようとした。
つつつつつとベッドの端に寄る。

「ちょ!キョーコ!!」

蓮が慌てて追いかけて抱きしめようと手を伸ばしたが、キョーコにパチンと叩かれる。

「や!触らないでくださいっ!」

キョーコが蓮の腕を跳ね除けて、距離を取りくるりと背を向け枕を抱き締めた。

「キョーコ…あの、キョーコ、さん?」

蓮は縋るようにキョーコを追いかけ、後ろから声を掛ける。
広いベッドの片方に二人の体重が寄る。

「………。」

キョーコは無言のままじっとしており、蓮の方を向こうともしない。
蓮はそれが悲しくて、無言で抵抗しようとするキョーコを必死で捕まえ、枕ごと抱きしめる

「ごめん。キョーコ…。」

キョーコがスンッと鼻を啜る。
蓮は胸が苦しくなってキュウッと眉を寄せた。

「キョーコ…泣いてるの?」

「………。」

キョーコを悲しませたことが悲しくて、蓮はキョーコに気持を隠さず伝える。

「俺が好きなのはキョーコだけだよ?」

「………」

「こんな風に抱き締めて眠りたいと思うのも相手がキョーコだからだ。彼女の時は…同じベッドで眠る気になれなくて、いつもソファで寝てた。」

キョーコはじっとしたまま動かない。
蓮はキョーコを後ろから抱き締め、綺麗な背中に祈りを捧げるように額を押し付けた。

「一緒にいて幸せを感じるのも、安らぎを感じるのも、キョーコだけだ。心の底から愛しいと思うのも、笑顔を守りたいと思うのも、もっと知りたいと思うのもキョーコだけ。この家に入ったことがある女性もキョーコだけだ。」

キョーコが少しだけ身動ぎをした。
蓮は想いの丈をキョーコにぶつける。

「愛してるんだ。キョーコ。君だけを…。」

「蓮さん…」

蓮の必死の懇願に、キョーコは折れた。
ふぅーと一つ深い息を落として、仕方ないですね…。と呟く。

「キョーコ…」

情けない蓮の声に困ったように眉を寄せて、キョーコは枕を抱き締めたまま、くるりと蓮の方を向いた。

「仕方ないので、許してあげます。」

少し困り顔で顔を赤くして言うキョーコに蓮はホッと胸を撫で下ろす。

「キョーコ…」

しかし、ホッとしたのも束の間、キョーコの次の言葉に蓮は固まる。

「そういえば、泉さん。今頃どうしてるんでしょうね?」

キョーコとしては、話題に上がったので純粋にどうしてるのか気になっていったのだろうが、出来れば蓮はそのキョーコの口から泉の名前はこれ以上聞きたくない。
それでもキスで誤魔化す空気でもなくて、蓮は興味ないんだけどな。というような態度は崩さず答えた。

「さぁ?社長に任せたからね。」

「でも蓮さん、社長からあの後呼び出されてますよね?何か聞いたんじゃないんですか?」

枕でガードされながら聞かれるのが面白くないと思いながら、蓮は枕ごとキョーコを抱き締める。

「う…ん、聞いたには聞いたけど、後は彼女次第という感じだったな。」

「気になったりしないんですか?」

「言ったろ?もっと知りたいと興味あるのはキョーコだけだって。」

「でも…」

「妬いちゃうな。さっきから彼女のことばっかり君は考えてる。」

「え?」

「もっと俺のことで頭をいっぱいにしてよ。」

蓮はそう言って、キョーコに口付けた。
キスをしながら枕を抜き取り、念願のキョーコの素肌を抱き締める。

朝から破廉恥と怒られながらも、蓮はキョーコと幸せな朝を過ごしたのだった。



キョーコと蓮がベッドの中で思う存分戯れて仕事に向かう頃、泉は目覚めた。

照りつける太陽、高い建物もなく、硬い寝台から起き上がった泉の姿は、変わり果てていた。
ここ3日ほど泉はお風呂にも入れておらず、自慢だった髪はブローも忘れられボサボサになっており、透き通るような白い肌も泥や砂などで汚れたまま。
そう泉は今、日本にはいない。遠い異国の地に着ていたのだ。

どうしてこんなことになっているのかと言うと一ヶ月前のドッキリ事件の日まで遡る。

蓮とキョーコが退出してから、LMEの社長直々に延々と愛について説き伏せられ、事務所の社長も交えての話し合いが設けられたが、泉の所属する事務所の社長は泉の問題行動の数々についてローリィから指摘されると、アッサリと契約を打ち切ったのだ。
バッサリと鼻紙ティッシュの如く捨てられてしまった泉を、憐れに思ったのか、ローリィはうむ…と考え込むと暫くして口を開いた。

「泉君はもっと、愛について勉強する必要があるな!!どうだ?!愛について勉強して見たいとは思わんか!!」

「…はぁ…。」

ラブモンスターである彼を前に別にという答えを口に出すことも出来ず、泉は曖昧な返事を返した。
事務所に見捨てられこれからどうしたらいいのかと途方にくれていたのだ。

「もし、泉君が本物の愛を取り戻したならウチで雇ってやらんこともない!」

「え?!ほ、本当ですか?!?!」

LMEといえば業界最大手の事務所である。自分の入っていた事務所とは比べものにならないほど、大きな会社だ。
棚からぼたもち、砂漠にオアシスとはまさにこのこと。
泉は突然目の前に現れたビッグチャンスにすぐさま飛びついた。

「必ず愛を取り戻しますので、どうかよろしくお願いします!!」

「うむ!よし!では君には愛を取り戻すため幾つかミッションを与えようじゃないか!!」

こうして泉の地獄のような日々が幕を開けたのだった。


(続く)


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さて…ここからどうしよう…(笑)