☆アメンバー様200人達成!&ブログ3ヶ月記念大感謝祭☆
魔人様ことsei様のリクエストです!
罠の中に嵌って2年強!!
流石にそろそろ抜け出せねばヤバイ!
…ということでもがいております(笑)
やっと終わりが見えてきました!
途中、蓮キョ以外の絡みがありますので、苦手な方はご容赦下さいませ!
*****
貴方からの距離 7《リクエスト》
ーーーええっと…何でこんなことになったのかしら…
キョーコは一人、困惑していた。
社に連絡をした後、何故か社長から呼び出され、突然現れたサンバ隊に拉致をされ、ドッキリの看板を持たされて、あるホテルのある部屋のクローゼットの中に閉じ込められてしまったのだ。
よくわからぬまま、指示があるまでその場にジッとしているようにと言い残され、一人取り残された状態だ。
とりあえず様子を見るためにおとなしく隙間から室内を覗いているが、部屋の中に人の気配はない。
さて、どうしたものかと考えていたところで部屋の鍵がガチャリと開いた。
「ありがとう。」
そう綺麗な声を響かせて入って来たのは泉だった。
どうやらホテルのボーイさんにお礼を言ったようだ。
ーーーあ!泉さん!!ここ、泉さんのとった部屋なのかな?
扉が閉まると同時に泉の携帯が呼び出しのメロディを奏で、泉が通話ボタンを押し、話し始めた。
「はい、もしもし。…あぁ、また貴方なの。ちょっとしつこいわよ?」
泉は電話で話しながらベッドに腰を下ろしてヒールを脱ぐと、長い髪を掻き揚げた。
そんな姿も色っぽくて絵になるので、キョーコは自分との差に肩を落とす。
やはりあのくらいの美貌がないと蓮の隣には相応しくないのかもしれない。
キョーコがそう思い掛けた時だった。
「あんたごときに私が釣り合うとでも?…はぁ?知らないわよ。別れたのはあんたが勝手にしたことでしょ?私は別れてなんて一言も言った覚えがないわ。」
ーーーあ、あんた…ごとき??!
キョーコの知ってる泉からはおよそ想像出来ない単語が泉の口から飛び出してキョーコは目を見開く。
「貴方も知ってるでしょ?今私はあの敦賀蓮と付き合ってるの。あんだけ騒がれてるのに報道みてないわけ?…だから、あんたなんかに付き合ってる暇はないの!…はぁ?意味わかんないこと言わないでよ!わかってんの?相手は敦賀蓮よ!抱かれたい男No.1よ?年下だからって何よ?日本中の女性が抱かれたいって口を揃えて言う男よ?そんな極上の男を手に入れてるのに、あんたのとこなんかに行くと思う?」
ーーーえ…?
「だから、わからない人ね!あんたはもう用無しだって言ってるの!はぁ?知らないわよ!あんたが蒔いた種じゃない。勝手に巻き込まないでよ!…これだからダメなのよ。あんたに比べたら年下の蓮の方がずっと大人でスマートだわ!私に相応しいブランドは彼以外にいないの。わかるでしょ?あぁー。もう、しつこいわね!そろそろ切るわよ!じゃあね!もう掛けてこないで!!あんたとは終わったんだから!!」
泉は一方的に電話を切ると、深く溜息を零した。
「ったく。馬鹿な男…。好きだとか愛してるとかこっちはそんなのは求めてないってのよ!めんどくさいだけじゃない。」
泉は何やらブツブツと独り言を繰り返していた。
「欲しいのは刺激よ!!情熱!劣情よ!ま、もう暫く蓮で遊んだら、間に少しくらいは相手してやってもいいけど…。」
キョーコの耳がピクリと反応する。
怨キョが一匹、二匹とキョーコの肩の辺りから顔を覗かせた。
ーーー蓮で……遊ぶ?それって、敦賀さんで遊んでるってこと?前言撤回!敦賀さんにはこんな女似合わないわ!!なんて女なの?!あぁぁ!敦賀さんに言ってやりたい!!バラしてやりたい!!あの女の本性を暴きたい~!!!!
キョーコは手に握っていたものを強い力で握りしめた。
力を入れて握りしめた為、ミシリとその手の中のものが音を立てた。
ハッとする。
そうだ!これは仕事だ!!
自分の感情に任せて動いていいはずがない。
指示があるまでは出ないように言われてるんだし…。
キョーコが目を閉じて深呼吸を繰り返すが頭の上ではどうやって泉をギャフンと言わせるか怨キョ会議が繰り広げられていた。
「あ、また電話?今度は誰よ。」
再び鳴り始めた携帯電話。泉は通話を押した。
「はい!もしもし?あぁ、はるかちゃん、うん。元気よ~どうしたの?」
先ほどとは違う、泉の声の穏やかな声の調子にキョーコは再び目を見張る。
ーーーいつもの…泉、さん?
「そっか…それは大変だったわね。ううん、いいのよ。いつでも話し聞くから何時でもいらっしゃい。あ、そうそうはるかちゃんは聞いたかしら?京子ちゃんとブリッジロックの石橋光君の噂…」
ーーーへ…?わ、私?!なんで急に??
キョーコが突然自分の話題になったことに驚く。
訝しみながら耳を傾けると聞こえた内容に叫び出しそうになってしまった。
「あ、聞いてない?ならいいのよ~。ううん。こっちの話。あぁ、えっとね、詳しくは話せないんだけど、ここだけの話よ?実は今あの二人付き合ってるのよ。」
ーーー…はぁ?!
キョーコはあんぐりと口を開いた。
「そうなの。付き合いたての大事な時期だからあんまり騒ぎ立てられても困るって言うか…。私は京子ちゃんと仲がいいから本人から色々聞いてるんだけどね?」
ーーーちょ、ちょっと待ってよ!何そんないい加減なこと…
「うん。そうなのー。今夜も一緒に食事に行くらしくって…あ、ゴメン!!今のオフレコ!忘れて忘れて~。そうそう、今二人にとって大事な時期だからさ、もしそんな噂誰かから聞いたら口止めしといてもらえる?うんうん。ごめんね~。ありがとう!よろしくね。」
そうして泉はチラリと時計に目を移すと「ゴメンね。そろそろ時間だからまたね。」そう言って電話を切った。
ーーーな、何よ?今のアレ…!!
キョーコはフルフルと震えた。顔が引き攣る。
ーーーものすっごいナチュラルに嘘の噂を流してたわ…!!
泉は通話の終わった携帯電話をベッドの上に投げ捨てると、徐に大胆にも服を脱ぎ始めた。
ーーーなっ?!
キョーコはカメラが仕掛けられてる部屋と知っているので動揺するが、それを知らない泉は鼻歌交じりに堂々と脱いで行く。
「ふふ。今日は相当荒れて帰って来るはずだから、たっぷり可愛がってあげなくちゃね。」
下着姿になった泉はそのナイスボディを見せびらかすように優雅に歩いてバスルームの扉を開けた。
どうやらシャワーを浴びに行ったようだ。
キョーコは、泉のいなくなった部屋のクローゼットの中で、はぁぁぁと詰めていた息を一気に吐き出し脱力した。
ーーー泉さんって…なんか全然イメージ違う…!心臓に悪い娘さんだわ…。
そして頭の中を整理した。
泉は蓮が好きで付き合っているのではなく、優越感の為だけに蓮を利用しているのだ。
ーーー冗談じゃないわよ!!そんな人に敦賀さんを誑かしこまれてたまるもんですか!!
そしてキョーコと光の噂の発信源も泉で間違いないだろう。
あの泉の噂は本当だったのだ。
キョーコであれば尊敬する先輩からそんな言われ方をしたら絶対に人に言わないという自信があるが、口が軽い人とはいるものだ。黙っているつもりでもついうっかりポロリと言ってしまう人だっているはずだ。
そして隠していることや秘密を知りたがったり話したくなったりするのも人間の心理。
噂はやはり泉に仕組まれていたのだ。
ーーーそれにしても、何で私と光さん?その辺りがどうも謎なのよね…。
蓮の気持ちを知らないキョーコは首を捻る。
何故泉がそんなことをするのかわからないからだ。
そして最後に泉が言っていた『相当荒れて帰って来るはずだから…』というその言葉の意味はーーー。
そこまで考えたところで部屋の鍵が開く音がした。
そうして姿を表したのが、蓮だったのだ。
ーーー敦賀さんの…部屋だったんだ…!!
キョーコの顔からサァッと血の気が引いた。
ーーーど、どうしよう?!泉さんお風呂に入ってるのに…服を持って行ってないわ!!出て来たところでかち合ったら大変なことに…!!あぁぁ!それより何より、こんなところにいるのが見つかったら…覗きみたいなことしてるって思われたら嫌われちゃうんじゃ…うぅっだってこれは社長さんの命令でっ!!
蓮が入って来たことでキョーコの頭が大混乱だ。
考えることがいっぱいあり過ぎてぐるぐると思考があっちこっちに向かう。
ーーーそれに泉さんの悪事を伝えて…ってダメよ!!泉さんと付き合ってる敦賀さんに言ったって私の話なんて信じてもらえないわっ!!ど、どうしたらいいのぉぉぉー?!
キョーコがぐるぐるしている頃、蓮は泉の脱ぎ散らかした服に気付き、小さく溜息を落とす。
「はぁ…」
小さく息を吐いて、窓際に置かれた一人掛けのソファにどかりと腰を落ろした。
ーーー敦賀さん…っ!!
キョーコはどうしていいかわからずに、黙って蓮を見守るしかない。
出来ることなら今すぐ飛び出して泉の正体をバラしたいところだが、いつ泉が出てくるかもわからない。
どちらにしろ、もう少し様子をみるしかないようだ。
しかし、だからと言ってこのまま蓮が泉に愛を囁くところなど見たくはない。
キョーコは蓮が泉に愛を囁くシーンを想像してチクリと刺す胸の痛みを誤魔化すように胸元を強く握りしめた。
そしてそっと伺っていた蓮の疲れたような落ち込んだような顔が目に入った。
ーーー敦賀…さん?
辛そうなその表情を見てキョーコの心もキュンと痛む。
ーーーどうしたんですか?何でそんな顔…してるんですか?
ズズーーンとブラックホールを背負う姿はいつか坊の時にみた姿を思い起こさせた。
そうしていると、ガチャリとバスルームの扉が開く音がして、そこから泉がバスタオル一枚の姿で出てきたのでキョーコは大絶叫だ。
ーーーちょっとちょっと泉さーーーーーーん!!幾ら何でも無防備過ぎるんじゃないですかーーーー?!?!
キョーコが心の中で大絶叫するも、泉はこの姿が自然とでもいうように普通に蓮に話しかけた。
「あら?おかえり、蓮。帰ってたの?」
「……あぁ。」
チラリと泉を見ただけで、表情一つ動かさない蓮に、キョーコは空いた口が塞がらない。
ーーーって敦賀さん!もっと驚きましょうよ!!止めましょうよ!!裏若き乙女があのような格好をしてるんだからぁぁぁ!!
キョーコがクローゼットの中から大絶叫をかましてるとも知らず、泉はあろうことかバスタオル一枚のそのままの姿で蓮が座っているソファの手すり部分に腰掛けた。
妖しく寄り添うその美男美女の構図は嫌らしさよりも上品な艶を放っていて、破廉恥だと思うその姿も全く動じてない蓮と、誘うように手を這わせる泉にドラマのワンシーンを見せられてるような不思議な気分になる。
ーーーうっわ…ぁっ…
キョーコは真っ赤になりながらも思わずそんな2人に見惚れてしまい、慌てて首を振った。
ーーーって!何見惚れてるのよ!!ダメよ!キョーコ!!気をしっかり持つのよ!!
キョーコが一人コントなようなことをしていると、服のボタンを勝手に外されていた蓮が口を開いた。
「泉、今日はもう、帰ってくれないか…。」
その手を止めさせ蓮が静かに言うが、泉は微笑みを向ける。
「どうしたの?」
「気分じゃない。帰ってくれ。」
「イ・ヤ・よ。そんな貴方の顔を見て、帰れるわけないじゃない。可哀想に…昼間、京子ちゃんになんて言われたの…?」
話しながらも泉は蓮のシャツのボタンを全て外して肌蹴させる。
ーーーえ…?
突然水を向けられた名前に、キョーコの心臓が大きく跳ねた。
ーーーな、なんで…私?
「キス…見られちゃったものね?」
くすくすと楽しそうに蓮の首に手を回しながら泉が囁くと蓮の首筋にちゅっと密やかな音を落とした。
キョーコはそれを見て、真っ赤になるよりも何故かザワッとした黒い何かが胸の中に苦味が広がるように走った気がした。
ーーー泉さん…何、してるの?敦賀さんは帰れって言ったのよ…?
ザワザワとした気持ちがゆっくりとキョーコの胸の中に広がっていく。
「京子ちゃんびっくりしてたものね?それで何か言われちゃったんだ。」
「泉と幸せにって…。言われたよ…。」
キョーコの胸がキュウっとなる。言いたくて言った言葉じゃない。
そういうしかなかったから言ったのだ。
「まぁ、京子ちゃんは残酷ね…。可哀想な蓮…。だからそんな傷付いた顔してるのね。」
泉が蓮の両頬を包み込む。
キョーコは眉を寄せた。
ーーー残酷?可哀想…??なんで…?敦賀さんがあんな傷付いた顔してるのは…私のせいなの?
キョーコは訳がわからなかった。なんでそうなるのか意味がわからない。
「どんなに貴方が京子ちゃんを好きでも、もう彼女は光君のものなの…貴方は彼女にとってただの先輩でしかないのよ。」
ーーーえ…?な、に…言ってるの…?
キョーコは泉の言葉に衝撃を受けた。
ーーー好き…敦賀さんが?私を?え?だって敦賀さんが好きなキョーコちゃんは、4つ年下で、高校生で…キョーコ…ちゃんって…え…?わ、わたし…?!ちょ、ちょっと待って!何で私が光さんのものって話になっちゃってるの?!
「可哀想な蓮。今日は京子ちゃん、光君とデートなんですって。今頃は2人でディナーを楽しんでる頃だわ。でも大丈夫よ。蓮には私がいるわ…。貴方の為に、私が貴方の最上キョーコになってあげる。」
そう言って、蓮の手を自分の胸に導いた泉は、蓮の耳元にキョーコの声を真似て囁いた。
「敦賀さん…愛してる…。」
「っ!!!!」
「ダメぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!!!」
二人だけだと思っていた部屋の中にキョーコの声が響き渡った。
(続く)
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ーーーええっと…何でこんなことになったのかしら…
キョーコは一人、困惑していた。
社に連絡をした後、何故か社長から呼び出され、突然現れたサンバ隊に拉致をされ、ドッキリの看板を持たされて、あるホテルのある部屋のクローゼットの中に閉じ込められてしまったのだ。
よくわからぬまま、指示があるまでその場にジッとしているようにと言い残され、一人取り残された状態だ。
とりあえず様子を見るためにおとなしく隙間から室内を覗いているが、部屋の中に人の気配はない。
さて、どうしたものかと考えていたところで部屋の鍵がガチャリと開いた。
「ありがとう。」
そう綺麗な声を響かせて入って来たのは泉だった。
どうやらホテルのボーイさんにお礼を言ったようだ。
ーーーあ!泉さん!!ここ、泉さんのとった部屋なのかな?
扉が閉まると同時に泉の携帯が呼び出しのメロディを奏で、泉が通話ボタンを押し、話し始めた。
「はい、もしもし。…あぁ、また貴方なの。ちょっとしつこいわよ?」
泉は電話で話しながらベッドに腰を下ろしてヒールを脱ぐと、長い髪を掻き揚げた。
そんな姿も色っぽくて絵になるので、キョーコは自分との差に肩を落とす。
やはりあのくらいの美貌がないと蓮の隣には相応しくないのかもしれない。
キョーコがそう思い掛けた時だった。
「あんたごときに私が釣り合うとでも?…はぁ?知らないわよ。別れたのはあんたが勝手にしたことでしょ?私は別れてなんて一言も言った覚えがないわ。」
ーーーあ、あんた…ごとき??!
キョーコの知ってる泉からはおよそ想像出来ない単語が泉の口から飛び出してキョーコは目を見開く。
「貴方も知ってるでしょ?今私はあの敦賀蓮と付き合ってるの。あんだけ騒がれてるのに報道みてないわけ?…だから、あんたなんかに付き合ってる暇はないの!…はぁ?意味わかんないこと言わないでよ!わかってんの?相手は敦賀蓮よ!抱かれたい男No.1よ?年下だからって何よ?日本中の女性が抱かれたいって口を揃えて言う男よ?そんな極上の男を手に入れてるのに、あんたのとこなんかに行くと思う?」
ーーーえ…?
「だから、わからない人ね!あんたはもう用無しだって言ってるの!はぁ?知らないわよ!あんたが蒔いた種じゃない。勝手に巻き込まないでよ!…これだからダメなのよ。あんたに比べたら年下の蓮の方がずっと大人でスマートだわ!私に相応しいブランドは彼以外にいないの。わかるでしょ?あぁー。もう、しつこいわね!そろそろ切るわよ!じゃあね!もう掛けてこないで!!あんたとは終わったんだから!!」
泉は一方的に電話を切ると、深く溜息を零した。
「ったく。馬鹿な男…。好きだとか愛してるとかこっちはそんなのは求めてないってのよ!めんどくさいだけじゃない。」
泉は何やらブツブツと独り言を繰り返していた。
「欲しいのは刺激よ!!情熱!劣情よ!ま、もう暫く蓮で遊んだら、間に少しくらいは相手してやってもいいけど…。」
キョーコの耳がピクリと反応する。
怨キョが一匹、二匹とキョーコの肩の辺りから顔を覗かせた。
ーーー蓮で……遊ぶ?それって、敦賀さんで遊んでるってこと?前言撤回!敦賀さんにはこんな女似合わないわ!!なんて女なの?!あぁぁ!敦賀さんに言ってやりたい!!バラしてやりたい!!あの女の本性を暴きたい~!!!!
キョーコは手に握っていたものを強い力で握りしめた。
力を入れて握りしめた為、ミシリとその手の中のものが音を立てた。
ハッとする。
そうだ!これは仕事だ!!
自分の感情に任せて動いていいはずがない。
指示があるまでは出ないように言われてるんだし…。
キョーコが目を閉じて深呼吸を繰り返すが頭の上ではどうやって泉をギャフンと言わせるか怨キョ会議が繰り広げられていた。
「あ、また電話?今度は誰よ。」
再び鳴り始めた携帯電話。泉は通話を押した。
「はい!もしもし?あぁ、はるかちゃん、うん。元気よ~どうしたの?」
先ほどとは違う、泉の声の穏やかな声の調子にキョーコは再び目を見張る。
ーーーいつもの…泉、さん?
「そっか…それは大変だったわね。ううん、いいのよ。いつでも話し聞くから何時でもいらっしゃい。あ、そうそうはるかちゃんは聞いたかしら?京子ちゃんとブリッジロックの石橋光君の噂…」
ーーーへ…?わ、私?!なんで急に??
キョーコが突然自分の話題になったことに驚く。
訝しみながら耳を傾けると聞こえた内容に叫び出しそうになってしまった。
「あ、聞いてない?ならいいのよ~。ううん。こっちの話。あぁ、えっとね、詳しくは話せないんだけど、ここだけの話よ?実は今あの二人付き合ってるのよ。」
ーーー…はぁ?!
キョーコはあんぐりと口を開いた。
「そうなの。付き合いたての大事な時期だからあんまり騒ぎ立てられても困るって言うか…。私は京子ちゃんと仲がいいから本人から色々聞いてるんだけどね?」
ーーーちょ、ちょっと待ってよ!何そんないい加減なこと…
「うん。そうなのー。今夜も一緒に食事に行くらしくって…あ、ゴメン!!今のオフレコ!忘れて忘れて~。そうそう、今二人にとって大事な時期だからさ、もしそんな噂誰かから聞いたら口止めしといてもらえる?うんうん。ごめんね~。ありがとう!よろしくね。」
そうして泉はチラリと時計に目を移すと「ゴメンね。そろそろ時間だからまたね。」そう言って電話を切った。
ーーーな、何よ?今のアレ…!!
キョーコはフルフルと震えた。顔が引き攣る。
ーーーものすっごいナチュラルに嘘の噂を流してたわ…!!
泉は通話の終わった携帯電話をベッドの上に投げ捨てると、徐に大胆にも服を脱ぎ始めた。
ーーーなっ?!
キョーコはカメラが仕掛けられてる部屋と知っているので動揺するが、それを知らない泉は鼻歌交じりに堂々と脱いで行く。
「ふふ。今日は相当荒れて帰って来るはずだから、たっぷり可愛がってあげなくちゃね。」
下着姿になった泉はそのナイスボディを見せびらかすように優雅に歩いてバスルームの扉を開けた。
どうやらシャワーを浴びに行ったようだ。
キョーコは、泉のいなくなった部屋のクローゼットの中で、はぁぁぁと詰めていた息を一気に吐き出し脱力した。
ーーー泉さんって…なんか全然イメージ違う…!心臓に悪い娘さんだわ…。
そして頭の中を整理した。
泉は蓮が好きで付き合っているのではなく、優越感の為だけに蓮を利用しているのだ。
ーーー冗談じゃないわよ!!そんな人に敦賀さんを誑かしこまれてたまるもんですか!!
そしてキョーコと光の噂の発信源も泉で間違いないだろう。
あの泉の噂は本当だったのだ。
キョーコであれば尊敬する先輩からそんな言われ方をしたら絶対に人に言わないという自信があるが、口が軽い人とはいるものだ。黙っているつもりでもついうっかりポロリと言ってしまう人だっているはずだ。
そして隠していることや秘密を知りたがったり話したくなったりするのも人間の心理。
噂はやはり泉に仕組まれていたのだ。
ーーーそれにしても、何で私と光さん?その辺りがどうも謎なのよね…。
蓮の気持ちを知らないキョーコは首を捻る。
何故泉がそんなことをするのかわからないからだ。
そして最後に泉が言っていた『相当荒れて帰って来るはずだから…』というその言葉の意味はーーー。
そこまで考えたところで部屋の鍵が開く音がした。
そうして姿を表したのが、蓮だったのだ。
ーーー敦賀さんの…部屋だったんだ…!!
キョーコの顔からサァッと血の気が引いた。
ーーーど、どうしよう?!泉さんお風呂に入ってるのに…服を持って行ってないわ!!出て来たところでかち合ったら大変なことに…!!あぁぁ!それより何より、こんなところにいるのが見つかったら…覗きみたいなことしてるって思われたら嫌われちゃうんじゃ…うぅっだってこれは社長さんの命令でっ!!
蓮が入って来たことでキョーコの頭が大混乱だ。
考えることがいっぱいあり過ぎてぐるぐると思考があっちこっちに向かう。
ーーーそれに泉さんの悪事を伝えて…ってダメよ!!泉さんと付き合ってる敦賀さんに言ったって私の話なんて信じてもらえないわっ!!ど、どうしたらいいのぉぉぉー?!
キョーコがぐるぐるしている頃、蓮は泉の脱ぎ散らかした服に気付き、小さく溜息を落とす。
「はぁ…」
小さく息を吐いて、窓際に置かれた一人掛けのソファにどかりと腰を落ろした。
ーーー敦賀さん…っ!!
キョーコはどうしていいかわからずに、黙って蓮を見守るしかない。
出来ることなら今すぐ飛び出して泉の正体をバラしたいところだが、いつ泉が出てくるかもわからない。
どちらにしろ、もう少し様子をみるしかないようだ。
しかし、だからと言ってこのまま蓮が泉に愛を囁くところなど見たくはない。
キョーコは蓮が泉に愛を囁くシーンを想像してチクリと刺す胸の痛みを誤魔化すように胸元を強く握りしめた。
そしてそっと伺っていた蓮の疲れたような落ち込んだような顔が目に入った。
ーーー敦賀…さん?
辛そうなその表情を見てキョーコの心もキュンと痛む。
ーーーどうしたんですか?何でそんな顔…してるんですか?
ズズーーンとブラックホールを背負う姿はいつか坊の時にみた姿を思い起こさせた。
そうしていると、ガチャリとバスルームの扉が開く音がして、そこから泉がバスタオル一枚の姿で出てきたのでキョーコは大絶叫だ。
ーーーちょっとちょっと泉さーーーーーーん!!幾ら何でも無防備過ぎるんじゃないですかーーーー?!?!
キョーコが心の中で大絶叫するも、泉はこの姿が自然とでもいうように普通に蓮に話しかけた。
「あら?おかえり、蓮。帰ってたの?」
「……あぁ。」
チラリと泉を見ただけで、表情一つ動かさない蓮に、キョーコは空いた口が塞がらない。
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キョーコがクローゼットの中から大絶叫をかましてるとも知らず、泉はあろうことかバスタオル一枚のそのままの姿で蓮が座っているソファの手すり部分に腰掛けた。
妖しく寄り添うその美男美女の構図は嫌らしさよりも上品な艶を放っていて、破廉恥だと思うその姿も全く動じてない蓮と、誘うように手を這わせる泉にドラマのワンシーンを見せられてるような不思議な気分になる。
ーーーうっわ…ぁっ…
キョーコは真っ赤になりながらも思わずそんな2人に見惚れてしまい、慌てて首を振った。
ーーーって!何見惚れてるのよ!!ダメよ!キョーコ!!気をしっかり持つのよ!!
キョーコが一人コントなようなことをしていると、服のボタンを勝手に外されていた蓮が口を開いた。
「泉、今日はもう、帰ってくれないか…。」
その手を止めさせ蓮が静かに言うが、泉は微笑みを向ける。
「どうしたの?」
「気分じゃない。帰ってくれ。」
「イ・ヤ・よ。そんな貴方の顔を見て、帰れるわけないじゃない。可哀想に…昼間、京子ちゃんになんて言われたの…?」
話しながらも泉は蓮のシャツのボタンを全て外して肌蹴させる。
ーーーえ…?
突然水を向けられた名前に、キョーコの心臓が大きく跳ねた。
ーーーな、なんで…私?
「キス…見られちゃったものね?」
くすくすと楽しそうに蓮の首に手を回しながら泉が囁くと蓮の首筋にちゅっと密やかな音を落とした。
キョーコはそれを見て、真っ赤になるよりも何故かザワッとした黒い何かが胸の中に苦味が広がるように走った気がした。
ーーー泉さん…何、してるの?敦賀さんは帰れって言ったのよ…?
ザワザワとした気持ちがゆっくりとキョーコの胸の中に広がっていく。
「京子ちゃんびっくりしてたものね?それで何か言われちゃったんだ。」
「泉と幸せにって…。言われたよ…。」
キョーコの胸がキュウっとなる。言いたくて言った言葉じゃない。
そういうしかなかったから言ったのだ。
「まぁ、京子ちゃんは残酷ね…。可哀想な蓮…。だからそんな傷付いた顔してるのね。」
泉が蓮の両頬を包み込む。
キョーコは眉を寄せた。
ーーー残酷?可哀想…??なんで…?敦賀さんがあんな傷付いた顔してるのは…私のせいなの?
キョーコは訳がわからなかった。なんでそうなるのか意味がわからない。
「どんなに貴方が京子ちゃんを好きでも、もう彼女は光君のものなの…貴方は彼女にとってただの先輩でしかないのよ。」
ーーーえ…?な、に…言ってるの…?
キョーコは泉の言葉に衝撃を受けた。
ーーー好き…敦賀さんが?私を?え?だって敦賀さんが好きなキョーコちゃんは、4つ年下で、高校生で…キョーコ…ちゃんって…え…?わ、わたし…?!ちょ、ちょっと待って!何で私が光さんのものって話になっちゃってるの?!
「可哀想な蓮。今日は京子ちゃん、光君とデートなんですって。今頃は2人でディナーを楽しんでる頃だわ。でも大丈夫よ。蓮には私がいるわ…。貴方の為に、私が貴方の最上キョーコになってあげる。」
そう言って、蓮の手を自分の胸に導いた泉は、蓮の耳元にキョーコの声を真似て囁いた。
「敦賀さん…愛してる…。」
「っ!!!!」
「ダメぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!!!」
二人だけだと思っていた部屋の中にキョーコの声が響き渡った。
(続く)
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